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共に戦おう

「君を妻に迎えたい」


アルテミオはそう言った。

私に?なぜ?

疑問が頭を駆け巡った。


「突然どうして…からかっているのですか?」

「君がどうしても欲しくなってしまった」


焦ってうまく言葉が出ない。

「っ!私は…猫族の王子と婚姻するのですよ」

顔が熱くて堪らない。

対して、アルテミオの瞳は熱が篭っているのに冷静だ。

「本人が拒否すれば婚約関係にはない。いくら王族同士の婚姻とは言え、婚姻誓約書に本人のサインがなければ結婚することはできないぞ」

「そう、なのですか…?誓約書は父が出していましたが…」

「それは君のサインなのか?」

「いいえ」

私は首を振る。

アルテミオは大きくため息をついた。


「それが本当なら…王族の公文書偽造は重罪だぞ」

「申し訳ありません、私がよく知らなかったばかりに…」

ぎゅっと握られた両手は微かに震える。


父は、断ることはできないぞと言ってそのまま私の名前を書いていたはずだ。

提出したのかどうかは分からない。


「今から取り下げるんだな」

「そうは…いきません。兎族の未来がかかってますから」

「どう言うことかな?」


私はその金の瞳から逃れたくて俯く。


「兎狩りが横行しているからですよ。猫族と婚姻を結べば他族への往来も、危険な道を渡らなくて済む」

山々に囲まれた兎族が、領地の外へ出る術はいくつかあるが、中でも猫族へ抜ける道は平地で見晴らしもよく治安も良い。

だから兎族は猫族と懇意にしているのだ。

ただ、どうしても通行料がネックだった。

そのことを話すと

「おいおい、まさかその通行料のために一国の姫を売る気なのか?」

「売るだなんてそんな…もともと妹に来ていた縁談ですし」

「だから!それを君に押し付けたんだろう」

アルテミオは大声を出して怒る。私は驚いて身体が固まった。


「すまない、君に怒っているんじゃないんだ。大きな声を出して悪かった」


私は悲しくて、ぽろぽろと溢れる涙が止まらない。

アルテミオはそっと私の肩を抱く。


「触らないで」

「すまない」

「離してください」

「それはできない。離したら君は今にも消えてしまいそうだから」


私はアルテミオの胸を押す。


「もう、これ以上、私の心に土足で入ってこないで…」


(ああ、言ってしまった)


アルテミオは一歩二歩と退がる。


(でもこれで良い)


「世間知らずな私の利用価値なんて、何も知らない馬鹿のまま、他族のお飾り王女になって、一族が誰一人感謝もしないまま、私のことなんか忘れて…兎狩りなんて本当にあったの?ってみんなが昔話するような…そんな…」

「そんなの!君が一つも幸せじゃない!」


アルテミオは不敵に笑って言う。

「反旗を翻そうじゃないか、姫」

「何を?」

「言っておくが、僕は君を諦めない」

そう言って私の腰を抱く。

アルテミオの顔がぐっと近づく。


「返事はすぐじゃなくてもいい。ただ、君が望まないのなら共に戦おう」

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