宣言式と結婚式
神官の低い声が響いた。
「アルテミオ・シングレ、そしてリリー・マゼラン。神の名の下に、その生涯の伴侶として契りを結んだ。よって二人は、夫婦としてお互いを慈しみ、助け合わなければならない」
「誓います」
私の指に指輪を滑らせ、アルテミオ様の指に指輪を滑らせた。
お互いの目の色の石がついた指輪。
ベールを捲る手がぎこちない。
ぼやけた景色がくっきりと明瞭になる。
誓いの口付けは緊張して、ぎゅっと顔がこわばってしまった。
「?」
そっと目を開けると、アルテミオ様が頬を軽くつねった。
神官は笑いを堪えて
「まあ、良いでしょう」
と言ってくれた。
おかげで一気に緊張が解れる。
夫婦の契りとして交わされたくちづけだったけれど、それはやはり熱を帯びていた。
それからすぐに宣言式に移行する。
神官が私たちに手を翳す。
「私、アルテミオ・シングレは、国王として狼族と新たに加わった三国を治め、命を賭けて民を守ると誓います」
「私、リリー・シングレは王妃として、国王を支え、国の平和と民を守ることを誓います」
(わあ!)
神官が大きく何かを放るような仕草をしたかと思うと、光の帯が出現した。そしてそれを掴むと、私たちの頭上で結ぶ仕草をする。
光のリボンは粒子となり、キラキラと私達に降り注いでやがて消えた。
「…滞りなく終了致しました。改めて、国王陛下並びに王妃殿下。この地の民として、お二人の人生の旅路が豊かなものとなるようお祈り申し上げます」
深々と頭を下げた。
この式典には私とアルテミオと神官、そして神様しかいない。
神聖で心が洗われるような気持ちだ。
自然と頬を涙が伝った。
これから私たちは披露宴会場へ移る。
そこにはレイ達使用人や招待客が待っているのだ。
(なんだか、ちょっと照れくさいな)
そんなことを思いながら、誓いの間を後にする。
父君の肖像画の隣には、いつかの記号みたいな似顔絵が飾ってあった。
✳︎ ✳︎ ✳︎
お祭り騒ぎの夜が更けて、アルテミオ様はすっかり酔わされてベッドに沈んでいる。
(これは二日酔いコースなのでは…)
明日から新婚旅行だというのに。
ちょっとだけがっかりする。
うさぎのぬいぐるみを使って、頬を撫でてみたり、ぬいぐるみの口を寄せたりした。
(可愛い…)
くくく、と笑っていると、酔っ払いの手が伸びてきて抱きしめられた。
「リリー」
「もう!お酒くさいですよ!」
腕を掴まれて、ぐるっと景色が反転する。
「闇夜で輝く赤い目はぞっとするほど美しいな」
「金の目も、まるで星みたいです」
「…君が欲しい。細胞の一つまで僕を刻みつけたい」
ふわふわの髪の毛を撫でる。
その手に口付けが落とされる。
私の形を辿って、やがて唇が重なった。




