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白い髪の毛と赤い瞳

「なぜって…」

私はそっと自分の髪を一束取った。

視線を髪に落としたまま、ぽつりぽつりと言葉が滑る。


私は、領地から出たことがほとんどない。

白い髪と赤い目は目立つからと、両親が気にしてくれたからだ。

対して妹のマリエと両親はよくパーティに出かけていた。

両親も妹も美しいブロンズの髪に濡れたような黒い瞳。


私だけが違う見た目だ。

でもそれはお婆さまから受け継いだ尊い血なのだと教わったし、大切に育ててくれているんだなと感じるからこそ大人しくしていた。

きっと、兎族の貴族と結婚して領地を出ないまま生涯を終えるんだろうーー

などと考えていた。


でも、ある日両親は猫の王子との縁談を持ってきた。

外の世界をよく知らない私が猫の一族とやっていけるのだろうか。

聞けば、私の誕生日パーティの際に猫族の王子が私を気に入ったと言うのだ。

ぜひ妃として迎えたいということだった。


私の誕生日パーティといえば半年前。

猫の王子と話した記憶はない。

それに、半年も経った今になって、なぜ声がかかったのか。

疑問がぐるぐる頭を巡る。


そこで聞いてしまった、妹と両親の話。


「でも本当に大丈夫かしら?マリエとリリーじゃ見た目が全然違うもの…」

「お姉さまが代わりに嫁いでくれることになったのでしょう?私、猫なんて絶対嫌だもの」

「大丈夫、かわいいマリエが猫に嫁ぐことはない。あそこの王子は好色で有名だからな、リリーに行かせれば良いんだ」

「そうよ、そのために世間知らずに育てたんだから。自分の子でもないのに衣食住を補償してやっただけありがたいと思ってほしいものよ」

「全く…母上も困った人だ。あんなの遺して死にやがって…チッ」

「あら、私はお婆さまに感謝するわ。だってお姉さまのお陰で私は猫に嫁がなくて良いんでしょう?」

「確かにそうかもしれないな…可愛い娘はマリエだけだ」

「そうよ、私たちにはマリエがいれば良いんだから」


ーー何を話しているのだろう?

空と地がひっくり返ったみたいだ。

血が逆流するような……

気持ち悪い。


気がつくと私は城を去り、領地を出て走った。

どれくらい走ったか、気がつくともう、自分がどこにいるかも分からなくなっていた。

とぼとぼとあてもなく歩いていると、彼岸花が見えた。


『もし、困ったことがあったら彼岸花の咲く森に行きなさい。きっとお前を助けてくれるよ』

父や母から教わった森はここなのだろうか?

赤い色、私の瞳と同じ色。

導かれるように森に入った。


風に揺れて咲く花は、ぞっとするほど美しい。

私は、木にもたれて座った。

足が痛い。

あんなにたくさん走ったこともなければ、必死に逃れようとしたことも初めてだ。


(マリエは猫と結婚したくないのね)

(私は、父と母の子ではないのだろうか?)

(世間知らずに育てた、というのはどうしてなのかしら…)


漂うに任せた疑問が頭を重くして、ぶんぶんと振り払った。

白い髪がゆらゆら振れる。


(そんなことはない、きっと何かの冗談よ。私は愛されて育ったもの……)


(愛されて…?)


いや、そうだろうか?

例えば、着ているドレスは全てマリエのお下がりじゃないか?

私が何かを買い与えてもらったことなどあるだろうか。

パーティに行きたいと駄々を捏ねたら、目立つからダメだと言われた。

だから行ったことはない。

もちろん領地の外のことは分からない。

マリエを可愛すぎるきらいはあったけれど、それは小さい妹だからで…


(待って、マリエはもう17歳よ…小さいと言っても私と一つしか変わらない)


姉は我慢をするもの、妹に譲るもの。

一度思った疑念は大きく膨らむ。

あの時も、この時も、その時も、あれもこれもそれも全部全部マリエのためのことなのかしら。

私が優先されたことがあったかしら。


(いいえ、たとえ本当に両親の子じゃなかったのだとしたら…育ててもらっただけ、ありがたいじゃない。何を贅沢な…)


だとするならば、なぜマリエはそのことを知ってて私は知らないの?


(やだやだやだ…)

私は怖くて身を震わせた。

そこへーー



「おや、うさちゃんはこんな所にいたのかあ」


黒い影が落ちて、見上げるとそこには熊の猟師がいた。

続きは明日15時ごろ投稿します。


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