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あなたのことは、疑いません(アルテミオ視点)

「君は兎んとこの姫だったか」


下から恐怖を孕んだ目線が返ってくる。

社交界で見る兎族からは、警戒心を強く感じはしていた。

美しい鷹の一族にちょっかいを出されることを厭うのもそうだがーー

あまりに弱く、いつも怯えている印象だ。

以前、兎の姫君を見たことがあるが、確かブロンズの髪だった記憶がある。

だが、目の前の姫はブロンズではないし、怯えてはいるが自己主張ができる強さがありそうだ。


「少し、話をしても良いかな?」

「どうぞ…」


手を上げて人払いをした。

執事や侍女は「あまり構いすぎますな」と言い残して部屋を後にした。


「君を襲っていた猟師は熊の一族だったね、なぜあんなことに?」

「分かりません。私が兎だからじゃないですか?」

「おいおい、本気でそんなこと言ってるんじゃないだろうね?」


話していて思った、いささか世間知らずだ。いや、まるで童話の話をそのまま信じている子どものようだ。

両親の教育を真に受け、食べる=食事だと思っていることや、兎は襲われても仕方ない一族だと思っていること。

いくら閉鎖的な一族とはいえ、曲解した知識はどこから得たものなのかが謎だ。

獣じゃあるまいし、人が人を食うわけがない。


人々がそれぞれの住む環境に合わせて、動物の特性を手に入れ生きてきたこの世界。


強く気高く、金の瞳を持つ狼族

漆黒の髪と漆黒の瞳を持ち、頭脳明晰な烏族

強靭な肉体を持ち、茶色い髪の熊族

ずる賢いが美しい鷹族

しなやかで華奢な体つき、キャッツアイをもつ猫族

そしてーー

弱い、たが美しくミステリアスな兎族


「熊の所には僕から勧告状を送っておこう。あの森は狼族の領地だ。不法侵入に殺人未遂が妥当だろう」

「やめてください、ことを荒立てたくない」

「まだそんなことを言うか?それに君だって、一体なぜ森にいたんだ?」

まじまじとリリーを見つめる。


「…近いです。少し離れていただいても?」

気づけば、鼻と鼻がつきそうな距離だった。


「っ!すまない」

その赤い瞳に吸い込まれそうだ。思わずパッとのけ反った。

咳払いして続ける。

「言っておくが、君だけの問題ではないのだよ。あの森では最近、盗賊だの追い剥ぎだのと、物騒な事件が横行していてな。先日も烏の所の男爵が乗る馬車が襲われているんだ」

「危険な場所、だったのですね…」

リリーの唇が震えて、血の気が引いている。


「狼族というだけで警戒しないでほしい。別に取って食うつもりもない。僕は君の味方だから。だから教えてほしい、なぜ一人であんな所にいたんだ?」


ぎゅっと結ばれた唇を解くことはなかなか叶わない。


「僕が信用できない?」


リリーはふるふると頭を振った。

美しい白銀の髪が揺れる。


「アルテミオ様のことは…恐れながら、すぐに信じることは難しいですが、疑うことはもうしません。その…そんなに恐ろしくないから…」

「よかった」

そっとリリーの髪の毛に触れる。


「あのう」

「なんだい」

「父と母から言われたのです。狼族は恐ろしい種族だと…あ、両親を罰したりしないで下さい!兎は臆病できっと気後れしてのことだと思うのです」

「他族の王を罰するわけがあるまい」

はあ、とため息をつく。

そんなことも知らないのか。

ならーー

「知りたいか、外の世界が。閉鎖的な一族の姫は」

「はい…とても。本当は知りたくて仕方がありません。私たちは猫族とだけ互いの領地を行き来しておりますから。私は他の一族のことはあまり知らないのです。臆病故の愚行です」

リリーは吐き捨てるように言った。


「姫、良かったら話してくれないかな?」

赤い瞳をじっと見つめる。まるでルビーみたいだ。

たまらないと言う表情でリリーは話し始めた。

「私たち一族は元より閉鎖的ですが、両親は私を殊の外領地に閉じ込めていました」

臆病すぎる性質。

それ故横行した兎狩り…

そんな事を話す。


「兎狩り…?」

こくりと頷くリリー。

「どうしてか、兎の一族は狙われるのです。森で襲ってきた熊族のように。兎族の中でも特に白髪と赤い目は希少で狙われると」


それは早急に調べねばなるまい。

僕の領地で…許せない。

ぎりっと歯軋りした。


「ですので、この際、猫族の王子と婚約すれば兎族が皆少しは安心して暮らせるのだろう、と両親が縁談を持ってきまして…」

聞けば、断ることは許さないと言われたそうだ。


「なぜそうなる」

本日もう一話投稿します。


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