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狼王子に溺愛された兎姫  作者: あずあず
バッドエンドルート〜23話まで
14/40

鷹の姫、イリスと婚約を破棄する!(アルテミオ視点)

リリー姫はすぐに立ち去ると言ってなかなか聞かなかったが、間も無く日も傾くという理由で、どうせならパーティまでの二日間、狼城に滞在してもらった。



その日以降、リリー姫と顔を合わさないまま、ついにパーティの日を迎えた。


続々と招待客が迎え入れられる。


派手なドレスに身を包んだ美しい、だが毒のある笑みを浮かべる鷹の姫イリス・セントナードその人が来た。

イリスは僕に気がつくと、お互い形ばかりの挨拶を終える。

端正なその顔立ちの口角だけが笑みを含んで、それが社交辞令だとわかる。笑みを湛えた口元だけが動く。

「婚約者として振る舞うことを許してくださいますか?」

「婚約は破棄されたはずです」

言葉と目線で今できうる最大限の拒絶を示す。


リリーは少し離れたところから、心配そうに見つめていた。


「先日父と話したのでしょう?書状が届いたのは後になってからで…」

「世迷言を」


ホールに優美な曲が流れる。

「言っておくが君とは踊らないぞ、鷹の姫」

言って胸元に忍ばせていた婚約破棄の書状を突き出した。

「ここには君の署名がある。確かにイリス・セントナード本人の署名だ」

イリスはたじろぐ。


「鷹領に届く前の書状になぜ君はサインができたのかな?」

「それは…父も言っていたでしょう?そのサインは偽物です。そこまでして、あの兎の姫と結婚したいのですか!?」

そう言ってリリーを指差したので、汚らわしい指先を向けられたことに些か腹が立ち、ため息をついた。


イリスはなおも続ける。

「公文書の偽造と、婚約者のいる身でありながらの不貞…相応の罰が必要ですわね」

「罰…おや、それは君の方ではないのかな?」


イリスは肩を震わせた。

根は小心者なのだ。


「君は、狼領にいたね?」

「あっ…」

美しい顔が歪む。


「君は確かに婚約破棄に関する書状を受け取った。そしてサインをした。でもそれは狼領でのできごとだな?」

「…証拠がありませんわね」

「証拠もなく言うほど僕も馬鹿じゃないのさ」


その言葉に、ぐっと噛み締めたイリスの唇は色が失われる。


「君は三週間前のパーティには来なかった。なのになぜあちらのご令嬢がリリー姫その人だと知っているんだい?」

「え、だってそれは白い髪に赤い瞳だからで」

「ほう?では、それは誰から聞いた?」

少しだけ沈黙がある。

「あなたは、リリー姫を見たことがありますね?そう、彼岸花の森で」

イリスは膝をついた。


「何故そこにいたか、全部言いましょうか?」

「ああ、やめて…!」

「彼岸花の根から毒を作ろうとしたな?」


イリスは絶叫した。

「やめてえええ!」

そして耳を塞ぐ。

「君は確かにこの地に滞在していたはずだ。僕に一服盛ろうとしたんだろ。彼岸花をわざわざ選ぶなんて、狼族の内部犯に見せたかったんだろうが…」


残念だったなあ、と耳元で言った。


「ここに改めて宣言する。イリス・セントナード姫との婚約は破棄し、リリー・マゼラン姫と婚約を結ぶ!」

続きは明日15時ごろ投稿します。


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