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狼王子に溺愛された兎姫  作者: あずあず
バッドエンドルート〜23話まで
12/40

幻影でも恥ずかしいです!

兎族の城に戻ってから三週間、私は臨時的な長として領地運営をこなした。

時々アルテミオから届く手紙には心を癒されたが、返事を書こうとすると、どうしても手が止まってしまう。


レイランもトノリーも面白がって返信を急かすので、図書室で本を読むふりをしながら少しずつ書き進めて、今日やっと返事を書き上げた。

とはいえ、もうすぐ狼領へ一旦帰城するのだ。


私はこっそり持ち出したアルテミオからの手紙の束を見た。


(それにしても、三週間で五通は多いのじゃないかしら…)


返事を待たずに次から次へ、よく書けたものだと感心する。

アルテミオの書いた文字は少しだけ丸くて、それが意外でそんなところがとても可愛く思える。


五通目の手紙をそっと開いて文字を撫でた。

インクが滲んでいる箇所がある。

文字が震えている箇所もある。


(これを書いている時、貴方はどんな顔をしていたの?)


つんと胸が締め付けられた。

不意に封筒の中を見ると、小さいカードが入っていた。


(気付かなかった…なんだろう?)


金の縁取りがされた厚手のカードだ。


ー寂しい時、これにくちづけしてごらんー


そう書いてある。

どういうことなのか、考えてもよくわからない。

なんとなくソワソワして、試してみることにした。


(今…私は貴方に会いたいわ、とても…)


カードをまじまじと見つめる。

恥ずかしい。

でも、誰にも見られたくないから、試すならやはり今…


えい、とカードにくちづけを落とす。


途端、光の輪がくるくると回転する。


(魔力?すごく綺麗…)


くるくる、くるくる

時折色を変えたり、光の強さを変えたりしながらカードの上を光が踊る。


しばらくすると、少し慌てた様子のアルテミオが小さく浮かび上がった。

『リリー姫、お会いしたかった』

「え、アルテミオ様?」

『信じられないと言う顔だね、これは魔力によって遠く離れた人の姿が見え、声も聞こえるカードなのだよ』


アルテミオに手を伸ばしてみても、その姿に触れることができない。

木漏れ日を触ろうとしている感覚に似ていた。


「この様に貴重なもの…ありがとうございます」

『本当はすぐに送りたかったのだけど、手配に時間がかかってしまってね…驚いたかな?』

「ふふ、はい、とっても」


私たちは他愛もない話を繰り返した。

しばらくすると、アルテミオが真剣な顔で見つめた。

まじと見られると、幻影であっても恥ずかしい。


『君に会いたくてね。…それから三日後に、我が狼族主催のパーティが開かれるのは知っているね?それまでに帰って来れそうかな?』

「はい、それまでには必ず戻ります」


アルテミオは手を伸ばした。

透き通る彼の手は、私の頬に軽く触れる様な仕草だった。


そうして唇にくちづけを落とされた。


不思議だ。

幻影だけれど、触れられた唇はなんとなく温かく感じる。


微笑み合うと、やがてアルテミオの幻影は消えた。

カードをぎゅうと抱き締めると、カードも緩やかに溶け出して形を成さなくなり、指をすり抜け消えていった。


(一回使い切りのカード…調達にどれほどの労力をかけられたのだろう?)


そんなことを思うと、なんだかとても嬉しかった。



自室に戻り、何事もなかった様に残った雑務をこなした。

今後は狼領に住みながら、兎領は別邸とし、時折滞在しては狼領に戻る。そんな生活になるだろう。


レイランがお茶を持ってきてくれた。

「明日には発ちますか?」

「ええ、そのつもりよ」

「殿下も早いお戻り、お喜びになるでしょう」

「そうだといいけど」

「今日はトノリーに思いっきり磨いてもらわなくては」

そう言ってレイランは穏やかに笑った。

続きは明日15時ごろ投稿します


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