【第13話 不穏】
第四十九章:不可解な状況
エストリアはついにアルディニアの手に落ちた。だが、歓喜に包まれるはずの戦場は、どこか冷え切った静寂に覆われていた。
「異常だ…。」
紅蓮の騎士団団長エクセリオン・ブレイズハートの低い声が響く。彼の緋色の瞳は、戦場跡をじっと見据えていた。
「この都市には、ヴァルディスの神器を持つ守護者がいるはずだ。それが、将軍カインを含めて一人もいないとはどういうことだ?」
彼の問いかけに、蒼玄の騎士団団長グラシス・ブルーレインズが眉をひそめ、冷静な口調で応じた。
「普通、エストリアほどの重要拠点には少なくとも一人の神器の守護者が配置されている。それがいないのは不自然すぎる。」
エクセリオンは静かに首を振り、次の言葉を吐き出した。
「考えられるのは二つだ。奴らがどこか別の場所へ動いているか、最初からこの戦いそのものが罠だったか…。」
その場に集まった兵士たちがざわめきを見せる中、フィンとジンも遠巻きにその会話を耳にしていた。
「おかしくないか?」
ジンが小声で言う。
「…ああ。」
フィンは剣を握りしめながら、目を伏せた。
カインの姿がないという事実は、彼らにとって単なる不在以上の意味を持っていた。
第五十章:戦いの余波
エストリアの陥落は、アルディニアにとって戦術的な勝利であった。しかし、その勝利の陰には、次なる戦いへの不安が確実に潜んでいた。
野営地に戻ったフィンとジンは、それぞれの武器を手入れしながら、静かにその日の出来事を振り返っていた。
「なあ、やっぱりおかしいと思う。」
ジンがポツリと呟く。
フィンは目の前の剣を見つめたまま、静かに答えた。
「俺も同じことを考えてた。エストリアほどの拠点にカインがいなかった理由がわからない。」
ジンは剣を鞘に収め、焚き火の炎を見つめながら言った。
「カインがいないってことは、奴らが別の計画を進めているか、俺たちを誘い込んでいるかのどっちかだ。」
「どっちにしても…次は厄介なことになりそうだな。」
フィンの言葉に、ジンは静かに頷いた。
その時、野営地の静けさを破るように、エクセリオンの厳しい声が響いた。
「次の命令に備えよ!」
夜空の星が彼らを見守る中、次なる戦いの足音が静かに近づいていた――。




