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第2話 二度目の結婚

 それでもまた、縁談が来たのね。

 今度は同じ男爵家。

 前の家とは違って、やっぱり実業家同士の方がいいか、ということで勧められたのね。

 流産したことで「石女(うまずめ)ではない」ってことが判ったというのも良かったらしいの。よく判らないわね。

 今度のひとは、ちゃんとお付き合いしてから結婚したのよ。

 それでいい感じのひとだわ、と思ったからだったんだけど。

 名前はチャールズ。

 ……今度は二つのことが一度に来たわ。

 まずね、私が嫁いだ家にはディアナっていう妹が居たのね。

 それが私と同じくらい。

 私達は仲良くなったわ。……少なくとも、私はそう思っていたのよ。

 チャールズとは仲良く暮らして、昼間はディアナと仲良くして、社交にも精を出して、今度はいいところに嫁いだわ、って幸せを噛み締めていた訳。

 ところでその頃、私の姉が今度は出戻ってきたの。

 姉は私より十歳上で、だけど歳よりは若く見えたわ。

 ただ彼女の方は本当に石女だったらしいの。

 それでいて、夫婦生活…… というより、行為自体が好きだったらしいのね。

 それにどうも、向こうの方がついていけなかったみたい。

 子供が産めないのに、ただひたすら身体は求め続けられる夫の方がくたびれ果てたってことらしいわ。

 何なのかしら。

 あのね、うちは三人きょうだいなのだけど、両親は確かに私のことを他の二人より甘やかしているという部分はあるのよ。

 貴女のところとは違うから、そこのところは誤解なさらないでね。

 ともかくうちの姉も兄も、……これはお母様の血筋なのか判らないのだけど、ちょっと変わったひとが出る様だったのよ。

 と言うのもね、

 母方の叔母様。

 この方は自分からピアノの道に一心不乱に打ち込んで、とうとう未婚のまま、夜会でその腕を披露したり、ピアノ教師となっているひとなのね。

 あと叔父様。

 こちらは医師の家に生まれただけあって、ともかく生き物に関心が高くて、それでもう研究のために海外に居ることの方が多いという方なのね。

 お母様はその中では珍しい方だったのですって。

 でもその何とも言えない気性があったから、社交界でも潰されずに済んだのかもしれないわ。

 ――で、そっちの血を引いたせいか、うちの姉は文学とか美術とか…… 美しいものが好きでね。

 あと、そう、性的に奔放というか。

 でも結婚してしまったら、さすがにそこの線は守っていた…… と思う…… のよ、たぶん。

 でも離婚したのだから、そうでもなかったのかしらね。

 だってそうでなかったら、私の夫に手を出そうなんてこと無かったと思うもの。

 ある夏皆で別荘に行っていたのね。

 夫は仕事であまり居られなかったのだけど、私はのんびりさせてもらったわ。

 そして帰る日はあらかじめ伝えておいたのだけど、汽車とか馬車とかの関係で、一日早く帰宅できることになったのよ。

 で、使用人達に「ただいま」と告げると、何か使用人達が一斉に慌てたのね。

 どうしたのかしら、と着替えるために夫婦の寝室へと向かおうとすると、お待ちくださいお待ちください、って皆止めるの。

 そこで私ぴんと来たの。

 さすがに一度目の結婚があれだったから、誰かが居るんだ、って。

 だから使用人達を一喝して扉を開けたのよ。

 夫婦の寝室のね。

 そうしたら誰が居たと思う?

 うちの姉?

 そうね、今までの話の流れだとそう思うでしょうし、半分は当たってるわ。

 そう、半分。

 もう一人女が居たのよ。大きなベッドの上には。

 ……ディアナだったわ。

 私はもう、その時頭がどうかしていたのだと思うわ。

 椅子に手を掛けて、思いっきりベッドに向かって投げつけていたわ。

 どうしてそんな力が自分に出たかと思うくらいよ。

 姉は心底驚いた顔をしていた。

 ディアナは今まで見たことの無いほど、醜悪な顔をしていた。

 ……違うわ。

 私、知っていたの。

 陰でディアナが私の悪口を言っていたことを。

 メイド同士の会話から、彼女のことは漏れ聞こえていたわ。

 何で私と同じくらいの歳なのに、結婚せずにずっと家に居るのか。

 噂話って凄いのね。

 あのきょうだいは、ずっと関係を持っていたのよ。

 そして二度子供を孕んで、一人は流産、もう一人はこっそり産んで、養子に出したって言うの。

 私が聞いていないと思うと、彼女達は何でも口にするんだわ。

 でも信じなかった。

 いえ、信じたくなかった。

 自分が結婚した男が、まさか実の妹とそんなことを延々していたなんて。

 そして両親もそれを薄々知っていながら止められなかったなんて。

 あれはもう一種の病気だ、ばれないようにしようってことで、一度離婚歴のある女と結婚したっていうのよ。

 信じたくないじゃないそんなこと。

 でも、そういう私の中で押し隠していたことが、目の前の現実で一気に爆発したのね。

 もう本当に、そこいらにあったものを目につく限り、投げつけたわ。

 燭台、時計、置物、別の椅子……

 さすがに三人が騒いだし、使用人達も私を止めて部屋から出したの。

 身支度を調えた姉が言ったわ。


「所詮あんたの夫もそんなものよ」


 ええ本当、教えてくれてありがとう、と言いながら、私は姉にのしかかって、何度も何度も頬を張り飛ばしたわ。

 いくら暴いたからと言ったって、それが免罪符になる訳ないじゃない。

 私はそのまま姉の馬車に乗り込んで、また実家に戻ったわ。

 姉の腫れた頬を見て両親は驚いたわ。

 そして私は姉の頭を押さえつけて、何があったか言わせたの。

 さすがに私の剣幕に、両親はぞっとしたみたい。

 実の妹と長い関係を持っている夫との関係は、私の方から切る様にお願いしたわ。

 いえ、絶対切る様に、と。

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