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第1話 最初の結婚

 ……そうなの、それで妹ばかり可愛がる親や、その妹とも貴女、結婚を機に絶縁してしまったのね。

 うん、よく判る。

 いや判るなんて軽々しく言ってはいけないのよね。

 あ、いや、私は妹の立場だったし、たぶん…… 兄や姉からすればそう見えていたかもしれないし。

 でも、……ほら、私もう離婚三回目でしょう?

 まあ、三人目の夫との間に生まれたこの子、今はもうこの子のためだけに生きて行こうと思っているの。

 普通父方に引き取られる?

 まあ…… その辺りもね……

 で、その原因の二回が上のきょうだいだったら妹としてはどうすればいいの、ってことなのよね。

 きょうだいが引き起こす不幸って、何と言っていいのか、っていう意味でよく判るってことなの。

 本当に気を悪くしたらごめんなさいね。


 

 まあね、最初の結婚に関しては家同士が決めたことだったし、私もほら、年頃になれば結婚するものなのかしら、と思って特に疑いもなかったの。

 で、私はほら男爵家と言っても成り上がりだし? 

 そこの次女って言ったら、うちの資産目当ての結婚よね、て今では判るのよ。

 だからその最初の相手はアダムって言ったんだけど、彼はまあ私としては別に可も無し不可も無し、だったのよ。

 夫婦生活もまああったし、そりゃあ一年経っても子供ができないというのもあったけど。

 夫の帰りがあまり無いからっていうのもあるわね。ちょうど帰った時が私の障りの日とか。

 で、そのアダムはそれでも私には「ああ、気にしなくていいよ」だったのね。

 まあその頃から使用人達は、外に女が居るということは気付いていた様なのね。

 アダムがそのことは口にしないように命じていたから、私はさっぱり知らなかったのだけど。

 結局気付いてしまったのは、その相手が乗り込んできたからなのよ。

 彼女はベティ・ストランプ子爵令嬢。

 私が嫁いだ先、アダムのお家も子爵家だったから、釣り合う相手だったという訳。

 で、彼女が言ったの。


「ふうん? こんな子供と結婚したの。じゃあ仕方がないわね」


って。

 子供? 子供だったかもしれないわ。

 だってまだ私十七でしたもの。

 でも向こうから是非に、と乞われて結婚したのよ。

 さっきも言ったけど、うちは男爵家だけど、資産だけはあるから。

 逆ね。資産で国に功績があったから男爵家になったのだもの。

 ベティ嬢曰く「金儲けの上手い家」だったのよ。


「何の御用ですか」


とその時私、聞いたのね。

 すると彼女、子供ができたから正妻様にご報告に、とまた勝ち誇った笑顔で言うのね。

 もうその時は使用人は大混乱。

 私には彼女のことも、子供ができたことも本当に寝耳に水ですもの。

 ベティ嬢はそれでせめて住まわせて欲しいって言い出したのよ。どうもご実家の子爵家の方からは何処にでも行けと言われたそうで。

 それで子供の父親であるアダムの家に妾として住み込むけどいいでしょう奥様、って。

 奥様として尊重するから、って。

 私はもうその時は頭に血が上っちゃって。

 その時はそれまでの生涯で一番大きな声を張り上げたと思うわ。


「馬車を! 家に帰ります!」


ってね。

 無論皆止めたわ。

 そんなことしたら自分が旦那様に怒られます、って。

 だったら辻馬車でも何でも使って帰る、歩いてでも行く、と言い出したから、もうさすがに止められなかったみたい。

 突然帰ってきた私に、両親は本当に驚いて、その時の仕事も放り出して私の話を聞いてくれたの。

 怒った両親は、すぐに弁護士を呼んだわ。うちは娘にそんな思いをさせるために嫁にやったんじゃない! って。

 母は「もう戻らなくていいからね」と抱きしめてくれたわ。

 その後、アダムが謝罪に来たのよ。

 だけど話が通じないの。


「だって君との結婚はそもそも家同士のものだし。貴族とはそういうものだよ。ベティは昔から僕の恋人だったんだ。だから子供も彼女が産んでくれるよ、辛い妊娠出産もしなくていいから。そう、両親も君がただ女主人でいてくれればいい、と言ってくれてるし」


 私はそれを聞いた途端、頭から血が一気に引いたわね。

 そして確かに引いたのよ。

 視界が真っ暗になって、その場に崩れ落ちてしまったんですって。

 そこはもう後でお母様に聞いた話ね。

 私、その時自分でも気付かなかったけど妊娠してたんですって。

 本当に偶然!

 それがアダムの言葉が私のそれまでの常識とかけ離れてたことも大きいのよね。

 私の中では、うちの両親の姿が、結婚の当然の姿、理想だったの。

 うちの両親はね、成り上がりと言われていた男爵の元に、医者の娘が嫁いできた形なのね。

 お父様は社交に不慣れなお母様をできるだけそういう場に出すのは最低限にしてくれたの。

 自分が社交界でなかなか難しい立ち位置に居たからでしょうね。

 これでもしお母様に、淑女のたしなみが無かったら、きっともっと大変だったでしょうね……

 お母様はその辺りが充分で、しかも周囲から「分をわきまえてる」と言われていたらしいの。

 実際その辺りは、お母様から後で聞いたのだけど。

 そんな風に、お互いのことを気遣いつつ、仲も良く、私達子供達のことも考えてくれている二人の姿が夫婦の姿の理想としてあったのね。

 だから妾がいて当然、子供は向こうに産んでもらえばいい、っていう――というか、そもそもベティが一番だ、ってことを全く隠しもしなかったアダムに幻滅した、というのが一番だったかしら。

 それで、私の最初の結婚は終わりになったわ。

 お金の問題があれこれあったかもしれないけど、私の耳には入ってこなかった。

 だって私はその時の流産で、しばらく寝込んでいて。

 やっと床から上がった時にはもう何もかも終わっていたんですもの。

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