第1話 疑いのはじまり
《迷宮主の間》
入口から玉座まで続く通路には、ゴーレム達が綺麗に整列している。
最前列にはミスリルのゴーレム。
次列には白金のゴーレム。
その次に金のゴーレム。
その後ろ、そのまた後ろと、俺が様々な素材で作ったゴーレム達が立ち並ぶ。
そして、玉座の前では、俺が作った“特殊な8体”が片膝をついて控えていた。
その数は14体だ。
その通路を俺はのんびりと歩く。
俺は、Tシャツと半ズボンでバスローブを肩に掛けた姿だ。
風呂上りでちょっと熱い。
ゴーレム達が見守る中、俺は玉座に腰を掛けた。
俺が着席すると、ゴーレムたちは一斉に俺に向かって向きを変える。
「いや~。ほんと良い風呂だった。」
俺は、目の前で片膝をついて控える“特殊な8体”に声を掛けた。
“特殊な8体”の14体が顔を上げる。
序列1位
《ドルトンディアス・オマラティゴ・クロスタンドルス》
■素材:アダマンタイト
■身長:180cm
■特徴:全身黒色の男形(第1形態)
■能力:バランス重視
序列2位
《フィリア》
■素材:アダマンタイト
■身長:170cm
■特徴:紫色の長い髪を後ろに括った女形
■能力:攻撃力重視
序列3位
《アルト》
■素材:アダマンタイト
■身長:170cm
■特徴:蒼い短髪の男形
■能力:攻撃魔力重視
序列4位
《シュウナ》
■素材:アダマンタイト
■身長:160cm
■特徴:朱色の髪をした男勝りな女形
■能力:すばやさ重視
序列5位
《ミジェル》
■素材:ビブラニウム
■身長:400cm(葉込500cm)
■特徴:緑色の樹木形
■能力:回復重視
序列6位
《キングストン》
■素材:オリハルコン
■身長:300cm
■特徴:黄色の6本腕武者男形
■能力:きようさ重視
序列7位
《ハーマ》
■素材:ダマスカス鋼
■身長:700cm
■特徴:白銀色の竜形
■能力:守備力重視
序列8位
《ゴラン1~7》
■素材:ミスリル
■身長:各600cm
■特徴:淡い虹色の石像形(合体形)
■能力:1=かしこさ重視
2=攻撃力重視
3=守備力重視
4=HP重視
5=魔力重視
6=すばやさ重視
7=きようさ重視
因みにゴランは、いま目の前にいる7体が合体して1体となる。
俺の最高傑作だ。
序列は、俺が作った時期によるものであり、強さによるものではない。
まあ、それぞれに良さがあるから、誰が一番強いのか分からんけどね。
「さて、俺が寝ていた間のことについて、順番に報告してくれるかな。」
俺は、まず序列1位の黒色を見た。
「“魔獣の迷宮主”が、3度お越しになられております。」
「何か言ってた?」
「1度目は目覚めたら連絡するように。2度目はまだ寝ているのか。3度目はいつまで寝てんだバカヤローとのことでした。」
「うわw それ、怒ってるよね? 連絡したくねえなあ。」
次に報告してきたのは、紫色だ。
「先程、お伝えした通りですが、20階層を単独で踏破した者が現れました。」
紫色が合図すると、後ろの列から鉄ゴーレムが5体前に出てきた。
その手には、20階層主であったであろう鉄ゴーレムの“核”と砕け散った欠片を持っている。
俺は、その“核”を見て瞬時に悟った。
「おい。これは?」
「はい。“呪い”のようです」
その鉄ゴーレムの“核”は、修復が不可能な状態となっている。
“核”が“呪い”で汚染されているのだ。
「緑色、この“呪い”の解除は?」
俺は、緑色を見て質問した。
緑色は回復重視で作ったゴーレムであり、“蘇生”以外のスキルは全て持っている。
「はい。すデに試みましたが不可能デした。どうやら“特殊な呪い”のようデす。」
俺は腹が立った。
ゴーレムは生物ではない。
その為、“核”が無事であれば、作り直すことが可能だ。
それが“呪い”によって、“亡き物”とされてしまった。
「その単独踏破者は、“呪物所持者”のようだな。」
「そのようです。」
「ギルドは何か言ってたか?」
「いえ。恐らくは、まだこれを把握していないものと思われます。」
「わかった。この後、すぐにギルドに行く。」
「かしこまりました。」
次に報告してきたのは、蒼色だ。
「10階層の“要石”に触れた者が出まして、構造が大きく変化しております。」
「まじかよ・・・みんなで砂のアートを作ったところだよな?」
「はい。残念ながら、現在はただの“砂漠“と化しております。」
「ああ・・・そう。」
10階層は砂漠が広がっている。
昔、面白みがないから、“特殊な8体”と一緒に砂の巨大アートを幾つも作った場所だ。
あの時は、3年くらいの時間を掛けたと思う。
大作だったのに・・・。
俺は落胆した。
「まったく、誰だよっ!“要石”に触れた奴は!」
朱色が地面を蹴って怒る。
朱色が作った砂のアートは、確かに“アート”であった。
俺には、あれの良さがさっぱり理解できなかったが。
迷宮には、階層ごとに“要石”がある。
その“要石”を傷つけると、階層の様相が一変してしまう。
それは、迷宮主でも力が及ばない原理なのだ。
「もういいや。はい次、朱色。」
俺は朱色を見て言った。
「ないよ。」
「はい、次。」
俺は、その後、緑色、黄色、白銀色、七色の順番に報告を聞いた。
迷宮内に“音楽”を取り入れる調整が順調に進んでいるという、七色の報告は素晴らしかった。
この世界では“音楽”は貴重だ。
音には力がある。
文字通り、音には“力”があるのだ。
俺は、“魔獣の迷宮主”に連絡を入れるのは後回しにして、とりあえず“探究者ギルド”に向かうことにした。
俺の迷宮の前には“街”がある。
この1年で、ますます栄えてきたようだ。
久しぶりに探究者ギルドの扉を潜った。
中にいる者たちが一斉にこちらを見てくる。
驚く目。
怖がる目。
羨む目。
その表情は色々だ。
これだから人間は面白い。
親しげに声を掛けてくる奴もいるけど、誰なのか全く分からん。
まあ、どうでも良いことだ。
俺はそいつらを適当にあしらって、ギルドのカウンターに向かった。
すると、受付係の女性が慌てて奥に入っていく。
そして、またすぐに出てくると、俺たちは奥の部屋に通された。
部屋に入った俺は、すぐにソファに腰を掛けた。
俺の後ろには、供回りとして連れて来た2体のゴーレムが立っている。
紫色と蒼色だ。
こういう時、ヒト型をしていないゴーレムを連れてくると、街全体がパニックになる。
本当は、合体完成型の七色とかを連れて来たいのだけどね。
「ここに来たのは何時ぶりかな?」
俺は振り返って、後ろに立つ紫色と蒼色に尋ねた。
「そうですね。1年ぶり以上かと。」
「何せ、まるまる1年寝ていらっしゃいましたから。」
片目に大きな傷痕があるドワーフが、部屋に入ってきた。
「待たせたな。それにしても、久しぶりやすぎないか? ミライ。」
この探究者ギルドのギルドマスターだ。
「ああスマン。どうやらまる1年寝ていたらしい。」
俺はそのギルドマスターに言った。
「・・・・・。まあ良い。その寝起きで、今日は何の用だ?」
「俺の“迷宮”だが、寝ている間に20階層まで到達した奴が出たらしくてな。」
「ああ。それは“コマゾー”だな。僅か1年という短期間で、A級にまで登りつめたルーキーだな。」
「ほぅ? 1年でA級なんて、初めて聞いたな。」
「恐らくは、世界初の新記録だろうな。それだけの実力があるということだ。」
「そのコマゾーというのは、一体何者だ?」
ギルドマスターは少し考え込んだ。
「迷宮主に探究者の情報を漏らすのは・・・どうかのう・・・・。」
「これを見てくれ。」
俺は鉄ゴーレムの呪われた“核”をテーブルの上に置いた。
「どうやらそいつは、“呪物所持者”かもしれんのだ。」
こうして、後(本編)に大賢者となるコマゾーは、“呪物所持者”の疑いを掛けられていたのであった。
誰も気づかぬ山奥の秘境にある小説を読んで下さいまして、誠にありがとうございます。
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