第11話 兆しのはじまり
テンポが悪くなりましたので、今回は2話分を1話にまとめたことで長文となりました。
次話から展開が大きく進みます。
その為に必要な長文ですので、ご容赦下さいませ。
俺の迷宮の周囲は、全て砂で埋め尽くされた。
いや、俺が指示を出したのだから、砂で全て埋め尽くしたと表現するべきだよな。
せっかく良い具合に栄えてきた街は、当然こと砂で埋まっている。
建物の2階部分や屋根が、所々で砂から顔を出している程度だ。
俺の目の前には、遺跡を発掘したかのような風景が広がっていた。
・・・・・。
闇の炎は沈下した。
砂の浄化力には改めて驚かされた。
砂で埋め尽くしたことに後悔はない。
それでも、人々の生活や思い出を全部埋め尽くしたのだ。
少し罪悪感を持ってしまう。
7体に分離した七色の姿が見える。
砂を掻き分けながら、少しでも何かを見つけようと作業する人々を手伝っているようだ。
七色は真面目だ。
これまでは、その巨大なる姿で人々からは恐れられていた。
唐突に訪れた災い。
太古の巨神兵と闇の炎の襲来に対して、人々を救う為に真っ先に俺の迷宮から飛び出したのが七色だった。
きっと、七色に救われた命もあるのだろう。
七色に対する人々の意識が変わったように見える。
俺の迷宮の入口は、さっきまでは階段を上がったところにあった。
その階段は砂で埋まり、いまは入口がフラットに近い状態となっている。
入口の両サイドに立つ2体の石ゴーレムは、胸の高さまで砂に埋もれていた。
「砂から出て良いぞ。」
俺は、2体の石ゴーレムに言った。
俺の指示を受けた2体の石ゴーレムは、砂から這い上がろうとする・・・が動けない。
それを見かねた紫色。
片手で石ゴーレムを鷲掴みにすると、砂から強引に引き上げた。
そこに探究者ギルドのギルドマスターが駆け寄ってきた。
彼は、この街の長でもある。
「何か・・・すまんな。街を崩壊させてしまった。」
「ミライ、お前が気にすることじゃないだろう。我々は感謝すべきところだ。」
片目に大きな傷痕があるギルドマスターのドワーフは、口に入った砂を指で払いながら答えた。
「そうか・・・そう言ってもらえると、少しは救われるよ。」
俺は、悲しげに砂を掻き分ける人々に視線を移す。
「ミライ・・・提案というか、お願いがあるのだが聞いてはくれぬか?」
「何だ?」
「街がこの状態となっては、どうしても復興までには時間が掛かる・・・。」
「そうだな。人手が必要なら、ゴーレムを貸すから遠慮なく言ってくれ。」
「それは助かる。それでな・・・。」
「どうした?」
言い難そうにするギルドマスターの顔を俺は見た。
左手の人差し指で、顔の古傷をポリポリと掻くギルドマスター。
「あのな・・・迷宮の1階層を街にさせてはもらえんだろうか・・・と思ってな。」
「は?」
「いや、このままでは雨風もしのげんだろ?・・・出来れば・・・な?」
「そうか、構わんぞ。というよりも面白い。迷宮の中に街を作るなんて発想は考えたこともなかった。」
「許可してもらえるか?」
「全く問題ない・・・・が、“要石”にだけは触れるなよ。一瞬で崩壊することになるからな。」
「それは大丈夫だ。1層の“要石”がどこにあるかは把握している。そこには頑丈な囲いを設けるさ。」
「おいおい。“要石”がどこに存在するのかは、迷宮主の俺でも知らないんだぞ? よく知ってるな。」
ギルドマスターはニヤリとした。
「そりゃあギルドだからな。だが、迷宮主にその情報はやれん(あげられない)ぞ。」
「はははっ。構わんさ。街を作るのに協力が必要なら言ってくれ。」
「すまんな。早速だが、力を貸してほしいことがある。」
「何だ?」
「水と食料がないのだ。」
「そうか、それは深刻だろうな。 」
そこに黒色、蒼色、白銀色が近寄って来た。
「丁度良いところに来た。 今から俺の迷宮の1層は、街にすることにした。」
「ほう、面白いですね。」
「かしこまりました。」
「可」
「蒼色、街の人々の飲み水を魔法で出してやってくれ。」
「かしこまりました。」
「黒色、各地に瞬間移動して、街の人々の食料を大量に調達してきれくれ。あと酒もな。」
「調達のお金はどう致しますか?」
「迷宮にある財宝や金貨を使ってくれて構わん。あと、運搬役で必要なゴーレムを何体でも連れて行って構わんぞ。」
「かしこまりました。」
「そのついでに、各地の様子を調べてきてくれるか? 今回の災いが、この街以外でも起きているのかを知りたい。」
「仰せのままに。」
「白銀色、食料となり得る獲物を狩ってきてくれ。出来ればドラゴンとかが良いな。」
「可」
俺の命令を受けると、3体はすぐに行動に移した。
それを聞いていたギルドマスターは、目を丸くして俺に語り掛けてきた。
「ドラゴンの肉に酒か!? 豪勢だな。とても助かる。」
「それで、少しでも生き残った人たちの救いとなれば良いんだけどな。」
「それがな。どうやら死者はゼロのようだ。」
「ホントか?」
「ああ。特にあのデカいのと、回復魔法で治癒してくれた緑に光る大木型のお陰だな。」
「それは良かった。」
死者がゼロと聞いて、俺は少し救われた気がしたのであった。
「頂き物で恐縮だが、酒にドラゴンの肉とくれば豪勢な宴会が出来るぞ。ミライ、お前たちも招待させてくれ。」
「構わんが、それを食って何か楽しいのか?」
「ふふふ。お前は知らんだろうが美味いぞ。それと食とは食べて飲んで楽しむ気持ちだ。」
「美味い?・・・そうか、楽しみにしておこう。」
「期待して良いぞ。」
食べて飲んで楽しむか。
俺には必要のないことで、これまで考えたこともなかったな。。
俺は、砂に埋もれた街に視線を戻した。
その見た先には3人の子供がいる。
すると、砂から顔を出した屋根を子供たちが棒で叩いていたのであった。
その音が耳に聞こえてくる。
「まずいぞ!あの子供たち、旋律を奏でようとしているっ!」
「!?」
俺が気付いた時は遅かった。
トン テン カン トン テン カン・・・
旋律良く棒で音を奏でて、キャッキャとはしゃぐ子供たち。
子供たちの命は消えた・・・・・と思った。
「?」「?」
子供たちに異変はない。
その音は、間違いなく音楽となっている。
俺は子供たちのそばに近づき、棒で屋根を旋律良く叩いてみた。
恐る恐る叩く。
大丈夫そうだ。
何も起きない。
音楽を奏でれば、音と共に命が失われる呪い。
それは、いつの間にか消えていた。
俺は紫色を連れて、迷宮の入口すぐの場所に設置してある“八芒星”に手を翳した。
この“八芒星”には、蒼色に転移の魔法を付与させている。
残念ながら、俺は瞬間移動の魔法が使えない。
紫色も同様である。
魔法には「無」「光」「闇」「火」「水」「地」「風」「雷」と8つの属性が存在する。
瞬間移動は無属性となるが、俺は光と闇の属性魔法しか操れない。
だから、この“八芒星”を使って迷宮内を移動する必要があった。
俺と紫色は、一瞬で迷宮主の間に移動した。
迷宮主の間には、残る“特殊な8体”の面々が顔を揃えていた。
6本の腕で、それぞれ異なる武器を手に持ち素振りをする黄色。
黄色は、暇さえあれば鍛錬するか何かの芸を練習している。
ゴーレムでも鍛えたら強くなるのであろうか?
静かに佇んで本を読む緑色。
いつも不思議に思うのは、その枝型で何本もある腕で、同時に何冊もの本を読んでいることだ。
それを全部読めているのだろうか。
朱色は、逆立ちした状態で寝ている。
いや、ゴーレムは眠る必要がないから、逆立ちしたまま静止している。
そして、妹とコマゾーがいた。
何やら口喧嘩のような遊びをしているようだ。
妹が、俺や俺の作ったゴーレム以外の者と話をする姿は初めて見た。
とても珍しい。
妹よ、友達ができて良かったな。
・・・・・・。
おい、ちょっと待て。
「コマゾー。何でお前がここにいるんだ?」
「んにゃ? ふむ。ミライ殿か。 もちろん、蒼色殿に瞬間移動で連れてきてもらったからだにゃ。」
「それは分かる。それで、何でお前は普通にここにいるんだ?」
「それは、我が蒼色殿に弟子入りしたからだにゃ。師である蒼色殿の主がミライ殿なら、ミライ殿は俺の主でもあるわけだにゃ。」
ん?
そういうことになるのか??
妹が俺に言う。
「ちょっ。バカ兄!このバカネコを早く追い出しなさいよ。」
「ふむ。ドジ娘には、それを決める権限はないにゃ。」
耳元をローブ越しに右足で掻くコマゾー。
「ほら!さっきから、ずっとウチのことをおちょくって馬鹿にするのよ!」
「馬鹿にはしてないにゃ。事実だにゃ。」
妹には、やっぱり初めての友達ができたようだ。
兄として俺は嬉しいよ。
俺は妹に尋ねる。
「ところで、お前は自分の迷宮に帰らなくて良いのか?」
「ん? だって、ウチの迷宮周辺でも災いが起きてるかもしれないじゃん。」
「心配じゃないのか?」
「全然。だって誰もいないもん。」
何か少し悲しい。
「それに帰ろうと思ったら、いつでも帰れるしね。」
妹は瞬間移動が使える。
しかも、根暗命で天然印のドジっ娘だが、魔力量だけは膨大に持っている。
「ふにゃ? ドジ娘は瞬間移動が使えるのかにゃ?」
「使えるわよ。それが何?」
「我にも教えてほしいにゃ。」
その言葉を聞いて、勝ち誇ったかのような顔をする妹。
「ふふふ。じゃあ、ウチの弟子にもなるなら、教えてあげなくてもないわよ。」
「ふむ。じゃあお断りだにゃ。」
そう言って、また2人の口喧嘩の遊びが始まった。
この2人、たぶん良い友達になれそうだな。
俺は、迷宮主の間にいるみんなを集めた。
紫色、朱色、緑色、黄色。
そして、妹とコマゾーだ。
「お前たちには、今からやってもらいたいことがある。」
固唾を呑んで俺の次の言葉に耳を傾ける4体。
そして、あまり興味なさそうな妹とコマゾー。
「この世界から音楽の“呪い”が消え去った。」
「え?まじ?」
真っ先に反応したのは妹。
「間違いない。そこでお前たちには、今から俺の迷宮の“テーマソング”を作ってもらう。」
黄色が首を傾げて挙手した。
その数6本。
「はい。黄色君。どうぞ。」
「てーまそんぐとは、何のことでしょうか? 某には聞き覚えがない言葉でございます故。」
「黄色君、良い意見だ。テーマソングとは、俺の迷宮のイメージを表現する歌のことだ。」
朱色が挙手した。
「はい。朱色君。どうぞ。」
「ミライが作れば良いじゃん。」
・・・・・・・。
もっともだ。
しかし、俺にはその才能がない。
そもそも、どうやって歌を作れば良いか分からない。
俺は、真剣な顔をして全員を見渡した。
「良いか? 歌というものはパッションだ。君たちの心なのだよ。」
しらーっとした顔で俺を見る妹とコマゾー。
俺はその目線を無視して命令した。
「俺の1階層は、今日から街に作り変えることにした。それを祝って夜に街の人と宴会というものを行う。みんなはそれまでにテーマソングを作っておくように!その宴会で披露してもらうからな。以上。」
俺の命令には絶対服従の4体。
俺の命令には興味なしの妹とコマゾー。
うん。夜が楽しみだ。
そして夜は更ける。
白銀色は、6体のドラゴンを狩ってきた。
それを黄色が6本の腕に持った刀で素早く切り刻む。
黒色は、膨大な量の食料と酒を調達してきた。
それをゴーレム達が次々と迷宮内に運び入れる。
やはり、各地で異変が起きているらしい。
黒色は宴会には参加せず、それらを調査してくると言ってまた行ってしまった。
蒼色は、貯水庫となるような場所を幾つか作り、そこに潤沢な水を用意した。
その水は、外にある砂を使うことで、どうやら魔法を使わずとも浄水ができるらしい。
街の人々の水は、とりあえず確保できたようだ。
これからのことは、街の人々が色々と考えながらやっていくであろう。
そして、宴会とやらが始まった。
ギルドマスターは、立ち上がると大声を張り上げた。
「さて!みんな!準備は良いかっ!?」
街の人々から歓声が沸き起こる。
「今回は災難だった。でもみんな無事で良かった!それも全部、この迷宮の主とゴーレムたちのお陰だ!」
「よくやった!」
「ありがとう!」
「ヒューヒュー!」
街の人々から、色んな声が上がる。
その全てが感謝と歓迎の声だ。
「だが!この中にいる探究者の諸君らは忘れるなっ!明日からはまた敵同士だっ!」
「えー!」
「もう最上階まで行かせろよ!」
「難易度落とせ!」
「あの子可愛い。」
探究者どもから、色々と勝手な声が上がる。
その全てが楽しそうで笑いを含んだ声だ。
1人だけ、何か変なことを言った奴がいたな・・・まあ、気にするまい。
銅系ゴーレム達が、街の人々が調理したドラゴンの肉と食料を給仕していく。
そして、酒や飲み物も配られていった。
テーブルやイスはまだない。
だから、全員が地べたに座っている。
「明日からは街の再興で忙しくなる!今日は、今だけでも忘れて盛り上がろう! 乾杯っ!」
「乾杯っ!」
「乾杯っ!」
「乾杯っ!」
俺は、みんなの様子を真似して言った。
「かんぱい。」
宴会は盛り上がった。
街の人々にヘンテコな芸を見せる黄色。
探究者の男どもからジロジロと見られる紫色と朱色。
若い女性からベタベタと触られている蒼色。
子供たちの玩具にされている七色。
どうしたら良いかよく分からずにキョロキョロする白銀色。
酒に酔って潰れた人を介抱する緑色。
何か、良い雰囲気だな。
「ミライ、食べてるか?」
俺のそばにギルドマスターが寄って来た。
「ああ。美味しいというものが分かった気がするよ。」
「そうだろう?食事というのは、人の心を豊かにするんだ。」
「そうだな。俺には必要ないと思っていたが、これからは嗜んでみることにしよう。」
「いつか、静かに2人で飲む機会でも設けるか?」
「そうだな。」
「それはそうと、俺が酔い潰れる前に伝えておく。」
「どうした?」
「太古の巨神兵から姿が変わったという、元A級探究者パーティー・ブラッドスパイクの戦士だがな、他のメンバーも姿が消えている。」
「どこに行ったか分からないのか?」
「不明だ。何があったか調査をするが、何やらキナ臭いな。」
探究者は、その実力に応じて上からA~Dまでランクが振り分けられる。
コマゾーのように単独でAランクの資格を持つ者だけが集まってパーティーを結成した場合は、特例で「S」ランクに認定されることになっているのだ。
ブラッドスパイクは、Aランクのパーティーであった。
探究者の中では上位であったことになる。
「まあ。今日のところは飲むとしようじゃないか。」
ギルドマスターは、俺の肩を優しく叩いてまた行ってしまった。
街の長として、何やかんや気を遣って回っているのだろう。
その頃。
俺の迷宮の1層から2層に繋がる階段では、妹が1人で座っていた。
その妹に近づき、酒と食事を手渡すコマゾー。
「あの人たちの輪の中には入らんのかにゃ?」
「嫌なの。」
・・・・・・。
それ以上のことは何も尋ねないコマゾー。
「それ、熱いうちに食べてみるといいにゃ。ドラゴンの肉だにゃ。美味いにゃ。」
「美味い?」
「そうにゃ。美味いにゃ。」
ドラゴンの肉を口に入れる妹。
「すぐに飲み込むんじゃないにゃ。噛んでから飲み込むんにゃ。」
「そう・・・。」
・・・・・・。
「あのね。ウチ、知らない人と話をするのが恐いの。」
「どうしてだにゃ?」
「分からない・・・。」
「なら、無理をする必要はないにゃ。気が向いたら話をしてみたらいいにゃ。」
「これ、美味しいね。」
妹は笑った。
「だから言ったにゃ。」
コマゾーはほほ笑んだ。
宴会は終盤に入った。
そして、お待ちかねの俺の迷宮のテーマソングを披露する時間だ。
トップバッターは黄色。
街の人々に見せていたヘンテコな芸が受けて、どうやら人気者になったようだ。
黄色が歌い出す。
いよぉ~!よおっ!よ、よ、よ、いよぉ~!
※小説の都合上で説明を付け加えると、耳で楽しむ歌舞伎の歌といった感じをイメージして下さい。
うん。
俺の迷宮のテーマソングではないな。
2番手は紫色だ。
オラオラオラオラオラァ!!ウラウラウラウラウラァ!!
※小説の都合上で説明を付け加えると、ヘヴィメタルといった感じをイメージして下さい。
うん。激しいな。
一部の紫色のファンとなった男どもが、激しく頭を振ってノリノリになっている。
その次は朱色だ。
もう、今日はテーマソングを期待するは止めておこう。
俺がそう思った時。
とても素敵な旋律の歌が聞こえてきた。
そして、素晴らしい歌声。
※小説の都合上で説明を付け加えると、読者の皆様がイメージされる最高の歌と思って頂ければ幸いです。
「意外だな・・・。」
テーマソングは決まった。
まさかの朱色だった。
俺のそばに妹とコマゾーが近づいてきた。
人が集まった場所に妹が出てくるとは珍しい。
「とても良い歌ね。」
「そうだな。」
宴会は最高潮の盛り上がりとなった。
そして最後は、緑色だ。
・・・・・・・・・・。
※小説の都合上で説明を付け加えると、ヒーリングミュージックという感じをイメージして下さい。
緑色の歌は、歌というよりも心地良い癒しの音色であった。
その音色を聞きながら、街のみんなは次々と眠っていく。
緑色が歌い終わった頃には、みんながその場で横になって眠っていたのであった。
パチパチと拍手する妹とコマゾー。
こうして宴会は終わった。
その時。
俺の横に黒色が瞬間移動して現れた。
「ご報告があります。」
「どうした?」
「東の沼地で、大量の魔種の集団が沸いておりました。」
「魔種? それも太古の存在だろう?」
「はい。ですが、魔種に間違いありません。」
「数は?」
「恐らくは、200~300くらいかと。」
「そうか・・・。」
俺はこの時、明らかに油断していたのだと思う。
楽勝で太古の巨神兵を倒せたことで、浅はかにも神話に伝えられる太古の存在は然程強くないものと、勝手に思い込んでいたのである。
「太古の巨神兵を相手にした時、俺の出番は無かったからな。今度は俺が直接討伐してみたいな。」
「それでは、お供はどうなさいますか?」
「そうだな。黄色と鉄ゴーレムが200もいれば十分だろう。」
「せめて、もう1、2体は“特殊な8体”をお連れになられては?」
「十分すぎるくらいだろ。そうだな、魔法役として新参のコマゾーを連れていくか。あいつの力を見ておきたいしな。」
「かしこまりました。くれぐれもご無理はならないで下さい。」
「ああ。危険だと思ったらすぐに引き返すさ。」
「私と蒼色で手分けして、鉄ゴーレムを沼地まで瞬間移動させますか?」
「いや。数が多いからな。今から準備して向かえば、明日の朝までには沼地に着くだろう。街の再興の方は、黒色に指揮を任せるよ。必要を求められたら手助けしてやってくれ。」
「かしこまりました。」
俺は、黄色とコマゾーを呼び寄せた。
東の沼地に大量の魔種の集団が沸いた為、今から討伐に向かうことを伝える。
コマゾーが面倒臭そうな顔をしたが、その討伐の活躍次第では蒼色の弟子として認めてやると言うと、あっさりと了解した。
鉄ゴーレムを上層階から呼び寄せる。
街の人々を起こさぬよう、静かにゆっくりと迷宮の外に出た。
俺、黄色、コマゾー。
そして、200体の鉄ゴーレム。
俺たち討伐軍は、いや俺は、意気揚々として東の沼地へと向かったのであった。
誰も気づかぬ山奥の秘境にある小説を読んで下さいまして、誠にありがとうございます。
更新頻度はまちまちですが、続けて投稿していきます。
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