第十話 人間
全てが、フィアとアハトの思惑に従って動いていた。少しずつ位置を変えて襲撃をしてくるゴブリンたちの目的が威力偵察であることを見抜いた彼女たちの。無限の兵力を持つ魔獣が、陽動の規模を超えた陽動を行うだろうと見抜いた、彼女たちの。
今や街には魔獣が入り込み、内部で増殖されたゴブリンたちが混沌を生み出していることだろう。なれば、忌子の一人が死んだところで目立つことはなく、また、アハトが街に向けて魔術視を使ったところで不審がられることはない。
魔装から冷気を溢れさせ、その奥にある氷竜の瞳が、遥かなデプンクトの内側を見通す。
「オーガが一体、いえ、二体、三体……。ホブゴブリンが数十いますが、あの程度ならものの数ではないでしょう」
「オーガが複数……。本体がどれかわかるか?」
「わかったら苦労してませんよ! このあんぽんたん!」
ギルバートがいる手前、アハトはあくまで魔獣や魔物を報告するにとどめるが、その瞳が探しているのが忌子であることに疑いはなかった。アハトはお姉様に報告がしたいのにとぶつくさ言いながら、アハトは敵の全容を暴いてゆく。草原での戦闘を終え、あらためて整列した騎士たちは、そわそわと落ち着かない様子でそれを眺めている。
街を、助けたいのだろう。
フィアに首根っこを掴まれているノインの落ち着かなさとは違う、純粋な正義感による感情。彼らは人間らしく、同胞が傷つけられているさまを見過ごせないのだ。鼓膜を叩く雨の足音、それを透かして聞こえてくる、オーガの咆哮、人々の悲鳴。かちゃかちゃと、鎧の装甲が擦れる音がしているのは武者震いか。
やがて、アハトが魔術を解き、報告を聞き終えたギルバートがフィアに問う。
「どう見る」
「絶望的ね。でも、本体を倒せば増殖体がすべて消えるのが救いかしら」
「……おれもそう思う。今から一匹ずつ潰すことに意味はない。おれたちで、もう一度本体を潰す」
ギルバートは、負傷した右腕を庇う様子もなく言い切った。フィアはただ肯定を返す。
否やはない。この状況を作り出したと言わずとも、この状況を望んでしまったフィアは、最初から尻尾を巻いて逃げる選択肢を用意していない。
「でも、オーガが三体もいるんです。四人一組で殺して回るには数が多いですよ?」
疑問を呈したのはアハトだ。それももっともな話で、先ほど彼らが演じて見せた激戦をいちいち繰り返しているのでは、当然時間もかかるし彼らの消耗も激しい。アハトは自分の腰に巻いたポーチをひっくり返し、何も出てこないことを見せつける。彼女の代償魔術はもう期待できない。
「それでも、やるしかないだろう」
「加えて言うなら、本体はきっと、もっと強力なのに?」
「そうだ。それで負けて死ぬなら、おれは神の使徒として、ここが死に場所だったというだけの話」
まるで、叙事詩の英雄か何かのようなことを言うギルバートだが、冗談などではなかった。アハトのじとっとした視線を受けても眉一つ動かそうとしない彼に、アハトはこれ見よがしなため息をついた。
「わかりました。わかりましたよ! やればいいんでしょうやれば! その代わり、こちらの提案を一つ聞いてもらいますからね」
「ほう。言ってみろ」
「アハトたち四人を、二組に分けるんです。お姉様とお前、アハトとノインがいいでしょう。そっちの方が、本体を見つける時間が省けます」
「だが、どう倒す」
「どうせ増殖体は首を落とせば死にますし、ゴブリンよろしく最初は油断しているんです。奇襲で首を落として、死んだら偽物、生きてたら本物。本物だったら、お姉様かアハトが合図を打ち上げて、合流するまで持ちこたえる」
「……ずいぶんと危ういが」
「そっちの方が、街の被害を抑えられる可能性が高いですよ」
思案顔になるギルバート。彼の頭の中ではきっと、自分のことなど勘定に入れず、フィアやアハトの命すら駒として、ただ人の命を守る算段だけが組まれているのだろう。それを見越した、アハトの誘惑の言葉だ。ややあって、ギルバートは頷きを一つ。
「それで行くぞ。準備をしておけ」
「準備で言うなら、ほら、右腕を出してくださいよ」
「何をするつもりだ」
ギルバートのぶっきらぼうさは無視して、アハトは詠唱を呟いた。治癒の魔術だった。痛みを取り去る暖かな冷気がギルバートの右腕を包み込み、きめ細やかな薄氷が傷口を塞ぐ。ギルバートはピクリと眉を動かし、信じられない様子で自分の右腕を眺める。
「便利なものだな。竜の魔術は」
「勘違いしないでくださいよ。そのくらいしておかないと、お姉様を預けるなんてできないってだけですから!」
「なんだ。勘違いとは」
「は? おちょくってんですか? キレますが?」
「やめなさい。本当にわかってないのよ。多分」
フィアの言う通り、ギルバートは急に怒り出すアハトを珍獣か何かのような眼で見ていた。そして興味を失うと、騎士たちの方へ歩いていく。フィアたちが魔獣に専念しようとする以上、街の人々を守るのは彼らに頼むしかないから。その命令と鼓舞に向かったのだろう。まもなく、彼の堂々とした声が聞こえてくる。
その時、雨に濡れたローブの裾がくいと引っ張られた。アハトだ。フィアはわずかに身をかがめ、アハトのささやきに耳を寄せる。
「忌子は見つかりました。見つかりましたが……少し妙です」
フィアは眉をひそめた。今まで、二年ほど一緒にこの仕事をしてきて、「妙です」というあいまいな報告を聞いた覚えがなかった。
「だから、ギルバートを抑えたうえで、確実に処理をしたいんです。そのために二組に分けました」
「つまり、私はギルバートの監視役ってこと」
「そうなります。アハトが忌子を殺して、それから合流しましょう」
けれども、今までフィアを一度も裏切ったことのないアハトだ。彼女が言葉を濁すということは、特別大きな影響を持たない違和感程度のものなのだろう。
魔術視持ちのアハトが忌子狩りにあたり、信頼のおける前衛としてノインがそれに付き添って、残ったフィアがギルバートを抑えるというのも、理にかなっていた。フィアはアハトの策を受け入れる。
ほどなく移動を始める騎士たちの後ろについて、フィアたちも移動を始める。やってやるぞと拳を突き上げるノイン。それに同調する周囲の騎士。その黒い右手が人も魔物も等しく殺すことを、フィアとアハトだけが知っていた。
◇◆◇
ギルバートとフィアは街並みを駆ける。もともと、魔獣襲撃の報があったから。逃げ惑う人々が彼らの行手を塞ぐなんてことはない。ぴっちりと閉ざされた戸口や窓は、その奥にある怯えた息遣いを伝えるようだ。
そして、ゴブリンたちはそれを感じ取って、棍棒で壁を破ろうと躍起になっている。ギルバートの剣がすれ違いに首を落とした。
「衛兵は死んだか」
「どうかしら。あの物量だから、単に手がたりてないんじゃない」
「ふむ。道理だ」
フィアもまた、襲いかかってくるゴブリンの側頭を短剣の柄頭で打ち据え、首筋を裂く。魔術は使わない。自分の身体を満たす魔力は残りわずかだ。フィアは気怠さとしてそれを感じ取り、四節の魔術を十全に打てるのは残り一度だろうと見当をつけていた。
彼女らの進む通りから、横に伸びた裏道で、ゴブリンたちの汚い笑い声。どこぞの裏口を破ることに成功したのだ。迷わずそちらへ駆け出すギルバートを、フィアは追う。
「しかし、意外だったな」
「何がよ」
雑草を刈るように蹴散らしながらのギルバートの言葉。
「お前は寄り道をしたがらないだろうと思っていた」
「あぁ、そういう……」
助かったという心からの感謝の言葉に、フィアはむしろ眉をひそめる。
ギルバートの認識は、正しいものであるはずだった。魔装乙女である自分はあくまで殺人者であり、自分と同じ行き詰った殺人者を量産するもっとも非生産的な存在で。なにより、この状況を望んで待っていた存在だから。本来、フィアは何より魔獣を優先してしかるべきなのだ。
そうだというのに、全てを知らないはずのギルバートですらそうだというのに、なぜ自分は人を助けようとするのか。フィアは、助けた人々をまだ無事な家へと送り届けるまで護衛しながら、考える。
何のことはなかった。それは、フィアが普段から抱える、自己の存在と矛盾した感情。罪悪感なのだから。
人を殺しておきながら、自分はまだギリギリのところで、人でいたいのだろう。フィアは自嘲する。ギルバートが自分であったのなら、迷うことはないのだろう。ノインが自分であったのなら、迷うことはないのだろう。
フィアは頭を振って、心のうちの深いところへ下っていこうとする自分を奮い起こす。今はそんな場合ではないのだ。
「そろそろ、あのうるさい娘の言う場所だが」
ギルバートが呟いたとき。
重い破壊音。続く悲鳴。
それを嘲る魔獣の嘲笑は、オーガのそれだ。
「行くぞ」
「えぇ」
口数の少ない二人は、音を頼りに裏路地をかける。
フィアは声を押し殺して詠唱を。ギルバートは騎士剣の刻印を起動させ。
一撃の構え。彼らはそれぞれに必殺の一撃を携えて。
今、大通りに出る。
「いやっ、来ないで!」
外壁の崩れた家。女の子。襲い掛かるオーガ。
フィアの動きが一瞬止まる。その女の子が忌子だと、彼女の魔核が告げている。
アハトはどうしたのだと戸惑う心を待つギルバートではない。
彼の光輝く騎士剣は残光を残し、オーガの後背から斬りかかる!
その時、通りに並び立つ家々の屋根から影が躍る。
「――ッ! 詠唱三節・多頭の炎蛇!」
本来なら四節の詠唱を、強引に三節の詠唱に捻じ曲げて。フィアの炎の蛇がまっすぐに飛ぶ。
その一頭一頭が、緑色の矮躯を捉える。オーガを守るように飛び出したゴブリンたちが、空中で炎に阻まれ墜落する。
ならば、ギルバートの剣は。
まるで見えているかのように後背に腕を回したオーガが、ギルバートの剣を鷲掴む。岩石すらバターのように切り裂くその刃が分厚い掌をすり抜ける前に、ぐるんと腕を回す勢いでギルバートを投げ飛ばす。
空中でくるりと一回転。態勢を整えたギルバートがフィアの隣に着地する。
「……おかしい」
「何がよ」
混乱冷めやらぬ中、フィアはギルバートの疑問を聞く。
「奴は、後頭部に目を増やすことなく、おれを捉えたぞ」
「なんですって?」
それは、彼女たちが討滅したマルチプルオーガとは、同じようでいて確実に異なる点だ。あのオーガは、生物として異常な視野の広さを獲得していたが、それはあくまで眼球という弱点を増殖させることで獲得した、副次的なもの。
フィアたちの眼前で、ぐつぐつと笑うオーガは少女を放置してこちらに向きなおる。その体はぶくぶくと沸騰を始め。やれ今に腕が増えるぞと身構える二人。
しかし、産み落とされたのは、新たなゴブリン。
「まさか。嘘でしょ」
増殖していくゴブリンたちは、まるで訓練された騎士たちのように鶴翼の陣を作ってフィアたちを包囲していく。最後に生み出されたホブゴブリン二体が、オーガの両脇を固めるように控える。
ギルバートに襲い掛かったゴブリンたちが、偶然そこにいたのでなく、伏兵としてそこに潜んでいたのなら。
フィアは上空に火球の魔術を打ち上げる。それは曇天の中でパッと散って、雨の中でも十分な合図になっただろう。
「ギルバート。私たち、運が悪いわね」
「なるほど。それは重畳だ」
目の前にいるこのオーガこそ、マルチプルオーガの本体ということで間違いはないだろう。
しかも。ギルバートが剣を構え直すに合わせて、ゴブリンたちが一斉に警戒の唸り声を上げ始めた。見えない何かで繋がりあっているような、統率の取れた動き。
このオーガは、増殖体と意識を共有できるのだ。
その強大さが、いかほどであったとして。悪は悪。ギルバートを止める理由にはならない。
「あぁ、もうっ!」
ギルバートが地を蹴った。フィアが詠唱を始めるが。
そうはいかない。先ほど詠唱魔術を見せてしまったからだろう。包囲を作っていたゴブリンたちが、破壊された家の建材を投げつけることで妨害をしてくる。こめかみにあたった一石が、フィアの集中力を乱す。
フィアは短剣を構えた。まずは、この包囲を壊さねばならない。
フィアがゴブリン相手に刃をふるう間にも、ギルバートは前進をしている。統率が取れていようが、ゴブリンはゴブリン。紙くず同然に切り払われるゴブリンたちだが。
ホブゴブリンはそうはいかない。城壁の外で戦った、あの有象無象どもとは、その練度が違うからだ。
迂闊に、大ぶりの攻撃をしない。そのうえで、二匹のホブゴブリンは攻撃の隙を埋めるような連携。ギルバートを圧倒することはできずとも、拮抗する。
そこにオーガが加われば、大勢は決まろうというもの。
「ぐぅっ……!」
振り下ろされた拳は巨人の鉄槌の威力を持つ。角度をつけて構えた騎士剣で受け流そうと。その衝撃力は殺しきれるものではない。よろけたところを襲うホブゴブリンの蹴撃。
鎧がひしゃげる。しかし、歯を食いしばるギルバートは、ホブゴブリンの足を左腕で抱え込んだ。
「まず、一匹」
右腕で横なぎにする騎士剣が、ホブゴブリンを両断する。
その隙を狙ったのであろうもう一匹。ギルバートは力任せに、両断したばかりの下半身を振り回した。威力こそないその攻撃は、ホブゴブリンの足を止めることに成功した。
神剣が閃く。
「これで、二匹」
ホブゴブリンの頭蓋を串刺しにした剣を、死体を足蹴に引き抜いて。ギルバートはオーガに剣を突き付けた。
赤黒い巨体は、すでに次のホブゴブリンを産み出している。
「……何度やっても、同じことだ」
ギルバートは血を吐き捨てながら言う。先ほどの一撃で、内臓が傷ついたのだろう。
それでも。彼はオーガへ立ち向かっていく。アハトを待とうと言ったところで、オーガの背後に怯え切った忌子の少女がいる限り、彼が立ち止まらないことをフィアは知っている。
絶望的な気分だった。
フィアがどれだけゴブリンを倒したところで、街の中に散ったゴブリンが集まってきているのだ。数は一向に減らず、むしろ増えているのではないかとさえ思う。
アハトとノインはどこにいるのだ。魔術視を持つアハトが、忌子を目標としている彼女たちがここに現れないはずはないのに。一向に現れない。
血と脂に鈍る短剣の切れ味。ゴブリンの喉を切り抜けられず、ゴブリンの死体もろとも、フィアの手から短剣が落ちる。ローブの内側を伝う嫌な汗。ゴブリンの嘲笑。
もしかして。アハトとノインもこうして苦戦しているのか。あるいは――
ギルバートがフィアのところまでさがってきた。
治癒したはずの右腕をだらりと下げて、足を引きずるその様子は、もはや満身創痍。それでもその瞳から闘志は消えておらず、身体の正面はオーガたちに向けたまま、じりりと後ずさりをしてくる。その背には、忌子の少女を庇って。
「おい。残りの二匹は」
「来ない。もしかしたら、何か……」
「そうか。なら」
ギルバートはぞんざいに、自分の背に縋りついていた少女を突き放した。急に放り出され、たたらを踏む少女を、フィアは身体で受け止める。金髪の彼女の身体は華奢に過ぎて、その肩に触れると、小さな震えが感じられる。すがるような視線がフィアに絡みついた。
「その子を連れて、逃げろ」
「逃げろって。そしたら、貴方は!」
「おれは神の騎士だ。勇猛果敢なる戦女神の使徒たるおれに、魔物に見せる背中はないのだ」
そう、ギルバートはフィアに背を向けて言う。
フィアは自分の手元に収まった少女を見下ろした。実際に触れるほどの距離にあって、確信する。彼女こそ忌子なのだ。彼女の目的。
逃げるべきだ。脳裏に浮かぶ妹の顔。赤い夢。彼女の存在意義たるそれらに照らし合わせて、忌子を連れて、厄介なギルバートを死地に追いやることに、何をためらう理由があるのか。
フィアは自分の意味を問う。その答えをかみしめる。
けれども、彼女はためらっていた。
ギルバートはすさまじい人間だ。正義に殉ずることのできる、およそ人間として最大の美徳を持つ男だ。彼の、まさに神の光を放つありさまは、フィアの暗くじめじめしたそれとは違う。フィアの心の中にすくい続けた感情が鎌首をもたげていた。
それは純粋な罪悪の意識であり、それゆえに強力に彼女の心を縛り上げる。
ギルバートはノインを見て言った。彼女にフィアが首輪をはめていなければ、斬っていたのだと。首輪が嵌まっていない魔装乙女など、魔物と変わらなくて。
では、フィアに首輪をはめるのは誰なのか。
「イヤよ」
答えは出ない。しかし、感情が言葉を生む。
「イヤよ。私は魔装乙女。死にきれない魔装乙女。死にきれず、死にきれないから、ただ手を前に伸ばして歩き続けてきたのに」
脳裏に浮かぶのは、二年前の氷竜事件。圧倒的な強さを持つ竜の前に、傷つくフィア。それを庇うように前に出たゼクス。その贖罪の力。
フィアは忌子の両肩に手を添え、ギルバートの方に押し戻す。彼の肩を引いて、自分と位置を入れ替えさせる。傷ついた彼を動かすのは魔装乙女の膂力ならばたやすくて。
珍しく驚きを見せたギルバートの表情に、フィアは心の中で言葉を返す。
私だって、何でこんなことをしているのか、わからないけど。
「だから、ここで立ち止まっちゃ、いけない」
死にきれないのならせめて、無為にでも人生を徘徊するのだ。
フィアは夢の中のように定まらない気持ちで、オーガと向かい合う。女が出てきたことにいよいよ醜い顔をゆがませて、下卑た笑みを見せるオーガ。ぐつぐつとした嗤い声はそれだけで、その存在が強者のうちに入るものだと証明している。
だがそれは、彼女の右目に宿るモノだって変わらない。
フィアの右目、その魔装に魔力が集まる。漏れ出すは灼熱の竜気。魔術の極致たる竜の、あらゆるを踏みしだく王者の力。その鼓動。
解き放てば、全てを焼き尽くし、フィアの大事なものさえ消し炭にしかねないだろう。
フィアは息を吸う。この一歩は、彼女の未来への一歩か。はたまた断頭台への一歩か。
横一文字の赤い筋が、彼女の魔装の表面に走る。
「魔装、解錠」
そして、彼女の紅蓮の竜眼が、ついに開いた。
【Tips】詠唱魔術
詠唱により魔力を導き、その身一つで魔術を行使する魔術形式。およそあらゆる魔術を扱えるが、魔術行使に時間と集中を要する。フィアは火竜の魔核の力で魔術を行使しているため、炎熱系の魔術しか扱えない。




