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色めき出す登校

「えっ?な…なんで柚菜が…」


僕はドライアイになってもおかしくないほどに目を見開いた。


「あぁー。柚菜ちゃんおはよう。」


斗仁はいつものやや高めのテンションで言った。


「えっ?柚奈って家ここら辺なの?」


僕は驚きを隠せないままに言った。


「いや違うの…」


柚菜は恥ずかしそうにうつむく。

驚きすぎて気付けていなかったが、柚菜は何でサングラスをつけているんだろうか。

これじゃあまるでストーカーみたいじゃないか。


「あぁ、いやなんかさぁ。柚菜ちゃんが昨日僕たちと一緒に学校行きたいとか言ってきたからさ、家どこなのって聞いてみたんだよ。」


斗仁は柚菜と僕を交互に見ながら話した。


「うん」


「そしたら県外とか言い出すから、それは無理だよって言ったんだ」


え!?県外!?県外なのになんでわざわざこの学校に来たんだ?


「え…何で柚菜はこの学校に来たの?」


「私は…何となく」


「何となくでこの学校に来たの!?」


「うん」


なんとなくって…普通の人だったら、そんなありえないことはしないだろう。

わからないけれど、多分何かあったのかもしれない。


「何かあったの?」


僕は柚菜の顔をしっかり見ながらそう言った。


「うん…あった。私、前の学校でいじめにあったの」


柚菜が…いじめ?こんなに柚菜は可愛いのに、いじめる奴なんているのだろうか。


「ずっと、女の子の輪からハブられてきたの私」


柚菜は今にも泣きそうな顔で言った。

なぜかよくわからないが僕の中にはわなわなと怒りが湧いてくる。

わかった、あれだろ。

俗に言う嫉妬から来たいじめだろ。

一人の力では柚奈には勝てない落ちこぼれで不細工な奴らが数の力を駆使して、集団で柚菜を陥れたんだきっと。

なんてたちが悪い。

怒りを僕は拳に握りしめて、閉じ込めた 。


「そうか…よかったな。そんな学校から離れることができて」


僕はにっこりと微笑んだ。


「うん」


柚菜も気がつけば爽やかな顔に戻っていた。

せっかくだからサングラを取って欲しい。


「で、斗仁さっきの話の続きは?」


僕はおもむろに斗仁に話しかけた。


「あーそうそう。柚菜ちゃんがどうしても一緒に行きたいって言うから、僕はしょうがなく九牙の住所だけ教えたんだ」


「ちよっ!お前!」


僕は斗仁の制服の襟を掴んで柚菜から5 M 程度離れた場所まで引っ張った。

そして二人は、柚菜に背を向けて小声の会議を始めた。


「なんだよ」


斗仁は乱れた襟元を正す。


「なんだよじゃねーよ。何、勝手に人の住所晒してんだよ。」


「いや、九牙のならいいのかなーって」


「いいわけねーだろ!」


「どうしたの?」


柚菜は会議中のボクらを覗き込む。


「あぁーいや、何でもない」


僕はぱっと姿勢を正す。


「いや、九牙が何で住所を教えるんだよって怒ってきた」


斗仁は馬鹿正直に白状した。


「おいっ!」


僕は斗仁の肩を掴む。


「あぁ!ごめん!私なんかが住所を聞いちゃったらおかしいよね」


柚菜は手を合わせて誠意マックスの謝意を述べた。


「いや、全然!全然いいんだけど」


「いいの?」


「うんいいよ。だけどさ…」


そこで斗仁が突っ込む。


「いいのかよ」


「お前は一旦黙っとけ」


全く…斗仁は話をこじらせる天才なのか?


「えっと…それで柚菜は今日わざわざここまで来たってこと?」


僕は気を取り直すために若干と話題をそらした。


「うん、九牙くんに会いたかったから」


ここで柚菜はサングラスを取った。

いや、なんてベストなタイミングなんだ。

ニュートンとやらの名の科学者が万有引力うんたらかんたらとか言っているけれども、本当の万有引力はここにあるじゃないか。

それは柚菜の瞳。

萌えると思えるような台詞も相まって、いつも以上に可愛く見えてしまう。

駄目だ。悪魔的だ。

少しでも気を抜くと好きになってしまいそう。


「あーそうか…」


僕は無理やりテンションを下げた。

それにしてもよく県外から来るのにも関わらず、ここに1回寄るほどの時間を取ることができたな。


「えっ?何時に起きたの?」


ものすごく気になったので聞いてみた。


「4時」


「よじぃ!?」


4時ってまだほぼ夜じゃないか。


「でねっ!私早起きして九牙くんの分のお弁当を作ってきたの」


そう言って柚菜はバックから可愛い色をした弁当を取り出した。


「よかったら受け取って」


柚菜は優しく微笑む。

たった今僕の心臓は起爆した。いや、破壊力が強すぎるだろ。

不意な弁当参入にトロけていると、横から斗仁は言う。


「うわーいいなー。てか、いつから九牙ってモテてたっけ」


「いつからだろうねー」


僕は絶妙に適当な返事をする。

それにしても嬉しすぎるぞ。こんな可愛い子の手作り弁当なんて。


「ありがとう。めっちゃ嬉しい」


そう言いながら僕は弁当を受け取った。

弁当はまだ暖かい。

あれ?

僕の好きな人って…美晴だよな。

美晴でいいんだよな?

柚菜と喋っていると時折わかんなくなってしまう。

天秤が自動的に作動してしまうのだ。

柚菜のことは興味ない…そうだよな?

僕の中の究極の自問自答は、答える暇もないうちに終わってしまっていた。


「そろそろ行かない?学校」


斗仁が今日初めてまともな発言をした。


「そうだな。じゃあ行こうぜ、柚菜」


僕はそう言った。


「うんっ!」


「あれ?僕は?」


という斗仁の声が宙に舞っている中、僕たちは学校へと足を進めていった。

今日は、果たして美晴とどんな会話ができるのだろうか。

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