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ふくぼんシリーズ

【短編完結済】ふくぼんっ!~幼馴染に振り向いて欲しくて嘘彼氏をでっちあげたら、一時間後には彼女が出来ててその相手が相談してた親友なんだけど裏切られた!?後悔してももう遅いけど同時に意味がわからない~

「和樹!突然だけど、私彼氏ができたんだ!」


 幼馴染からの突然の告白に、俺はガツンと頭を殴られたような衝撃が走った。


「マジで?」


「マジだよ!」


「俺よりイケメン?」


「当然!」


「俺より成績いいのか?」


「当たり前だよ!」


「俺より運動できる?」


「YES!」


「俺よりそいつのことが好きなの?」


「モチのロンだよ!」


 あわれ俺の初恋は、この瞬間に木っ端微塵となって砕けたのだった。


「うわああああああああ!!!!」


「あ、待って和樹!どこいくの!」


 俺はダッシュした。幼馴染であり想い人であった桐乃。

 彼女を見なくて済むならどこでもよかった。


「ちくしょぉぉぉぉぉっっっっ!!!」


 ただ一刻も早くこの場から離れたかったのだ。

 俺は胸の痛みそのままに、風となって走り続けた―――





「うっ、ぐぅぅぅぅ。ひぐっ、ううう…」


 あれからどれほどの時が流れたのか。

 俺は気付けば見知らぬ公園のベンチに座り込み、ひとり泣きじゃくっていた。

 昔から大好きだった幼馴染。昨日も一昨日も、それこそここ1ヶ月毎日一緒に登下校して、休日も一緒にいたというのに。


「俺の知らないところで、彼氏を作っていたなんて…!」


 許せない。そんなのただのビッチじゃないか。

 俺はアイツのために、これまで頑張ってきたというのに…!


「あ、いたいた!やっと見つけたよー」


 裏切られた悲しみが憎しみへと転化し、ふつふつと煮えたぎる憎悪に飲まれようとしていた時だった。突然声をかけられ、思わず顔をあげると、そこには


「君は桐乃の友達の…」


「うん、裏霧(りぎり)だよ。桐乃に頼まれて和樹くんを探してたんだ」


 ニカッと笑顔を見せた子には見覚えがあった。

 桐乃の親友の裏霧さんだ。よく一緒にいる姿を見かけていたが、わざわざ俺を探すために彼女に声をかけたとは。


「そうか…でもほっといてくれ。今はアイツに会いたくないんだ」


「それって桐乃が彼氏を作ったから?」


 彼女の言葉に、俺はハッとする。


「知ってたのか?」


「うん、よく相談されてたからね。好きな人と仲良くなりたいけどどうすればいいのかなって」


 そうか…裏霧さんは知ってたのか。なら、知らされてなかった俺はとんだ道化だな。引っ込んだ涙がまた溢れてきそうになる。


「和樹くん、泣いてるの?」


「…うっさい」


 いや、実際もう流れていたようだ。女の子の前なのに止まらない。


「そっかぁ。あの子もひどいよね、和樹くんみたいないい男ほっといて他に彼氏作るとかさぁ」


 裏霧は優しい言葉をかけてくれた。そうだ、俺はこれまで桐乃のためにずっと頑張ってきたのだ。

 勉強もスポーツもファッションも。全部が全部アイツのために頑張って、努力してきたというのに…!


 身勝手な想いであることはわかってる。

 さっさと告白しなかった俺が悪いこともわかってるんだ。

 だけどどうしても、裏切られたという想いが消えてくれない。

 ずっと一緒だったというのに、他の男を作っていたという事実に、憎しみが消えてくれないんだ―――!



「…悔しいんだね、わかるよ」


 痛いほど手を握りしめていた時だった。

 とても優しく、穏やかな声が、俺の耳へと届いたのだ。


「和樹くん可哀想。私もあの子はてっきり和樹くんのことが好きだとばかり思ってたから相談にのったのに…ごめんね、こんなことになっちゃって」


 そう言うと、彼女は俺の顔に優しく手を添えられた。

 涙で濡れた頬に、裏霧さんの手はひどく温かく感じる。


「そんなこと…裏霧さんはなにも悪くなんか…」


「ねぇ、私達、付き合っちゃおうか」


 突然だった。その温かさに甘えそうになってしまい、振りほどこうとしたところで、そんなことを言われたのは。


「え…?な、なにを…」


「私もあの子が許せないもの。和樹くんを傷つけて、放っておいて…だからさ、私達も付き合って、あの子に見せつけてやればいいの。私達は桐乃より幸せになるんだってところを、あの子に見せてあげましょうよ」


 ね?と、上目遣いで見上げてくる裏霧さん。

 その瞳には抗いがたい魔性が秘められており、彼女の提案もまた、ひどく魅力的に思えた。


「あ、ああ…」


「ほんと!?やた♪じゃあ私達今から恋人同士だね!」


 気付けば彼女の提案に頷いており、それを見た裏霧さんは思い切り俺へと抱きついてくる。伝わってくる柔らかな感触に、俺は思わず面食らう。


「ちょっ、裏霧さん!」


「もう恋人だもん。これくらい当たり前だよ」


 本当だろうか。俺には今まで身の回りにいた女の子が桐乃坂

 くらいだから、そこらへんのことは全然わからないな…

 とはいえ、このままではいられないので、とにかく彼女を引き剥がした。


「と、とにかく一度離れてくれ」


「あん、もう、強引だなぁ。そんなんで大丈夫?これから桐乃に見せつけにいくのにぃ」


 不満そうに頬を膨らませる裏霧さん。だけどその言葉には、聞き捨てならない箇所があった。


「い、今から?」


「そ。善は急げって言うじゃない。さっきの場所で待ってるはずだから、早くいきましょ!」


 そう言うと、裏霧さんは俺の手を取り歩きだす。

 彼女の勢いに押され、俺はただただ彼女の後をついていく。


「―――そう、たっぷり見せつけてあげないと。ちゃあんと、ね」


 だからこの時彼女がどんな顔をしていたのか、見ることはできなかった。











「和樹も裏霧ちゃんも遅いなぁ…」


 あの告白からかれこれ一時間は経つけど、まだふたりは戻ってこない。

 私に彼氏が出来たという嘘告白。それにショックを受けたらしい和樹が飛び出していった後を、裏霧ちゃんが追っていったはずなのだ。


 去り際に「任せて」と言われたから私は最初の打ち合わせ通りここから動いていないけど、彼女の足の早さならとっくに和樹に追い付いてるはず。

 もしかしたら説明に時間がかかってるのかもしれない。ちょっとだけ不安だった。


「それにしても和樹、やっぱり私のこと好きだったんだ…へへ、ならさっさと告白してくれたら良かったのに、もう!」


 気を紛らわすために別のことを考え始めたのだけど、さっきのことを思い出すだけで、つい頬が緩んでしまう。


 あの時の和樹、すごくショックを受けた顔してた。

 つまりそれは私のことが好きだったからで…要するに私達、最初から両思いだったのだ。


(作戦大成功だよ、裏霧ちゃん…!)


 思わずグッと拳を握り締める。彼女に言われた通りにして、本当に良かった…


 つい先日、私は和樹と恋人になるためにどうすればいいか、親友である裏霧ちゃんに相談していたのだ。

 その際彼女に作戦をたててもらい、本日決行したわけである。その内容はこうだ。


 まず私が和樹を連れ出して、彼氏が出来たと告白する。もちろんこれは嘘で、和樹の反応をみるためのもの。

 この時何を言われようと全部偽彼氏のほうが上と言わないといけなかったのは辛かったけど、和樹と付き合うためだと思って我慢した。


 そうして和樹の反応が固まるか逃げ出すかだったら、陰に隠れて見守っていた裏霧ちゃんが追いかけるか連れ出すかをして、事の経緯を説明する。そういう手はずになっていたんだ。



(素直に頷くようなら諦めなさいと言われてたけど、あんなの私を好きな反応に決まってるじゃん!)


 この時、私は勝利を確信していた。

 後は戻ってきた和樹に謝って告白すればハッピーエンド。

 晴れて最高の未来が待っているのだと、全く疑っていなかった。


「……あ、来た!」


 そうしているうちに二人の人影がこちらに向かってくるのが見える。間違いなく和樹と裏霧ちゃんだろう。


「おーい!ふたり、と、も…」


 そう思って、手を振ろうとしたのだけど。







「あ、れ…………?」


 何故か私の目に映ったのは、まるで恋人のように腕を組む、私を好きなはずの幼馴染と、親友の姿だった。






「え、あれ?な、なんで………?」


 理解できずに固まる私に、二人は近づいてくる。

 間近でみると、本当に恋人同士に見えた。おかしい、そんなはずないのに。だって―――


「り、裏霧ちゃん、和樹。どうして……」


「見ての通りよ。付き合うことになったの、私達」


 私の言葉を無視するように、裏霧ちゃんは和樹にギュッと抱きついている。和樹もまんざらじゃなさそうで、顔を赤らめていた。

 そのことが、私には信じられない。


「ウソ、どうして…こんなのおかしいよ、あり得ないよ…」


「貴女がどう思おうが勝手だけど、これが現実よ。それじゃ私達はデートだから、もう行くわ。桐乃は自慢の彼氏さんと遊びに行ったらいいんじゃない?」


 なにいってるの、裏霧ちゃん。

 そんなのいないって、知ってるじゃない。

 だってそれは全部、裏霧ちゃんが―――


「ほら、行きましょ和樹。桐乃、それじゃあね」


「あ、ああ…行こうか、裏霧」


 そう言うと、二人は私を置いて進んでいく。

 まるでもう私なんて、眼中にないみたいに。


「ま、待―――」


 咄嗟に止めようとしたところで、裏霧ちゃんが少しだけ振り返った。


「え…?」


(あ・り・が・と♥️)


 口には出さなかったけど。

 彼女の唇は確かに、そういう動きをしていた。



「あ、あああああ…」


 裏切られたんだ、私。

 裏霧ちゃんは最初から、そのつもりだったんだ。


 私から和樹を奪い取る。そのつもりだったんだ………!



「ううううう……」


 だけど、気付いたところでもう遅い。

 私は好きな人を親友に奪われた。その事実は変わらない。


「あああああああああああああああ!!!!!」


 それがとても耐えられなくて、私はただその場所で涙を流し続けるのだった―――















「ほんとにバカねぇ、桐乃」



 まぁとりあえず、ありがとうね♪

ふくぼんシリーズその6です

今回は軽量化を目指しました、インスタントふくぼんです

下の評価を入れてもらえると、やる気上がって嬉しかったり(・ω・)ノ


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― 新着の感想 ―
[一言] 覆水盆に返らず、最高ですね。今後の執筆も期待します!
[良い点] 幼馴染じゃなくて親友でしかも騙して手に入れるところが個人的に良かった。
[一言] これ、まだ幼馴染も逆転の目がありそうな気がするなぁ
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