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ポーチの中のアイテム

作者: ペケ
掲載日:2020/03/02

私の父はよく職を変えた。

変えたというより

正確には変えざる得なかった。

仕事に恵まれなかったのである。

だが年子の子供3人の抱える父にとって

失業中無職スキルアップ転職という言葉はあってないものだった。

なのですぐに仕事に就ては

倒産したり

給料が払われなかったり

朝早く帰りも遅く体調を崩したり

安月給で家族5人養えず結局掛け持ちをしなくてはいけなくなりまた職を変えるのでした。

そんな父がとある工場で働いた時は



小学校五年生だった私は大人の世界を垣間見る経験をした。



中国人やフィリピン人ネパール人どこかの黒人ばかりの

ベルトコンベアから次々に流れてくるダンボールの中に商品を詰める内職のような所だった。

働き盛りのパワーのある父は内職業務からすぐに外されフォークリフトという荷物を運搬、移動する車の免許を取らせれ内職業務をする女性達にフォークリフトで次々にダンボールやそれらの内職物を配った。

納期が迫って終わらない内職があると当時小学五年生だった私も学校を休まされよく父の会社に働きに行った。

貧乏過ぎてお小遣いたるものもなく

お洋服さえも買ってもらえず

中学生だった姉の指定ジャージを着ていた私には、

時給600円✖️8時間➕200円のお昼代をつけて日払いで貰える5000円がすごく魅力的だった。

なので日雇い労働者や派遣者に負けずにハイペースでベルトコンベアから流れるダンボールの中に体より大きな品物を次々にぶち込んだ。

大人達は要領をわかっている為省エネで無機質に二人掛かりで品物を入れていった。

小5だった私は大人達は敵でライバルだった。


そんな負けん気努力が認められたある日

内職会社の社長に気に入られ内職セットの腰掛けポーチとカッターとハサミと軍手が貰えた。

私は他の日雇い労働者や派遣者が貰えない腰掛けポーチを貰えた自分が誇らしくステータスにも感じ父の仕事に行く時は必ずそのポーチを腰掛けて必ず軍手をし、いろんなパートさんのダンボールの紐を切ってあげた。


そんなある日段ボールで手を切る人が出た。

その人は商品の段ボールに血液をつけて怒られていた。

スカスカの腰掛けポーチの中に絆創膏があれば…

そう思った私は日当でもらった5000円で初めて絆創膏を買った。

それも少し奮発してキティーちゃんの可愛い絆創膏にした。


ポーチの中にはアイテムが加わった。

なんとも言えない高揚感を得た。

そして誰かが手を怪我するのを密かに心待ちにした。

ある日には段ボールで乾燥してひび割れをしているものもいた。

スカスカのポーチにハンドクリームがあれば…

そう思った私はその日の日当5000円でまたもやアイテムハンドクリーム〜バラの香りつき〜を加えた。

ある寒い日には倉庫の中が寒く冷えきってうまく段ボールに物を入れられない事に気付きその日の日当5000円でホッカイロを購入しアイテムに加えた。


私の腰掛けポーチはみるみるパンパンになった。


そんな日雇いバイト生活も一年続いて私は6年生になった。

ある日本屋さんで仕事ができる人出来ない人の

本を手に取った。

私は自分が仕事ができる人の分類だろうと

何気なしに開いたページに

カバンやデスクに物が多く入っている人は仕事が出来ない…という衝撃的なゴシック文字で書かれた衝撃文を目にしてしまった。

本を閉じ一呼吸起き

走って家に帰りポーチをひっくり返した。

一年間の日当で買った様々なアイテム…

カバンの中がパンパンになればなるほど

整理すればするほどできる女感を感じていたが全て覆された。

そして6年生になった私のポーチの中は結局社長が初めて与えてくれたアイテム

カッターとハサミと軍手で事足りたのである。

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