旅民達の星
思いついた話をそのまま書きました。
面白いかどうかはともかくもったいなかったので。
わたしには、家族が三人いる。
優しい父と母と、可愛い妹の三人だ。
わたし達家族は、徒歩で旅をしている。
ちなみに近場じゃない。近場じゃ旅じゃなく散歩だ。
わたし達は、わたし達が歩いているこの大地の上を……産まれた時から、ずっとずっと旅してる。
旅をしていると、わたし達は他の家族と時々出会う。
その家族も、わたし達と同じように、この大地の上を旅している。
「やぁ、こんにちは」
相手の家族の父親が挨拶をすると、
「こちらこそ、こんにちは」
父は相手に挨拶を返します。
「どちらに行かれるんですか?」
「私達は東の方へと」
「それはいい。あっちは良い天気でした」
「おや、そうでしたか。ところで、そちらは?」
「私達は西の方へと」
「西? 西はやめておいた方がいいですよ」
「おや。なぜですか?」
「西の方は大雨です。私達はそれから逃げてきました」
「なんと。じゃあ私達は……北へと向かいましょうかな」
「その方がいい」
「ご忠告どうもありがとう」
「いえいえ。お互い様ですよ」
「それでは、いつかまた」
「ええ。いつかまた」
そんな会話を交わし、わたし達はその家族と別れた。
わたし達は北へと向かった。
するとその途中で、夜になった。
わたし達は月明かりを頼りに寝床を作った。
岩でできた、とげとげの建造物の屋根の下に。
北の大地故か、岩でできた床のせいか……なかなか温まらない。
だけどわたし達は、身を寄せ合ってなんとか眠りについた。
※
翌朝。
妹は死んでいた。
妹は寝相が悪い。
だからいつの間にかわたし達から離れ、そのまま凍死してしまったのだ。
わたしは悲しんだ。
両親も、もちろん悲しんだ。
でもわたし達は、旅を終えるワケにはいかなかった。
住み心地の良い場所を終の棲家と決め、永住するワケにはいかなかった。
なぜなら、もしも終の棲家を決めてしまえば、ご先祖様がかつて体験した悲劇を繰り返す事になるから。
終の棲家を決めれば、それをキッカケに他の家族もその場所に住む。
そのまま人が増えていけば、悪い事をする人も増え、そこに法が生まれる。
そして別の法を持った別の集団と会った時、わたし達は価値観の違いから戦争をする事になる。
戦争が終われば、憎しみの種を残しながら、その二つの集団は一つになる。
それらを繰り返し続け……やがて人は国家を生み出す。
やがてその国家も、別の国家を認識し、対立し……国家規模の戦争が始まる。
下手をすれば、人類が絶滅するほどの……大きな戦争が。
わたし達のご先祖様は、かつてそのような光景を見てきた。
だからわたし達は、かつて失敗した人達と同じ失敗をしないように、旅を続けている。
でも……。
本当に、こんな生活を続けてていいの?
常に死と隣り合わせの生活を続けたままで……本当にいいの?
※
「あぁ、ダメだなこの惑星は」
宇宙船内の望遠鏡を使い、衛星軌道上から惑星を観測していた船長は呟いた。
「すでにこの惑星の先住民族たる猿人は、ある意味、真の平和とも言える生活を獲得している。まさに平和のモデルケースと言ってもいい惑星だ。そんな惑星に我々が介入したら、その瞬間にこの惑星の均衡は崩れ、平和ではなくなる」
「せ、船長……と、いう事は……」
私は訊ねた。
その先の答えは大体分かっていたけど。
「この惑星への移住は諦める。地球中央政府には、すでに我々を上回る高度な文明があったとでも言おう。そうすればこの惑星に干渉しようとはすまい。中央政府は高度な文明と戦争してまで、移住先を欲しているワケではないからな」
そう言うなり、船長は別の移住先候補の惑星へと目的地を変えた。
よかった。この惑星に決まらなくて本当によかった。
船長と同じく、あの惑星を観測していた私は思った。
これで、この惑星の民の平和は……永遠に続くのだ。
民達がこれから先、変な知恵をつけない限りは……。
※
世界人口が五十億人を突破し、人口の増加を原因とする様々な環境・経済問題がさらなる悪化を見せた近未来。
国連はそれらの問題に対処するため、これまで国家間で競い発展させてきた宇宙開発を、国家間で協力し合い発展させる事を表明。
この決定に一部国家は自国の利益を考え反対したが、最終的に全ての国が、次代の若者の事を思い、一致団結して宇宙開発に臨んだ。
――そして月日は流れ、十数年後。
ついに人類は、移住可能な星を見つけるため外宇宙へ旅立った。
果たして彼らが行き着く先は人類のさらなる発展か、それとも破滅か。
建造物の正体は……戦後に残った、旧人類の造った建物です。