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『Imazinica ─ワールドストーリー─』  作者: @work.TimeS
『Imazinica 1 ─黒狼と学園の乙女達─』
4/6

『Imazinica 1 [憂鬱な魔法少女と黒狼 3]』

──レベル5になり現れた扉を潜り抜けて森の奥へ向かう、もう一つの世界『ディラックワールド』へと続く黒い扉の前には金髪の青年が黒い箱の上に座っていた。


『……我はディラックの門番──禁忌なる存在"パンドラ"であるぞ』


魔法少女の初めてのボス戦が今、始まったのである……。





『遅かったな、初心者(ルーキー)よ? 我はディラックの門番──禁忌(きんき)なる存在パンドラであるぞっ!!』

「……誰?」

 扉をくぐり抜けた先は丸い切り開かれた広場になっていて、足を踏み入れると同時に目の前の不思議な格好をした金髪のイケメンが両手を広げ出迎えてくれた。

 深い海の底のような蒼い色をした民族衣装を羽織りジャラジャラと派手な装飾のネックレスを首に掛けている、傷一つない指には様々な宝石の指輪をはめて黒く光る巨大な四角形の箱の上に座っている。

『──彼の名は"パンドラ"と言います、ディラックワールドへ繋がる扉を守る門番の役目をしています。』

「……そいつがボスなの?」

『──えぇそうです、彼はこの世界のボスとして初心者達を向かえ送っていきました。貴女も胸を借りるように、総力を尽くして盛大に戦ってください。』


『そうだぞ、我の事は気にするではないぞ……ここのボスとしての役割は我の仕事だ、それは誇るべき物であり哀れられる物ではない』


 仰々しく高らかに笑いながら自分の存在を誇るパンドラを見ていると彼がNPCとは思えなかった、だけどだからこそ新しい世界へ行く為に私は戦わなければいけない。

「──エレキクラッシュ!!」

 先制攻撃とばかりにステッキを振って呪文を詠唱する、青光りする魔方陣が浮き出し電撃がパンドラに向かって走った。

 だが彼は私が電撃の魔法を放つのを知っていたかのように笑うと、黒く光る四角い箱の右側面を軽く撫でたのである。

『──甘い甘いぞ、"雷"には"土"の力を打ちつければ相殺する! 禁忌(パンドラ)の匣『貪欲(どんよく)ナル世界』よ、存在しその力で我を守りたまえ!!』

 その言葉と共に茶色く小さい箱がパンドラの右側に出現し光を放つ瞬間、彼の前には茶色い土の壁が地面から飛び出していたのだ。

 私が放った電撃は土の壁にぶつかると簡単に消え去ってしまっていた、焦げ痕の欠片も見えない土壁は再び地面に潜り消え去ってしまうとパンドラは笑みを浮かべている。

「……さっきのは」

『少女よ、簡単だ……魔法には属性が存在する。例えば"炎"があれば"水"が打ち消し、"風"ならば"雷"が消し去ってしまう。基本、魔法を使う者ならば覚えておいて損はないぞ?』

「成る程……魔法に属性があるなんて、まんまRPGね」

 そう呟くとパンドラはクックックッと楽しそうに笑う、茶色い箱は未だに彼の右側を八の字に回っているのだった。

 だが彼が右手を挙げると茶色い箱は消え去ってしまい再び箱の両側面を撫でていた、すると中くらいの紅い箱と蒼い箱が現れ宙に浮きながらクルクルと回転する。


『さぁ、次は我の番だ……禁忌の匣『激昂(げっこう)ナル世界』『静寂(せいじゃく)セシ世界』よその力をもって、少女を狙え殺せ!』


「──来るっ!!」

 猪のように真っ直ぐ飛んでくる紅い箱を右に跳んで避けると、後ろの蒼い箱が私の前で停止し正面にポッカリと穴が開いたのだ。

 何が来るか分からないが攻撃を行おうとステッキを振る直前、その穴から急に鋭い水圧レーザーが放たれたのである。

「危なっ!? ──何なのよ、アレ!!」

 寸での所で更に右に跳んで避けたので大丈夫だったが、後ろの大きな樹に丸い穴が開いてしまっていた。

 すると左側で浮遊していた紅い箱が回転し始めると同時に六面全てから火炎放射を吐き出したのだ、そのままぶつかる勢いで私に向かってくる紅い箱から逃げる為に上を見る。

「──飛空のステッキ!!」

 大きくなったステッキの座り空に飛び上がると同時くらいに居た場所を紅い箱が燃やし尽くす、それと交代と言わんばかりに蒼い箱が私を追ってきて穴から水圧レーザーを放つ。

『──ふははははっ!! 少女よ、少し詰んでしまった状態かな?』

 私の姿を見ながらパンドラは側面を優しく撫でながら意地悪く笑い掛けてくる、だが別に逃げ回っていた訳ではなく何か隙か弱点が無いかを探していたのだ。

「……くそっ、分かんない!」

 だが幾ら逃げ回り彼を探ってみても弱点らしい物は見付からない、もうすぐMPも切れるのでその場合は死有るのみだろう。

『──貴女に死んで貰っては困りますので、お手伝いをさせて頂きます。先ずは使用していないスキルを思い出しましょう。』

 すると隣にイヴが現れ助言をしてくれたのである。

「……えと、フレイムボールと新しい──『ブラインドレーザー』だっけ?」

『──では、もし窮地(きゅうち)を乗り切るとするならばどちらが良いと思いますか?』

 そう言われて私は考える……フレイムボールを放ったとしても相対する属性があるから意味がない、ならばまだ使用した事のないスキルならどうだろうか?

『──分かりましたか?』

「えぇ、新しい攻撃魔法を使用するわ──『ブラインドレーザー』!!」

 炎の渦を避け水圧レーザーを回避しステッキを縦に切り裂くように振り下ろし、詠唱を行うと黒く(もや)が渦巻く魔方陣が出現し暗黒レーザーが放たれた。

『──ちっ、"闇"には"光"が相殺する! 禁忌の匣『静寂セシ世界』よ消え、禁忌の匣『幸福ナル世界』よその力をもって我を守れ!!』

 黒い箱の左側から手を離し前面を触りながら叫ぶ、と蒼い箱が消え同時に純白の巨大な箱が現れて天から光の粉を散らし降らしていく。

 暗黒レーザーは光の粉に当たるとドンドン消失していって最後には消え去ってしまった、だがそのお陰で彼のパンドラの弱点が分かったのだ。

「──アイツは箱を二つしか出せない、なら今が狙いよね!」

『──そうです、よく見破りました。』

 丸く円を描きステッキをパンドラに向けて炎の呪文を唱える、赤く燃える魔方陣から炎の玉が勢いよく翔んでいき彼に当たった。

『ぐ、ぐぉぉぉぉぉぉぉっ!?』

 苦しみに溢れた悲鳴を叫びながらパンドラは燃える体で箱の左面を触る、軽く撫でると同時に紅い箱が消え宙に蒼い箱が生まれ彼に向けて水を流し落とす。

「何てしぶといのよ……」

『ハ、ハハハ……なかなかやるな、だが私もボスの一人だからこそ簡単に倒れる訳にはいかぬ!』

「……何か、決定打が足りないの?」

 ゆっくりと広場に下がりながら頭をフル回転させ使っていないスキルを考える、だがレベルアップに伴い与えられた戦闘スキルは既に使い果たしてしまっている。

 もう打つ手は無しと言うしかないのだろうか……そう私が諦めそうになった時、イヴがある言葉を囁いてきたのだ。

『──貴女は使っていない唯一の技を忘れています。』

「唯一の技……そうかっ!」

『──はい、今こそ貴女の『武装展開(ぶそうてんかい)』を見せ付ける時です。』

 私にはまだ隠し技である『武装展開』が残っていたのを忘れていた、今こそピンチの時こそ使い所では無いのだろうか!

『少女よ……何をするつもりだ?』

「簡単よ、最大最強の必殺技──武装展開!!」

 天に向けて高らかに叫ぶと目の前に武装展開と書かれたホログラムが現れた、それを右手で左から右へと流すようにかざしていくと認証の文字が出る。

「魔法少女マジカルりりカルの最大必殺技──『スターレイン(星の雨)』ッ!」

 空が一瞬で暗くなり星々が浮かんでいるロマンチックな夜空に変わる、と流れ星が流れ始めドンドンドンドン大量に流れ星が落ち続けてきた。

『何だ、嫌な予感しかしないっ!?』

「──流れ星は私の味方、敵である貴方を確実に滅ぼす力を思いしれぇぇぇぇっ!!」

 私の心からの叫びに引き寄せられるかのように流れ星がこちらに向かって落ちていく、しかし狙いは私ではなく敵であるパンドラに向かって落下する。

『──我を守れ禁忌の匣『錯乱セシ世界』、『狡猾(こうかつ)ナル世界』その力よ示せぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』

 蒼い箱と純白の箱を戻したパンドラは自身を守るために翡翠(ひすい)の箱と灰色の箱を出すが、その前に流れ星と言うか隕石が彼の目の前に迫って次々と直撃し土埃を巻き上げたのだった。

「……どう、かな?」

 私も所々が煤焦(すすこ)げてたり濡れたままボロボロになりながらも広場に足をつけ注意する、土埃が風によって欠き消されていくとそこには立っている男性の影が見えた。

「……そんな」

『──大丈夫です、彼のHPは既に尽きてしまっています。』

 イヴはそう言ってくれるけど男性の影はヨロヨロとこちらに近付いてくる、と薄くなった土埃から上半身が見えると同時にパンドラは前に倒れてしまったのだ。

『──言った通りでしょう。』

「パンドラ! パンドラ、大丈夫?」

 イヴの言葉よりも満身創痍のパンドラの方が心配になり走り寄っていた、彼の体の至る所は火傷の痕や血が溢れて酷い有り様であった。

「……パンドラ、ごめんなさい。私が、私が、こんな目に」

 何故か瞳から涙が溢れ出してくる、現実では無い筈なのに彼の傷が本物の物だと錯覚してしまう。

『……ふ、ふはは、大丈夫だよ我はな?』

 すると左手をヨロヨロと挙げてパンドラが顔を横に向けたのだ、だが足元が光の塵となって消えていっていたのだ。

「でも、でも……足が」

『これは我が敗北した証だ、そんなに悲しむ物ではないぞ? 我は運営によって復活する、きっと少女はこれから幾つもの"(ロスト)"を見る事になるだろう……だが気にするな、悲しんで悔やむな、気丈に強く生きるのだ』

「……パンドラ?」

 パンドラの下半身は既に失われていてキラキラと光が溢れていく、それでも彼は気丈に強く勇ましく笑い続けた。


『あぁ、あと……我が倒れる時に少女専用の装備がドロップする、有り難く受け取れ。さらばだ、魔法少女よ……』


「うん、うん……ありがとうパンドラ」

 パンドラはそのまま光の塵となって風と共に飛んでいってしまった、彼が居た場所に虹色に光輝くひし形のモニュメントが現れる。

「これは……」

『──これはドロップモニュメントですね、触れると貴女専用の装備が入手出来ます。』

 触れてみると虹色の光が溢れ出してから割れてしまう、同時に宝箱のマークが現れたのでタップするとモニターが現れた。

「……打撃の極衣(ごくい)?」

『──それは『コスチュームチェンジ』に使用する衣装ですね、その衣装は打撃に特化した物であり近接攻撃を主体とした戦闘スタイルを取れます。』

「……そっか、ありがとうパンドラ」

『──さあ、魔法少女マジカルりりカルよ行きましょう。新しい世界『ディラックワールド』へと。』



「──うんっ!」


 突如現れた黒い扉が開き光が溢れ出す、私はイヴと共にその中へと入り込んでいったのであった。






  [憂鬱な魔法少女と黒狼 4]へ

──ボスであり門番として戦ったパンドラは、魔法少女の資格を見いだして勇ましく笑いながら散っていった。

黒く大きな扉が開き、溢れ出した光の中へ足を踏み入れる。


扉を抜けた先は自分の住んでいる世界と遜色かわり無い世界であったのだ……[憂鬱な魔法少女と黒狼 4]へ

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