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第8話 強面系ギルドマスター

 俺たちは今、ギルドへの道を全力で走っている。


「おい!危ないだろうが!」

「すみません!急いでるんです!」


 あれは明らかに異常事態だ。すぐにでもギルドに伝えなければ。

 にしても、ギルドってこんなに遠かったのか…急いでるといつもより遠く感じる。


「よし!そこを曲がればすぐだ!」


 角を曲がった俺たちは正面のギルドに一気に駆け寄り、ドアを開け放つ。あ、ちょっとバキッて言った。やべぇ。


「っ!?何事ですか!?」

「緊急事態だ!ゴブリンの大軍が出現!確認出来ただけでも200体は軽く越えてる。しかも、多分…全てが進化種だ。確認は出来ていないが異常種が居る可能性が高い!」


 必要な事だけを端的に!そしてハキハキと!

 ちなみにアンデットの体は呼吸が必要無いので息が乱れることはない。姉ちゃんはかなり疲労しているようだが、シウルはこの位では疲れないみたいだ。


「それは本当ですか!?直ぐにギルドマスターに会ってください!」


 本当ですか!?と言いながら俺に答えさせてくれないスーナさん。いや、急いで正解なんだけどさ。でも聞いたんだから答えさせてくれても…あ、いらないですか。そうですか。

 

 奥に駆け込んで行ったスーナさんは、直ぐに戻ってきた。

 どうやら先程より幾分落ち着いた様だ。

 代わりにギルドに居た冒険者達がざわざわし始めた。どうやら、ゴブリン討伐に向けて話し合いをしているようだ。流石プロ。行動が早い!


「ライさん、レイさん、シウルさん。ギルドマスターがお待ちです。奥へどうぞ」


 スーナさんに案内され、俺たちはギルドの奥へ進む。

 少し進むとしっかりとした両開きの扉が見えてきた。派手では無いがどこか高級感漂う扉だ。

 スーナさんは扉の前に立つと1拍置いてからノックする。


「失礼します、ギルドマスター。ライさん達をお連れしました」

「あぁ、入ってくれ」


 俺たちも「失礼します」と言って入る。

 ギルドマスターは歴戦の風格漂う顔に傷のある男性だ。髪は短く切り揃えている。

 後ろには幅広のバスターソードが置いてある。


「よっ、俺がギルマスのアイガスだ。元ランク6冒険者だな。よろしく」

「ランク3冒険者のライです!よろしくお願いします!」

「同じくレイです。よろしくお願いします」

「シウルだ。よろしくな」


 お、おう…なんか緊張して勢いよくなってしまった…普段こんなにならないのにな。


「それで?ホブゴブリンの大群だって?」

「あ、はい。俺たちが確認しただけでも200体は軽く越えています。俺の《探索(サーチ)》はそこまで範囲が広く無いので恐らくは倍程度は居る可能性があります」

「ちっ、そんなにいやがるのか…王都の冒険者だけじゃ戦力が足りねぇな…今はランク6がギネルくらいしかいねぇし」


 うーん、王都の冒険者でもキツいのか。

 それも仕方ないか。ホブゴブリンはランク2のゴブリンと違い、ランク3だ。新米冒険者なら一対一でも負ける可能性が高い。

 ランク7冒険者ともなると1000体規模の大群でも蹴散らせるだろうがランク6だと一人100体が限界なのだそうだ。一人100体と言っても安全マージンを取ってそれなので無理をすれば200や300は行けるかも知れないが。


「もしかしたら異常種が出やがったのかも知れねぇな。ゴブリンの異常種と言うと…キングか?しかもそれだけの規模のホブゴブリンを従えてるとなるとホブゴブリンキングか…と、なると他の上位種も居るかもしれねぇな」

「はい、ホブゴブリンを鑑定してみたのですが職業が警戒兵となっていました。多分、ホブゴブリン級で雑兵扱いなのかと思います」


 ちなみに俺のセリフは殆どシウルからの受け売りだ。そりゃこの世界に来たばっかりの小僧がペラペラと推察出来る訳ないんだよな。

 警戒兵は人間でも、いなくなっても痛くない人材を出すことが多い。死ぬ前に声を上げろって訳だ。

 逆に斥候だと出来るだけ相手に悟られない技術が必要とされている。情報を持ち帰ることが重要だからだ。


「小鬼共は小さな集団を作って行動していたぞ。ホブゴブリンと言えどもそこまで知恵があるとは思えない。私も更に上の上位種、それも異常種が居ると思うぞ」


 小さな集団というのは分隊みたいな物だ。取り合えず班を作って行動していたのは《探索(サーチ)》で分かってる。

 シウルがそう言うとアイガスさんは唸りながら黙りこんでしまった。

 

 それから5分程考え込んで結論を出したらしい。


「そうだな。ランク3以上の冒険者で討伐隊を結成しよう。近隣の街からも招集を…」


 そこまで言ったところでドアが勢いよく開く。


「ギルマスっ!大変です!」

「おい、ちょっと落ち着け」

「はぁふぅ…ギルマス、大変です。近隣の村が1つ、ホブゴブリンの集団の襲撃で壊滅しました」

「なんだとっ!?数は!?被害は!?」

「100程度だったらしいです。人的な被害は怪我をした者が居た程度。村は占領されたと報告がありました」


 アイガスさんは小さく息を吐く。どうやら、人的被害が軽度だと知って多少安心した様だ。


「それにしてももう被害が出たか…これは悠長にできねぇな。だが戦力が足りねぇ」

「どの程度戦力が必要なんだ?100人位なら出せるぞ?」


 え?何言ってるの?シウルさん。そんな戦力どこに居るんですかね?


「ほんとか!?だがランク3冒険者がどうやって…」

「それはまぁ、私は狼王だからな。配下くらい居るぞ」


 あ、そうだった。この娘、狼王様でした。そうだよね。配下くらい居るよね。完全に忘れてたよ。

 それもこれも最近威厳が薄れてきてるせいだと思う。


「ろ、狼王!?ちょ、ちょっと失礼するぞ…」


 どうやら《鑑定》を発動させたみたいだ。ギネルさんは勝手に発動してたのにな。鑑定をする前に一言声を掛けることを心掛けてるのかそれとも色々あって忘れてたのか。


「嘘じゃ…ないみたいだな…にしても狼王がなんで…いや、今は良いだろう。戦力を出してくれるってのはウインドウルフってことで良いのか?」

「それで間違ってないぞ。もちろん報酬は要求するがな」

「わかった。それで良い」


 良し、話は纏まったみたいだ。まだ人死みたいなのは起きてないっぽいから早いとこ終わらせてしまいたい。それにゴブリンは人を拐うからな。多分、今回も何人か捕まっている人が居ると思う。


 それはそれとして、1つ疑問がある。


「なんであんなに大量発生するまで誰も気付かなかったんです?」


 そう、これだ。あの森は出現する魔物のレベルが低いので駆け出し冒険者も良く出入りするし、奥に入ればベテランでも稼ぎ場になるので、大群が居れば誰かが見つけそうな物だと思うのだが。


「そうだな。それがわからん。ホブゴブリンと言えども馬鹿だからな。奴等は直ぐに人を襲うんだ。それだけで存在がバレそうな物なのだが…今回はホブゴブリンによる被害報告も無ければ集団がいるという話も無かった」

「そうですね。その様な報告は一切上がっていません」


 アイガスさんはめちゃくちゃ難しい顔をしている。元々強面の顔が更に凶悪になってます。怖いっすよ!

 なんか嫌な予感がするんだよな…これだけの大群を隠せる洞窟でもあるのだろうか?


 するとずっと黙っていた姉ちゃんが口を開く。


「それを考えるのは後で良いんじゃないですか?このままでは被害が増えますよ」

「あ、あぁそうだな。悪かった。おい、アル。ランク3以上の冒険者を強制招集してくれ。緊急依頼だ。それとジンを呼んでくれ。急げ!」

「ハッ!了解しました!」


 アルと呼ばれた職員が勢いよく部屋から出ていく。ちなみにスーナさんはお茶だけ置いて既に退出済みである。


「よし、今回はご苦労だった。ホブゴブリン討伐の時はよろしくな。ステータスの事は黙っといてやるからよ」

「ありがとうございます」


 どうやらシウルに言ったのではなく、俺たち姉弟に言ったみたいだ。勇者だということがバレた。そりゃ隠蔽も偽装もしてないからな。

 そこら辺もこれからなんとかしないと。相手の《鑑定》のレベルが高ければ隠したいことも簡単にバレてしまう。


 最後にもう一度、挨拶をして俺たちは部屋から出る。


「なぁシウル。お前の仲間はどうやって呼ぶんだ?近くに居るのか?」

「ん?声を掛ければすぐ来ると思うぞ。私たちは思念が繋がっているからな。ま、ライの《感覚共有》みたいな物だ」

「そうなのか…中々便利なんだな」


 てか俺、《感覚共有》全然使ってないな…あのスキル、どうやって使うか良く分かんないんだよな。

 最後に使ったのは俺がアンデットになる前に出会った初の対人戦の時に一瞬だけ。うーん、もっと上手く使えないものか…今のところ念話にしか使えてないしな。うん。


「《模倣吸収》と一緒に使えば良いんじゃない?《感覚共有》で相手が感じてるものが分かれば解析しやすくなるんじゃない?」

「その手があったか!処理速度を上げる訳だ!」


 今度試してみることにして…

 ちなみに《模倣吸収》だけどこっちも使えてないんだよな。有用なスキルは俺に適正が無かったり、まず有用なスキルに出会えなかったり。

 高評価だったこのスキルの評価は駄々下がり中である。悲しい。


「多分今回のゴブリン戦でも使うことはないんじゃないだろうか…だってゴブリンだもんな…」

「そう言えばホブゴブリンキングって言ってたけど、もしこれが居たら良い感じのスキル持ってるんじゃない?」

「俺たちが親玉格と会えるか?多分、もっと高ランクの奴等が倒すんじゃない?」

「おい、ライ。私が居るだろう?親玉の所まで連れていってやろう!」

「あ、別にいいです」

「え?」

「え?」


 いや、そんな「なんで?」みたいな顔されても…俺はわざわざめんどそうな事はやりません。だって多分、雑魚減らしてたら高ランクの方がパパッと倒してくれるハズだから!

 という旨の事をシウルに話す。


「なるほど、高ランク冒険者が返り討ちにされた所を颯爽と私たちが現れて助け出す訳だな!」


 なんで?なんでこういう時だけポンコツなの?この娘は!そんなキラキラした目でこっちを見られても…

 ま、いいや。シウルが勝手に勘違いしたって事で。姉ちゃんが苦笑いしてるけど俺、知らないから。何にも知らないから。


「取り合えず出発までゆっくりしてようぜ」


 と、言って誤魔化す俺であった。


「そうね。装備も整えておいた方が良いかも」

「ポーションも無くなりかけてたよな?カイン商店に買いに行っとくか」


 こうして俺たちはホブゴブリン討伐に向けて動き出すのであった。

 

ギルマスは強面って話。

正直、この話は自分でもつまんないと思ってる。

でも必要。

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