第1話 勇者?いえ、私は冒険者です
「お断りします」
「なんだと!?金ならいくらでも用意しよう!それとも名誉か!?一体なにが欲しい!」
「いえ、特に欲しいものはなにも。ただ私たちはここの事をよく知りません。警戒するのは当然では?」
「うるさいっ!おい、こやつらを摘まみだぜ!」
速っ!?おいおい、短期すぎだろ…こんなんで良く王様やってけんな。まぁ出ていくつもりだったからいいんだけどな。
「おらっ!さっさと歩け!」
「…感じ悪いなぁ」
「あぁ!?」
「あぁ、ハイハイ、なんでもありませんよっと」
「なんだそのふざけた態度は!」
「おい、そこら辺にしとけって。俺たちの仕事は追い出したらおしまいなんだから。ほら、お前たちもここまでだ。後はどこにでも行けばいい」
と、そんな感じで王城脱出は成功。脱出と言っても追い出されただけなんだが。
なんにせよ、このままじゃダメだな。昨日調べてみたところ、冒険者という職業が存在するらしい。うん、やっぱ異世界モノは冒険者だよなぁ!
昨日姉ちゃんと相談して冒険者になることにした。幸い俺たちは同レベル帯の平均よりは強いらしいので。まずは冒険者ギルドの場所を探さないとな。
「どうする?姉ちゃん」
「とりあえず聞いてみよっか?」
「りょーかい」
「あ、すみません。私たち冒険者ギルド探してるんですけど」
「ん?王都は初めてかい?」
「そうなんですよ、俺たちかなり遠くから来てここら辺のこと良くわかんなくて」
「そうかそうか。ギルドまでだったら案内するぜ。ほんとは色々教えてあげたかったんだが…用事があってな、スマンな」
「いえ、ギルドに着いたら自分たちでなんとかしてみます」
「そうか、んじゃま、付いてきてくれ」
王都は中世ヨーロッパ風の街並みと言えばいいのだろうか?まぁあれだ。よく異世界モノ作品でモデルにされる感じ。ここも例に漏れずそんな感じだ。うん、そそられる。
住人は人間が殆ど。たまに犬耳の人や猫耳の人が居たりする。道には馬車や魔導車というものが走っていたりする。魔導車というのは魔力という力で動く車で、かなり高価だそうだ。見かけたらまず間違いなく金持ちか貴族が乗っている。そういう連中には近づかない方がいいことも聞いた。
「いや、ほんとに色々ありがとうございます」
「いいんだよ。お前たちみたいな若いのが王都に来ることは多いからな。色々教えてやったりしてるんだ。お、着いたぞ」
「おぉ!でけぇ!ギルド凄いな」
ギルドは王城のようなきらびやかではないが、かなり頑強そうだ。もしかしたら
「そんじゃ俺はここら辺で失礼するわ。王都を楽しんでな!」
「あぁ、ありがとう。またどっかでな」
「ありがとうございました」
「おう!」
中に入ってみる。中は受け付けと酒場があったが、想像していたような喧騒は無かった。
「すみません、俺たち登録したいんですけどいいですか?」
冒険者として活動するにはどうやらギルドに登録が必要らしい。冒険者カードという物があって、冒険者としての情報が記入され、身分証にもなる、ということだった。
「はい。こちらにお名前をご記入してくださればすぐ作成させていただきます」
「ライ、先に作りなよ」
「あいよ」
ほんとに記入は名前だけでいいんだな。やろうと思えばほんとに誰でも登録できる。うーん。それにしても…ヤバイ。受付嬢が美人て言うのはほんとだったんだ!ふぅ、平常心平常心。
「はい、確認しました。それではギルドについて説明させて頂きます。
ギルドにはランクというものを設けさせて頂いております。下からランク1、ランク2、ランク3と上がっていきまして、最高ランクは7となっております。現在、ランク6は世界に57人。ランク7は10人となっております。
ランクアップについてはギルドの方で判断させて頂きます。注意事項としましては5回連続でクエストを失敗場合はランクダウン、半年以上受けていただいていない場合、登録の剥奪となります。
登録が剥奪された場合、再登録の際、ランク1からのスタートとなりますのでご注意ください。ここまでが基本事項になります。なにか質問はございますか?」
「だ、大丈夫です」
おぉ…受付嬢すげぇ。ここまで完璧に言えるもんなんだな。姉ちゃんも苦笑いが隠せてないよ。あ、でも俺は聞いておきたいことが。
「あ、それじゃ、俺たちでも出来そうなクエストありまさんかね?」
「それではこちらなんてどうでしょう?」
内容 魔力草の採取
以来主 カイン商店
補足 最低でも3本は採ってきてくれ。期間は明明後日まで。報酬は持ってきた本数で変更するが一本辺り100ゴールドくらいだと思ってくれ。
「いいんじゃないかな?どう?姉ちゃん」
「これ、やってみましょうか。ついでに色々試せるといいけど」
「情報が欲しい場合はギルド2階にある情報スペースをご利用ください。それでは良い冒険を!」
情報か。確かにどこに生えているか知る必要があるし、見た目も知っておかなきゃ。それ以外にもこの世界のこと、もう少し知っておかなきゃな。
「それじゃぁ2階行ってみよっか」
「そうね。それにしても…」
「ん?」
「なんというか、もうちょっと慌てると思ったんだけど、意外と冷静な自分に驚いちゃって」
「俺もだよ。死んだって言っても今こうして生きてるから実感がな。異世界に来たっていうのも驚きより興奮の方が大きくてさ。なにより姉弟でっていうのが一番死んだ実感を無くしてるよ」
「そうだね。姉弟一緒ってのがねぇ」
「あはは、ま、折角貰った第二の人生だ。しかも異世界。楽しんで行こうじゃないの。っと2階着いたな」
広いな。学校の図書室が2つ分くらいだ。おぉ、あんな怖そうな人が本を熱心に読んでる光景ってのも面白いな。冒険者か?
「ステータスは大体わかるから良いとして、このスキルってやつのことだよな。俺のスキルはそれなりに強力そうだが…はたしてどのレベルなのか」
その後、二人は別れてスキルや、魔法、この世界についてを調べた。
まずスキルだが、スキルには補正効果しか持たないものと、それ単体で効果を持つものが存在する。
通常のスキルには補正効果の物が多い。例えば属性適性だが、これがあるとその属性の魔法が使いやすくなる、というものだ。
補正と言ったように、属性適性スキルが無くても、魔法を使うことはできる。だがその場合、適性スキルを使った魔法より極端に威力や効果が下がってしまうか、全く使えない場合もある、ということだった。
俺は闇以外全部使えるけど…なかなかチートだな。
通常スキルは、生まれた時に持っていたり、その後の行動により取得出来ることがある。
次に種族スキルだ。これは魔物や、一部の種族が持っている。種族専用のスキル…というわけではなく、その種族を構成するに当たり、必要最不可欠のスキルの事を言う。例えばスライムの姿をしていても、種族スキル《粘性体》を持っていなければ、それはスライムではないのだ。
そして次に職業スキル。これも補正の物が多い。
鍛冶師になるには職業スキル《鍛冶》が必要最低限だが、鍛冶スキルを持っていないものも鍛冶が出来ないと言う訳ではない。他にも通常スキルにも《鍛冶》は存在し、効果は全く一緒だ。
次に特殊スキル。これは、補正系のスキルもあるのだが、これ単体で特殊な効果を生む物が多い。
過去の例として、伝説の守護竜が持っていたとされる《星降らし》というスキル。これは魔法のように単体で発動するものだったらしい。
俺には《不死者の種》があるが、これはどういう物なのか?謎である。
ちなみに勇者スキルは職業スキルに分類されるらしい、ということだった。
ここまでがスキルについてだ。
次に、魔法について。
この世界には、《無》《火》《水》《地》《風》《雷》《光》《闇》《聖》の全9属性が存在する。
ちなみに俺は闇属性以外問題なく使える…っぽい。属性には下級、中級、上級に別れており、威力や効果の一般的な目安になっている。ちなみに上級とひと括りになっているが、ピンからキリまであり、上は国を滅ぼすような禁術の類いまで含まれるそうだ。
まぁその話は置いといて、また属性の話に戻る。各属性は、それぞれ長所は違うものの、基本的には同じものだ。どれも魔力に自然の性質を加えた物、ということらしい。例えば火属性の攻撃をしたければ、魔力に熱の性質と形を与える、ということだった。
次に魔法の発動だ。この世界では「イメージ」→「詠唱」→「発動」という流れと「イメージ」→「発動」という流れがある。
発動するには魔法名を発音するだけらしい。慣れるとこれも要らなくなる。
主流は一つ目の方法で、詠唱には効果を固定する力があるらしく、誰でも簡単に使えるのが理由になっている。
二つ目の方法は、イメージがしっかりしていなければ暴発する恐れがある。だが発動が速く、イメージがしっかりしていれば効果も詠唱魔法より上がるということなので、玄人向けの魔法という感じだった。
俺は無詠唱にするつもりだ。だって詠唱の呪文をチラッと見たら…ダメだ。俺には出来ない…黒歴史がッ!黒歴史がッ!
次に称号だが…うーん、これは良く分からなかった。スキルの寄せ集めのような物って考えるのがいいかもしれない。
ちなみに俺の《勇者》は身体能力上昇、攻撃力上昇、自然治癒、求心の効果が付いてる。求心ねぇ。やっぱ勇者だから人の心ってのは上手く扱えないといけないんだろうな。
他に分かったことは追々説明するとして…さて、魔力草だが王都のすぐ横にある《屍の森》に生えているらしい。意外と近くで良かった。
「結構この世界の事が分かったし次は色々検証しなきゃな」
「そうね。私もこの《治癒の書》っての色々試したいし」
「それって字面的に俺が怪我しなきゃ試せないんじゃ?」
「それくらいいいじゃない」
「よくねぇ!?」
「ま、方針は《屍の森》で魔力草を探しつつ、色々検証しましょってことでいいよね」
「ん、賛成」
っしゃぁ!異世界らしくなってきたぁ!
ステータスとか改良案があれば意見下さい。




