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ベーザとは

 三日で傷は完治した。それこそインスタントにだ。流石に三日はないだろ?



 これは自分の丈夫さ加減に感謝するのか、スカリ=サーハの看病に感謝するべきなのかわからない。毒草みたいなのを肩の切り口に塗って放置されただけだけどな。まあ、普通にありえない話だ。



「傷口を見ましたが、惚れ惚れとする技ですね」



「いや、そこは俺の治癒の早さを褒めるべきなんじゃないのか?」



「あなたは褒めても伸びるタイプではなさそうですので」



 うわ、ディーテ姉から伝わっているわ。俺の性質。確かに俺は褒められても調子に乗るだけなので毒舌されるくらいのほうがやる気がでる。皮肉だ。



「あなたが休んでいる間に色々しらべました。仲間もいますしね」



「何? あんたより美人であんたより優しい人?」



 ゴス!



 拳が顔面にめり込む。全然防御できなかった。つうか、手加減してくれたと思うが急所だぞ。致命的だぞ。



まあ、人体なんて急所だらけだけど……この、ゴタロウ=ヴィヴァルディ様のナイスな美顔を破壊しようとしないでほしい。ディーテ姉並に強い女だ。ふざけると怖いから茶目っ気はよそう。



「真面目にお聞きなさい」



「は、はい」



 相手が物凄い睨みをきかせたので静かにする。禽獣を操る調教師のようだ。え? 俺は畜生の類? 人としての対応を要求したい。



「ここ、私たちが滞在している惑星ベイザですが。今は無政府の状態ですね」



「ああ、だから、盗賊とかが頻繁に横行しているみたいだな。面白そうだから首を突っ込みにやって来たんだが……」



「物見遊山ですか……呆れた子ですね……」



「おいおい、子供扱いはよしてくれよ」



「私にしてみたら小僧ですよ。話は逸れました。続けますよ」



「ああ」



「簡単にいえばこの星は戦国時代の群雄割拠です。力をもつ有力者が……ベーザ一味とういう盗賊団と変わらない始末。そもそも、大盗賊でしたらいいのに盗賊以下の有様」



「盗賊以下?」



「志や道理を持ち合わしていません。組織の上に立つ上で最低条件の資質ですね」



 盗賊にも資質っていうのがあるものかね。確かに義賊とかそういう言葉があるしな。



「ベーザとはこの星の言語で主や王といった意味です。現時代の名前はカーム=ツクダニ」



「なんだか一昔の芸人のような名前だな。現時代って?」



「転生ってわかりますか?」



「年頃のちびっ子が大好きなやつだな。死んだらまた前世の意志、性格で別の生物に生まれ変わるアレだろ?」



「へ、偏見がある言葉ですが……概ねそうですね」



 スカリが呆れている様子だが……。俺の死の観念は無だ。蘇ってやり直しなんぞあっては今生きている価値がない。そんな、どうでもいい主観は他人に言うつもりはないけどな。俺の考え。



「カーム=ツクダニは器のない人物です。ですが、自己というものを尊び、人の下にいるのをよしとせぬ人物のようです」



「誰だって、そんなもんだろ? で?」



「地球人がこの惑星ベイザに移住し千年でしょうか。その時からカームはいました。そして彼はこの星の頭領を目指すべく活動したようですが徒労に終わったそうですね」



「大抵の奴はそうじゃね?」



「やけに、ベーザの肩を持ちますね」



「いーや、それに加えて彼女に振られて、犬に噛まれて自暴自棄に陥り、復讐してやるとかの類だろ? 歴史は繰り返す」



「ま、まー、そんなところですかね」



 それでいいのかよ。くだらねえな。全く……。



「そして、ベーザは復讐の念から転生の秘術を生み出しました。そして、虎視眈々といわゆるアルバイト生活で軍資金を千年間貯めていたようです」



「せ、切ないな……。努力は認めるが他に方法があるんじゃないのか!」



「彼のおつむではその程度です」



「知っているのか?」



「酔って身の上を話すそうですよ。勉強になりますね。大きな目的を前にして軽々しく語ってはならない。それだけでも器の小さいのがわかります」



「そ、そうだな……。こんな奴の発端で血を流すとは誰も笑えないぜ」



「争いなど、そういう心の小ささから起きるものです」

 


 なんか、思うけど。自分たちの悟りを語りあっているような気もするけどな。相手の評価なんぞは犬の餌にして食わせておけと言いたい。さておき。



「でさ、俺たちは武道を胸にして生きるものじゃないか。相手の素性なんぞはどうでもいいだろ?」



「確かに、その通りですね。あなたの何者にも属さないところはよいですよ」



 やだ、褒められちゃった。だけど、褒めてでるもんはないぞ。でるといったら…いや、下ネタはよそう。



「問題はベーザより、彼を取り巻く連中です」



「ああ、俺を殺ったゴリラキックの使い手も混じっているからな…」



「そう、彼はゴリラキック、バナナ八聖拳(はちせいけん)の一人ソー=アンダー。バナナ八聖拳の目的は八玉(やたま)の宝玉を利用すること」



「それは、道中の過程で知っている」

 


「それが、私たちが出会うきっかけですものね。ちなみに残りの七人はディーテ様達が始末しました」

 


 マジかよ! ディーテ姉は怖い。敵にまわしてはいけない。

 

 

「だからといってゴリラキックの使い手はいますよ。私もそうですし」

 


 あんな恥ずかしい流派名によく属しているな。猫パンチより酷いぞ。って言えない。

 


「最後の一人ソー=アンダーはとある理由で惑星ベイザの圏内に留まっています」



「リベンジできるかな? 俺」



「貴方次第でしょう」



 スカリがそう言うと小型連絡機器…まあ、携帯でいいんだが取り出し地図をだす。携帯から光がでて白い壁に地図を映し出す。プロジェクターの機能のようだ。まあ、立体型の地図を携帯から浮かび上がらせることもできるが……。俺にとっては使い勝手はどちらでもいい。



「では、ソーの居場所ですが……」



 スカリはタッチペンを当てながら地形と道程を踏まえて説明した。待っていろよ。ソーとやら、屈辱を晴らしてやる!

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