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思わせぶりと断罪という名の殺人

 俺はサンゾウの覆面を剥いだ。しかし、その先はもうひとつの覆面をつけている。こいつはガードがかたいな!



「きゃー! きゃー!」



 恥ずかしそうに逃げ回るサンゾウ……。



「いや、兄貴……素顔見えないじゃん」



「やーね。エッチ」



 人差し指を出しながらポーズをとる覆面野郎……。



「気持ち悪いわ!」



 こうまでして面を隠したがるのはなぜなのか? 恥ずかしいからと昔は通していたからだが。俺として怪我とかで醜い顔になってしまったのかと思っていた。この場で確認したかったが謎は深まる。



「どうして、そこまで素顔を隠す? 顔が割れるとまずいことでもあるのか?」



「ひ・み・つ」



「そんなもったいぶったことなんぞいらん。どうせたいしたことはないから面を拝ませろよ!」



「ひっど~い言い方。あなた、女にモテないわよ」



「アンタにそれを言われてもな」



 などど、俺とサンゾウは弛緩している間に一人の中年を連れた集団が近づいてきた。



「サンゾウ様、ベーザを捕らえて参りました」



 おそらく、サンゾウの部下の内で有力な使い手が話しかけてきた。



「ご苦労様と言いたいところだけど、処分はあなたたちに任せてあるわよ」



「取引がしたいということで」



 こいつが惑星ベイザを騒がせた、ベーザことカーム=ツクダニか…。冴えないおっさんだな。壊滅したとはいえ大艦隊を所有した首領とは思えない風格だ。ブサイクでちっさいおっさんという感じだ。



「ぶヒヒヒ、ぶひひひ、私はまだ終わってはいない」



 半分混乱している様子だ。まだ、自分の末路が信じられない様子だ。そりゃ、恐怖で笑いたくもなるな。



「て、てててててて転生の秘術だ! それを教えてやる。だ、だから開放しろ」



 サンゾウはヤレヤレと手を振りながらこう返す。



「私、人生を二度やるなんて興味ないの。ごめんなさいね」



 俺と同価値の神経をもってやがる。サンゾウの奴、まただが、今まで見下げていた俺は恥に感じる。



「ゴタロウ」



「あん?」



 サンゾウは俺に振ってくる。つまりは………?



「あなたが決めなさい」



「奴の断罪をか?」



 サンゾウは覆面で表情が皆目つかないが涼しそうな雰囲気で相槌もせず俺を見据える。



「た、頼む。助けてくれ」



 俺は命乞いをみっともないとは思わない。あくまでもそれしか手段を持ち合わせていない人間にだけだが……。



「そう言って、お前の部下達は何をしてきたと思う?」



「………」



「個人的にはテメエにはなんの恨みもないが……。それよりも楽しませてもらった感もある。しかし、悪党には悪党の報いがある。最後にあがいてみせろよ。俺を殺せばアンタは自由だぜ?」



「く、くそー!」



 なんの体術の訓練もしてきたことがないおっさんが足掻いて俺に拳を向けて突っ込んで来る。



 見苦しいところは嫌いじゃないが残念だな………。



「猫パンチ 奥義 爆龍(ばくりゅう)伝殺圧(でんさつあつ)!」



 俺はベーザに最大限の拳をぶつける。今まで戦った最弱の人間に奥義を炸裂させる。奴は龍が昇龍するかのように体のあらゆる肉と血が上昇し空中で爆裂四散する。



「上出来よ」



 まあ、これぐらいしなきゃ、羅刹と化したシシロウ兄貴とは渡り合えないか……。



 俺はどうしようもない殺人拳法家だもんな。



 悲壮感も虚しさも感じなかった。ただ、己の器がなり響く。これでいいのか? と。



 これでいい、今はこれで。

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