胡散臭い秘宝がエサ
んで、盗賊一行を排除したわけなので、騒動がおきた時にいた街に戻った。
「あんた、生きていたのか? 良かった」
殴れば一発で死んでしまいそうな小市民のおっさんが言った。普通は女の子が俺の安否を気遣ってくれないかな。お約束のシチュエーションはなし。まあ、いいけどな。
俺は外敵を蹴散らした恩人だぜ。って、威張ることはしない。盗賊を一掃したことなんて奴らから確認しているわけではないし、信じられないのだろうから。
「あん、戦えば負けて殺られるってわかる相手に喧嘩を売り買いするか? 俺は死の商人ゴタロウ=ヴィヴァルディだぜ? 戦利品は向こうの砂地にある。損傷が少ないから、修理するなりバラしてパーツをわけるなりして売っておけよ。ちゃんと遺族にわけてやるんだぞ」
俺は絶好調に調子のいいことを言う。我ながら能天気だと思う。
「あんた、ハッタリもいい加減にしておいてくれ……。あの連中くらいなら金品を差し出していれば去ってくれたんだ。もし、頭目のベーザに睨まれたらこの街は終わりだ…」
他にも仲間がいたのね。しかし、死人が出たこの街で怒りもせず穏便に済ませようなんて、弱い奴は一欠片の義心もないのかね。勇者が力で制するってただ野蛮だしな。俺の考え。
こういうあんたらの力のない人間が勇気をだして立ち向かうことに意味があるのではないのかね。
なんて、御託を言うほど俺はまともなわけではないので黙っておく。
「ハッタリかどうかは確認してみるがいいさ。盗賊…ベーザ一味の死体が派手に飛び散っているから、早く処理でもすることだな。弔慰の気持ちがあるなら墓でも作ってやれ」
「その話、本当?」
「俺に問いかけてくるお前は誰だ?」
見た目は12、3歳の少年だ。いや、コイツ男か? 将来、優男でもなるのだろうか物腰の柔らかさが目に付く。俺のほうが美形だがな。
「さっきも言ったが、信じられないのなら確認すればいい」
「おっちゃん、信じるよ!」
「お、おっちゃん? 舐めているのか? 青年だぞ! 俺は」
「ご、ごめんなさい、あまりにもゴッツいし、老け顔だから…」
「ハンサム、イケメンと称されてきた俺になんたる無礼を! ひん剥くぞ! お前は男だか女だかわからないしな」
「僕は男だよ、確認する?」
どういう、お誘いだ? 俺はショタコン変態青年ではない。
「い、いや、わかった以上は確認したくない。俺にそういう趣味はない」
「良かった~! てっきり変態かと思ったよ。僕の容姿で近づく人達ってそういう人多いから…」
「聞きとうないわ! で、お前は本題があるんじゃないのか?」
「うん。ベーザ一味にさ、僕のペットがさらわれてさ…」
「は? 人じゃないの?」
「うん、僕もビックリだけど。うちのシャーロットは美猫でさ」
うーん。俺は間を置き考えてから口に出す。
「猫くらい、また買ってもらえばいいだろう」
「そうはいかないよ、シャーロットは大事な僕の家族なんだよ。おじ……お兄さんお願いします。シャーロットを助けてください」
おいおい、ただの猫一匹で血を流すのかよ…。盗賊もイカれているがこいつらもイカれているんじゃ…。俺がおかしいのか?
「わしからもお願いですじゃ~」
なんか、お約束通りに被害者代表の弱そうな老人が出てくる。抗うことをしらない貧民丸出しって感じだ。
「じいさん、あんたも猫さらわれたのかい?」
「い、いや、違いますのじゃ。他にも誘拐された人間がおりますし。殺され人間も金品もやられました。どうか、わしらを助けて下され。そして、できることなら敵を打って下され~」
「嫌だよ。成り行きで今回は助けたが、お前たちを救う道理を俺には持ち合わせてはいない」
「ただでとは言いません」
「俺を懐柔しようと思ったって無駄だぜ。価値のあるものなんてないだろ? めぼしいのはベーザ一味とやらが略奪するだろうし、欲しければ俺だって奪う」
「それですがの、一つだけ秘宝がありましてな。宝玉ですじゃ。持っていると全宇宙を支配できるとういう」
「俺にそういう野心はないし、そんなお宝はすでに持ち出されるだろ?」
しかも、迷信すぎて胡散臭い。
「あ、いや~。これは選ばれたものしか取り出すことができなのですじゃ」
「じいさん。夢物語かあの世で語ってくれ…」
「本当なんだよ! 兄ちゃん」
「クソ坊主もか…」
「証明もできるけど、その前にアレ…」
ああ、わかっている。先ほど始末した盗賊の帰りが遅いのを気にしてか一機GVDのVTが戦闘機型に変形してこちらに近づいてくる。あれの玩具めちゃ気に入っているのにあんな下等な連中に本物を使われていることが腹ただしい。
「あれ始末していいの? つうか、ぶち殺していい?」
「グッ!」
小僧とじじいがそろって指をたてる。いい加減な奴らだ。さすがの俺も悪党だからとはいえぶち殺すとただの殺戮者だからな。多少は周りとの合意を確認したりする。
「シャー!」
怪猫音は発するとともに俺は空高く跳躍する。
「な、なんだ?」
敵のパイロットが驚くのが伝わってくる。無理もない。鳥でも無理そうな高さを人間が飛んでいるなどと信じられないだろう。
「き、貴様、何者だ!」
機体の中にいても機体越しで生身の人間と会話はできる。
「あんた? 最後に聞くけど盗賊業やめる気ある?」
「何を馬鹿なことを……死ね!」
交渉の余地は無しか……。VTは瞬時に人型に変形し常時装備している。粒子を纏った剣を生身の人間に切りつけてくる。正確にはただあてるつもりだろが…。
しかし…!
「両手で受け止めただと?」
俺は気を送った。人間と機械は気脈が繋がっている。そして念さえ通せる。
「え、えっと『猫パンチ』……」
流派の名前が恥ずかしすぎてためらうがとりあえず技名を言うのがバトルの宿命。
「猫パンチ、伝殺圧!」
そういうと、コクピットの中で人が砕け散った音がした。そのままVTは静かに落下していく。
普通はオートで浮遊しているだろうがそういうところも破壊している。落下地点のことを考えていなかったので街の連中にあたってはいないだろうか少し心配し反省もした。だが、どうやら建物以外は大丈夫そうだ。
後で街の連中がハッチをあけて盗賊の状態を確認したところグロイ死体が転がっていた。あまりにグロイので非難された。しかたないけど、ちょっとは俺に肩をもってくれないのかな? まあ、いいか。俺はどうしようもない殺人拳法家だしね。