TDR(ザ ダーク ライド) VS MIM(モンスター イン ミー)
元、巡洋艦UDOTHに放たれたビームは霧散した。決して不発に終わったわけではない…。
「GVD TDR(ザ ダーク ライド)だと…」
黒い馬の頭部が特徴の人型ガヴァダヴァダン、そのファーストというべき骨董品が船外から浮上している。どうやらTDRがMIM(モンスター イン ミー)から放たれた長距離ビームを防いでくれたようだ。
どうやって?
「これは非常事態ですね」
「あっ、スカリも来たか」
スカリを無視して走り出したが、一緒に現場に向かっていたんだな。
「それは、駆け付かない方がおかしいでしょう」
「いや、別に否定的に言ったわけでは……もしかして結構驚いている?」
スカリは正直に頷く。穏やかで沈着なイメージを持つスカリがな……。俺も動揺しているけどな。
「TDRが機動しているなんて……」
「ビックリしているところはそこ?」
「ええ」
「どうやら、MIMの攻撃を無効化してくれたみたいだけど、あんなファースト、骨董品じゃ、どうしようもないぜ。しかし、なぜ? 攻撃を仕掛けたんだ? 俺たちに気づいたとでも……」
「おそらく、別の用件でしょう。TDRの近くに特別な力を感じます」
俺はTDRを見据える。よく凝らして見ると肩に人がいる。あれは……。
「シシロウ兄貴!」
「ニャ~ン」
と、怪猫音を発しながらシシロウ兄貴の勇ましい姿を目撃する。
「あれが、シシロウ=キャキャットウ」
「知っているのか」
「もちろん。消息不明と聞きましたが……まさかこんなに近くにいたとは……」
そんな、余談な話をしていると。
MIMの第二波が放射される。全ての不吉を纏った禍々しいビームが天空から再度落ちる。放射時間も長い、こんなものを食らってはUDOTH木っ端微塵だろう。以前に俺もこいつと相手をしたがどうにかなる代物には思えないと俺は怖気づいた。どうする? シシロウ兄貴!
放たれたビームに向かってTDRが装備する槍と盾が変形し光の羽を模したような光輪を飛ばしてゆく。
光輪の穴へと通過するビームが再び霧散していく様が目に写る。初代GVD……馬鹿にしたものじゃないな……すごいぞ!
そして、TDRはMIMに向かって浮上していく。正直、俺はその現場へと行きたいが俺の跳躍力では届かない。くそ、せめてなにか足場さえあれば……。
気を放ち一定に空を浮くこともできるがそれでも到達することができない天空に二機はいる。
遠目にTDRとMIMと近接戦で激闘していることがわかる。MIM……あの中にかつて俺を敗北へと味あわせたソー=アンダーが搭乗しているのだろうか……。
そうこう考えている内にMIMのパーツが水上へと沈没してくる。どうやら右腕をぶった切ったようだ。
「これは、もしかして圧倒的ですね」
スカリは呟く。俺としても唖然とするばかりだ。対GVDを標的とした殺人拳法『猫パンチ』の使い手である俺ですら難儀な敵だと思うのにいとも簡単にTDRはMIMを破壊し続ける。最後には瓦礫と化したMIMが崩れて落下していく。そこには二人の人間が足場にして対峙していた。シシロウ兄貴とソー=アンダーだ。
MIMはゆっくりと浮力を残しながら落ちていく。二人のやり取りが俺の眼前にしっかりと確認することができる。
「ソーよ! かつての俺だと思うなよ。ニャー」
「ふん、いい気になるなよ! 敗者が。ウホホホ」
はっきりいって語尾は最低だが、まあ、俺らの拳法ってこういうものだもんな。怪猫音と怪ゴリ音という不可解な奇声が交差する。そして、二人の男も瞬時決着を意識して突進してすれ違う。
「猫パンチ 刄刀撃!」
「ゴリラキック 爪殺牙!」
二人の技は炸裂し決着へと直結する。
「馬鹿な! ソー=アンダーが敗れるだと……グフッ」
そのまま、憎きソー=アンダー足を滑りだし海の中へと落ちる。体に風穴が空いている…。あれは、助からないだろう。結果的にシシロウ兄貴が俺の敵をとってくれた! 流石、頼れる兄貴! 俺はゆっくりと降下するMIMの瓦礫にたつシシロウ兄貴へと向かう。
「やったぜ! 兄貴! 昨日は猫に退行していた時にはどうなってしまうと思ったが。やっぱり兄貴は一味違う漢だぜ!」
「心配かけたニャー、ゴタロウよ」
男同士でじゃれあうのもあれだが俺は素直にシシロウ兄貴の復活を嬉しくおもった。
!
しかし……。
ゴス!
俺の胸の後ろには一つの腕が生えていたようだ。あっさりと身体が貫通する。
「悪くおもうなよ」
シシロウ兄貴の台詞を最後に俺は再び意識を失った。これは、死ぬなと客観的に自分をみてしまう……、どうなる?




