ミリア=ロンテ
飛び蹴りはたいしたことはなかった。
俺は避けようともせず右腕で防いだ。次につなぎの技が来るはずだ。
飛び蹴りを避けずに防いだのは、かつて『ゴリラキック』の使い手のソー=アンダーが繰り出したわざ『鷲爪拳』からの苦い思い出からだ。飛び蹴りからすれ違い様に相手の身体を手で掴みちぎっていく技。突進型の振り払い技に属すると思う。
この娘もそれができるかはわからないが、アシア=ロンテの娘なら『ゴリラキック』を嗜んでいるかもしれない。
娘は俺の腕にそのまま乗った。そして階段を踏むように俺の頭に乗る。空を飛ばずにして制空権を奪う。そのまま、俺の頭上を器用にのったまま踏みつけの連続を繰り出す。
「百列蹴!」
蹴りというか踏みつけの乱撃技だろう。踏んで、踏んで、踏みまくる。
しかし、俺としてもまともにくらってやるわけにはいかない。相手が踏み込む瞬間に屈んでバランスを崩す。そして、一定の間合いと空間を娘と俺の間に作る。そして、蹴りを上段にあげる。娘は防御する間もなく俺の蹴りがヒットする。
「イタタタ、酷いですね。乙女に蹴りを浴びせるなんて。それにお気に入りの服に足跡つけるなんて最低ですね」
「お前から、仕掛けたことだろうが、もうギブアップか?」
娘は蹴りをくらってから一定に間合いから離れている。しかし、ゆっくりと無防備に近づいてくる。
「そうですね、続きは艦内デートといことで」
「ふん、最初から俺を口説けばいいだろうが」
「自惚れていますね。お互いに退屈しのぎということで」
「口実はそれでいいか? 大佐の娘といだけで名前がしらないから不都合だ。名乗れよ」
「いけない! 私もなんだか失礼していますね。私の名前は……ここではアシア=ロンテの娘、ミリア=ロンテです。ミリーって呼んでください」
「じゃあ、ミリー、お前さんにいうが艦内の娯楽施設に興味がない。俺は割と武術一筋でね」
「見かけによらずストイックな性格なんですね。」
「いや、俺は気ままな性格だ。自由人。争いが娯楽とでもいうのかな」
「野蛮ですね。なら、なおさら艦内に散歩しましょうよ」
「お前……。外の景色を観るのが楽しいんじゃなかったのか?」
「そうですよ。だけど、ヴィヴァルディさんと夜景で過ごすなんてロマンスは似合わないですしね」
「武骨には似合わないってか?」
「なめんな! とか怒らないんですね」
「まあ、自覚していることだしな。傍から見える俺という奴を演じてやるよ」
「やった!」
まあ、俺として女の子と連れ添っているのは嬉しいのだ。スカリとかだと女性だけど窮屈だしな。
向こうが口説いているなら乗るのが普通の男だろう。お互いに本気ではないだろうしな。
「しかし、艦内探索はしなかったが、この船は娯楽施設と化したらしいが、元巡洋艦UDOTHだろ? 楽しめるのか?」
「武装は完全解除されていませんし内装は豪華客船とまではいきませんけど巡洋艦なんて微塵にも感じませんよ」
「そうなのか」
まあ、ここで、ベイベイザーデイとかいうイベントの催しをするくらいだからな。そういえば、明日はイベントでスカリの雑用だったわ。つまらなそうだが、スカリは怖いからな……。
「なにかゲンナリしていませんか?」
「い、いや、そんなことはないぞ」
「そうですか?」
ミリアことミリーにじっとみられる。逆に俺もみる。もともと容姿は悪くはない。まあ、でもスカリのほうが美人だがな。まあ、年齢が違うからしょうがないんだろうけどな。
「嫌なことは忘れて楽しみましょう」
「おい! ちょっとミリー…」
彼女に手を引っ張られて、もとUDOTHと呼ばれた船内に入るのであった。




