四番星
そして、その後の授業も星による教員への質問連打でその日予定されていた授業はまったく進行せず先生たちもむきになって星の質問に負けずと答えて言った。それを見ていたほかの生徒たちは滅多に見ることのない先生達の慌て様と必死さに涙と笑いを堪えながら昼休みになった。
昼の十二時になりベルが鳴ったところでそれまで授業をしていた男教員はハンカチで自分の額を拭きながら教室から出て行った。出る前にその男教員は誰にも聞かれないような小さな声で、「とんだ生徒が入ってきたもんだ……。明日はこうならないことを祈るばかりだな……」
そうして、教員が出て行った後生徒たちは各々に売店や弁当を取り出し飢えた狼のように食べ始めた。しかし、それがいつもの光景であったはずの1―Aは今日はほとんどの生徒が星の机の周りを囲っていた。一気に教室内は騒がしくなった。生徒たちが一同に、
「君一体どこから来たんだい?」
「今日はいいもんみしてもらったぜ。サンキューな。」
「私とお友達になってくれない?」
「お前俺たちのクラブに入る気はないか?」
「趣味はなんなの?」
と、四方八方から星への質問連打が続いた。
星はそれらの質問に耳を傾けず自分の感慨に耽っていた。
『いやー今日は勉強になったな。学校ってのは面白いところだ、こんなに豊富な知識をたったの4,5時間で習えるんなんてな。さてとそろそろ腹が減ってきたな。そういえば購買があるとかないとか言ってたな』
「おい、晴香。」
「は、はい。なに星くん?」
「腹が減ったんだがここに購買ってところあるか?」
「あ、うん。えっとね、私はお弁当なんだけど、購買といっても食堂なんだけど、は教室を出て右に行って三番目に見える階段を上がって突き当たりをまた右に行って美術室を過ぎたところが食堂で、食堂で食べたいご飯の切符を買ってそれを購買のおばさんに渡せば5、6分でくれるよ。あ、でも大丈夫一人で?」
「ああ、場所はわかった。それじゃ行ってくる」
「あ、うん」
星は進歩から貰った五百円玉をもって教室を出て行こうとしたとき鳥山秀と乾幸四郎が星の目の前に立ちはだかった。
「何か用か?」
星は尋ねた。
「空星くん、君は今から購買に行くのかな?」
「ああ、そうだが」
「なら俺たちが親切に案内しよう」
「いや、もう場所はわかってるからいい。それじゃ」
星は二人の間をすり抜け教室を出ようとした。
「おっと、ちょっと待った」秀は星の肩を捕まえて星の前進を止めた。
「なんだ?」
「それなら単刀直入にいう。俺たちのクラブに入らないか?」
「クラブ?なんだそれ?」
「クラブとは、いや購買に行きながら話そう」
「ああ、わかった」
そうして星、幸、秀の三人は購買へと向かった。
「そこでだ空星くん」
「いや、もう星でいい。それよりお前たちの名前は?」
「俺は鳥山秀だ。秀と呼んでくれ」
「俺は乾幸四郎だ。幸でいいぞ」
「それで星、クラブというのは学校に通う生徒皆がはいらなければならない副業みたいなもんだ。入らなければ学校を追い出される。だからお前は俺たちのだちになり俺たちの作った何でも屋に入ってもらいたい」
秀が説明し、次に幸が
「何でも屋とはここに通う春雨高校の生徒達の依頼をこなし報酬を受け取る事務所みたいなものだ。何でも屋は依頼人の依頼を忠実にこなす、たとえどんな依頼でもだ」
「そこに俺が入ってもいいのか?」
「ああ、実を言うと部活を開くには少なくとも3人の生徒がいないといけないからな。俺が部長で、幸が副部長だ」
「そうか、俺はかまわないぞ。それで何でも屋はいつするんだ?」
「ああ、それは今日の放課後からだ。悪いが、今から購買に言って昼飯を買ったら三人で何でも屋の宣伝をするためチラシを張っていくこの学校中にな。それで一番最初に全部張り終わったやつは明日の昼飯を残りの二人に奢ってもらえることにした」
「なに?秀俺はそんなこと聞いてないぞ!」
幸は秀に言った。
「まあまあそしたら部員全員の士気も上がるってもんだろ?」
「士気つったって、三人しかいないだろが」
「なあ、食堂はまだか?」星は二人のいいあいにも耳をかさず手を腹に当てながら歩いていた。
「ああ、もうすぐつくさ。よくわかんないけどここの食堂は特殊な構造になってるらしい」
「そうなのか、おっあれか、なんか結構な人数の生徒がいるな。こんなんですぐに頼めるのか?」
「星よ心配はご無用だ。俺たちはこの夏休み食堂のおばちゃんをボランティアで手伝ったら極秘の食堂VIPカードを貰ったのさ。これはどんなに生徒が並んでいようがすぐに昼飯が買えるんだ」
「へえ、そうなのか。それでボランティアってなんだ?」
「ああ、それは無料で人の手伝いをしたりすることだ」秀は説明をした。
「何でそんなことするんだ?おれは知人にこの世はギブアンドテイクって聞いたが」
「星の知人ってなんかすごい現実主義者なんだな」幸は言った。
「それより星、何が食べたいんだ?俺たちがおごってやるよ」
「いいのか?」
「今日はお前の歓迎会だ。好きなものを頼め、どうせこの後すぐは労働が始まるからな」
「この食堂にはどんな食べ物でもあるのか?」
「ああ、まあまずいってないものはないだろうな」
「じゃあ、ゼリーが食いたい」
「ゼリー?何でまたそんなデザートっぽいもんが食べたいんだ?」
「ゼリーはうまい。俺はそう思うから頼むんだ。それにゼリーみたいな食べ物俺は昨日初めて食べたんだが、あのぷるんぷるんしていていくらでも食べれるもの……。あんなのは俺が住んでた山では食べることのできない味と食感だった」
「「山に住んでた!?」」
「あ、ああ、俺は一週間前までは後で知ったんだが大山に今までずっと住んでた。だから人間にあったのは先週が初めてだ」
星は食堂のメニューにある何種類もあるゼリーに目を輝かせながら淡々と幸と秀に説明した。
「それなのに、よくそんなに日本語がしゃべれるな」秀は目を見開きながら聞いた。
星は鵺に教えてもらったことを言おうとしたが進歩にそのことを口封じされていたため適当に、
「俺が日本語をしゃべれるわけか?それは山を下りてから一週間の間に徹底的に頭に詰め込んだからだ。あ、おれはこのオレンジ味ってやつが食いたい」
「一週間で……。あ、ああわかった。オレンジ味だな。おい幸お前は何が食べたい?」
「お、秀俺にも奢ってくれるのか。それじゃ……」
「んなわけないだろ。割り勘だよ割り勘。この際だから皆まとめて頼むんだよ」
「ああ、じゃ俺は焼きそばパン」
「よし、わかった。あ、食堂のおばちゃん、焼きそばパンとカレーパン、オレンジゼリーと牛乳3パックください」
「はいよ、秀ちゃん。友達が増えたのかい?よかったねえ。これは私のおごりよ」と言って、ただ券を三枚秀に渡した。
「おばちゃん、だからいっつも言ってるけどちゃん付けはよしてくれっていってるじゃないですか」
「はいはい、そら行った行った。新しいお友達が目を光らせて待ってるよ」
「はいはい、でもありがとう。ただ券有効に使わしてもらうよ」
そして幸、秀、星の三人は身近にあったテーブルに座り昼飯を食べ始めた。
「はいよ、おまち。星はオレンジゼリーだよな」
「おお、ありがとな。じゃ、いただきます」
星は両手を合わせてから食べ始めた。
「なあ、星。お前確かずーと山暮らしだったのに礼儀作法はしっかりしてるんだな」
「ああ、警官の家に世話になってるからな。それに、このいただきますの作法は俺は感動してる。俺が山でウサギとか猪とか食べてたが、感謝して食べたことはなかったからな。だから人間の考えたこの些細な作法、すばらしいとしか言いようがないな」
「そ、そんなもんか……。まあ、早く食べてくれよな。この後が忙しいんだからな」
幸は焼きそばパンを食べながら言った。
「ああ、しかしこのゼリーもうまいな。病み付きになる」
「まあ、ゼリーはうまいから何にも言わないがそこまで好きなやつ始めてみるぜ」秀はカレーパンを食べ終わり牛乳を飲みながら言った。
三人が食べている食堂は約900人ぐらいの生徒を収容でき、学校本校の隣に別棟として建っていて日当たりがよくほとんどの壁がガラス張りで火事などがあった場合二階から逃げられるように食堂の入り口は本校の二階から入られるようになっている。食堂には切符を買えるスタンドが4つ並んでいて一回と二階に配置、頼んだものが受け取れる窓口みたいなものが一階にも二階にも配置されていてすぐさま受け取れるようになっていた。この食堂は購買の役目も果たしており切符を買わずともコンビニ風な売店が存在している。
そうして5分のうち、三人は食べ終わり食堂を出て第四資料室と書かれた扉を引いて部屋に入った。第四資料室は誰もが使ったことが分かるようなぐらいなんの資料もなくあるのは簡易テーブル、折りたたみ式の椅子四つ、ホワイトボードにマーカー三色、それに何も入っていないガラス張りの資料ケースが二つあった。部屋は窓が二つあり、開けるとそこからは春雨高校のグラウンドが見え、サッカーをやったりドッジボールをしたりしてる生徒がちらほらと見えた。
そしてその簡易テーブルの上には山のように積み上げられた紙が積んであった。
「ここが我々なんでも屋と命名した部室だ。まあ、今は殺風景だがそのうち活気もでてくるだろう。さあそろそろ我が部活最初の活動チラシ配りから行くぞ。一人200枚もって一番早く生徒達、先生に渡せたほうの勝ちだ。ここに戻ってこい。それじゃいくぞ、よーいスタート!」
掛け声と共に秀と幸はいっせいに反対方向に散っていきかすかな砂埃を舞い上げながら走り去り取り残された星は、
「あいつら、野生でも生きていけるだけの野心があるな。さてと、俺もいくか。なんてたってゼリーがかかってるんだからな」
そして星もとぼとぼと廊下を歩き出した。




