三番星
そうして、その日から一週間もの間、星の進歩によるスパルタ教育が始まった。星はめげずにさまざまな情報を頭に叩き込み文字までもがたったの三日で読め、書けるようになり、さまざまな知識を頭に叩き込んだ。教えていた方の進歩も驚き、負けずと自分自身までもが勉強にいそしむようになった。そして、一週間がたった朝、
「おはよう、進歩」
「ああ、おはよう。星」
彼らは一週間もの間より、親しみが強くなったようであった。
「お、今日はフレンチトーストか。悪いな、毎日毎日飯を作ってもらって。俺もそのうち料理を覚えるからさ」
「いいよ、星気にしなくても。星に料理までもが覚えられたら僕の立場がないからね」
「そ、そうか。なら、いいんだが」
星は少しがっかりそうに言った。
「あ、そうだ、星。今日から君には学校に行ってもらうことにしたから。学校に行っていろいろな知識を身につけてきなよ、それにもっといろいろな人に出会えるよ」
「学校って、人間が成人になるまでいくって言う家より大きな公共施設で、子供たちが集まり勉強するってところか?」
「ああ、そうだよ」
「行くっ!今すぐ行く。ここの近くの春雨高校だろ?」
「うん、もう手続きは済んでいるし、きょうは夏休みが終わって始業式だからタイミングもいいしね。それと、学校には制服を着て行ってもらう」
「制服?」
「うん、えっと、学校の生徒がみんな着ないといけない決められた服だよ。ま、男女違うけどね。でも、制服はそこに通うために欠かせないもので学校の象徴だからこれ着ないと学校入れてもらえないからね」
「ああ、わかった」
「それじゃ、食べよっか。学校に必要なものは全部あの鞄の中に入っているし、学校への生き方は知っているよね、歩いて十五分くらいだけど」
「ああ、昨日散歩がてら近くを通ったからな。あむあむ、おいしいな、このトースト」
「ありごとう。あむっ・・・ああ、それと、学校についたら髪の長い女の先生が校門で建ってるからその人にいろいろと教えてもらって」
「ああ、わかった。ご馳走様。それじゃ、行ってくる。いろいろとありがとな」
「いいよ、いいよ、気にしなくても。それじゃ、行ってらっしゃい」
「おう」
ガチャ……
ドアを開け星は家のドアを潜り抜けて学校は向かった。しかし、星が家を出た直後、進歩は電話を片手に渡部進一としゃべっていた。
「父さん、星はものになってきたよ。そろそろほんとのことを教えてもいいんじゃないのかな」
「ああ、そうだな。今日星が学校から帰ってきたら、私がじきじきお前の家まで行くから待っててくれないか」
「はい、わかりました。それでは、手はずどおりに。星ならきっとわれわれの理想も理解してくれるでしょう」
「ああ、そうだな」
それきり、進歩の家は誰もいないかのように静まり返っていた。
一方そのころ星は、心躍らせ始めての学校に登校していった。初めての制服に少し戸惑いながらも、周りの同年代の少年少女を見てだんだんと心を落ち着かせていた。しかし、それと同時に自分と同年代の生徒を見て違った意味での緊張感も高ぶりつつあった。
そんな、心境の星をよそに春雨高校の生徒たちは星を見てひそひそと話し合っていた。
「ねえねえ、あんなかっこいい子うちにいたっけ?高1かな?」
「うーん、わからない。でも外見からしてそうかもね。もしかして転校生じゃない?今日始業式だしさ」
「そうだね。一体誰のクラスに入るのかな。私のクラスだといいな。そしたら早速一番に友達なって見せるんだから」
「あはは、晴香張り切ってるね」
などと、海星晴香と雨宮美紀はしゃべっていた。
その隣で、二人の男子生徒鳥山秀と乾幸四郎が、
「なあ、幸、あいつがもし俺たちのクラスだったら絶対だちにしようぜ」
「え、なんでだよ?まあ、初日はあいつも気まずいとは思うけど、わざわざ俺たちがだちにならなくてもいいんじゃないのか?」
「幸、お前わかってないな。あいつがだちになってくれればおれたち三人になるんだぜ」
「おお、秀。お前たまにはいいこと言うじゃないか。よし、そうと決まれば、こそこそ……」
「ああ、そんで、こそこそこそ……」
そんな、会話が交わされて、自分のみに何が起こるのかまだわからなかった星は、しかし、本能では今日が無事に終わらないことを直感で感じていた。
午前8時20分、星は春雨高校の校門までたどり着き、そこに立っていた長身で黒くさらさらした長い髪で赤い制服を着た女教師に会った。
「あなたが、渡部星君かしら?」
「あ、はい僕ですが」
「ならよかったわ。それじゃ私についてきてください」
「あ、ハイ、わかりました」
そうして、星はその女教師に連れられ、校長室につれられていった。この学校でのいい点は上履きをはかなくてよく、土足のまま入れるということであった。
その間、周りの高校生たちは星を一瞥し、
『転校生か……』
と確信していた。
校長室に着いた星は真っ先に春雨高校の校長、春雨大貴に出会った。見るからに人間でいる30か40そこらの男で、進歩に聞いた一般の校長の年齢よりもずっと若かった。春雨大貴はがっしりとした体系にその若さで成し遂げたとは驚くほどの和みのオーラを解き放っていた。
「やあ、君が渡部星君、いや空星君か……」
「なぜ俺の名を……!」
「いやなに、君を迎え入れた渡部進一氏とは昔からの友人でね、彼のとっての願いとあらば聞くわけにはいかないだろう。君は特別にここに通学することができる勉強できるかどうかは別としてね。まあ、とにかく今日から学生生活を楽しみたまえ、それとこちらが君の担任の青島麗子先生だ」
「よろしくね、渡部星君」赤いドレスの女性、いや青島麗子は星に始めて笑顔で話しかけた。
「あ、ああ・・・じゃなくて、はいよろしくお願いします。」
「それではもうすぐ始業ベルが鳴る。クラスに早く行きたまえ。」
「はい、それでは失礼いたします。」と麗子は軽く礼をし星とともに校長室から出て行った。
青島麗子は見るからに20代前半か半ばぐらいで顔や体は名前どおり容姿端麗であり教室へ向かう間もさまざまな男子生徒や教師に話しかけられ、いわばこの学校のアイドル的存在であるらしい。背も高くプロポーションも抜群なので、モデルとしてでも通りそうである。
「ねえ、星君。あなたほんとに山猫同然の生活をしてたって本当?」
「え、ええまあね。だからここでの生活はまだちょっとなじめません。」
「そうなの。まあ安心しなさいな、私のクラスは皆やさしいからすぐになじめるわ。」
「そうですか、それは安心しました。」
そうこうはなしているうちに二人は1―Aと書かれた札の前で立ち止まった。
「ここがあなたの教室よ。それと今から自己紹介、星君の名前や、特技、趣味とかを言ってもらうから。後今の時間はPHRといって、始業ベルの鳴るまで皆が読書する時間帯のことよ。」
「はい、わかりました……」
星は少し緊張しながらも必死に覚えた丁寧語をできる限り使い、麗子とともに教室の中に入っていった。部屋の中を見渡す限りの生徒の数に緊張感が一気に高まり星の頭は真っ白になりながらも生徒全員の視線を浴びた。そしていっせいにクラス内が騒がしくなった。
「はいはい、静かに。今日から新しくこのクラスの一員になる渡部星君です。はい星君自己紹介して。」
「こ、こんにちは。ほ、じゃなくて渡部星です。特技は狩と大食い。趣味は森で寝ること。え〜と、よろしく」
「はい、星君ありがとう。それとみんなちゃんと星君の面倒見てあげなさいね。それじゃ星君はそうね……」
麗子は教室内を見渡し、
「あそこの席に座って頂戴、海星晴香さんの隣にね。」
「あ、はいわかりました」
星はつかつかと教室のど真ん中を横断し指摘された席に座り、隣に座っていた晴香に
「よ、よろしく」
「あ、うん、こちらこそよろしくね星くん」
晴香は両頬を軽い朱色に染めながら答えた。
星と晴香が会話を交わした後ベルが鳴った。星の緊張感はよりいっそう高まり一体何をしたらいいのかわからなかった……。
「はい、それじゃ授業始めるわよ」
麗子が言い、黒板に白いチョークで大きく鎌倉幕府というもじを書き出した、
「はい、教科書の56ページを開いて、ほらさっさとする」
麗子は生徒たちに背を向けながらすらすらと黒板に字を埋めていった。
「あ、星くん教科書持ってきてる?」
晴香がたずね星は、
「ああ、これか?」
とかばんの中から歴史1と書かれてある教科書を取り出した。
「そうそう、それ。それじゃ先生の言ったページに開いて、ノートに黒板に書いてある文字を写していってね」
「なんでだ?」
「それは、今日習うことを忘れないようにするためとそのうち今日習ったことをテストするからそのときのために復習しとかないといけないから」
「?でもこんなの書いてのこしとかなくても俺は覚えられるぞ」
「え?そうなの?す、すごいね星くんって」
そんなこんなで麗子が淡々と授業を進めている間、星は黒板の一文字一文字を頭の中に叩き込んだ、しかし星にとっての初めての歴史の授業は鎌倉幕府という中途半端なところだったので星は麗子を質問攻めし、麗子は結局は一学期に他の生徒が習った授業内容をたったの40分以内に終わらせてしまった。その為その日の授業ははかどらず他の生徒たちはよりいっそう星に関心と興味を持った。




