一番星
日本列島鳥取県大山町の、鳥取県最大級の山、大山。季節は夏の早朝、霧が山全体を覆いかなり経験をつんだ登山者でも入り込まない領域一人の青年が山奥に獣同然の生活を送っていた。彼は生まれてからずっとその山に住む伝説上の生き物鵺によって育てられてきた。
鵺とは、昔「平家物語」に登場し、サルの顔、タヌキの胴体、トラの手足を持ち、尾はヘビで「ヒョーヒョー」と鳴く生き物である。まさに御伽話のような話ではあるが、事実である。そして、彼は生まれながらにして特質な能力を持ち今まで封印されながらも16にしてすでに人間を超越した能力を鵺との生活によって身につけた。
そして、山奥に住みながらも人間言葉を話す鵺によって読み書きはできないものの、話すことは人並みにできるようになっていた。
青年は今まで自然の中で暮らし、自然によって育てられた、その彼にとって今日起きた出来事はかなりの苦痛と苦悩を与えた。
「な、なんでだよ、母さん。どうしていまさら俺に山本降りて人間として生きろって言うんだよ!」
青年は鵺に怒涛の声を荒げた。
「よく聞け。お前も人間の自然の中で言ったらもう充分独立して生きていける歳だ。お前は今度は人間として生きていけ。私はもう寿命でお前に教えてやることはできん。いや、もう教えることなんてないのかもしれないな。だからよく聞け。いまからお前の名は星だ。空星だ。この名は私を救ってくれた人間の名だ。まあ、二百年前に死んでしまったがな」
「でも、母さん、だからって!」
唐突過ぎて、今から星と名乗るこの青年にはショックが大きすぎて付け足す言葉が見つからなかったのである。
「今から、私のことを母さんと呼ぶのもやめろ。もうわたしは逝かねばならん、私は長く生き過ぎた。まあ、逝くといっても地に帰るだけなのだがな。だが星、これだけは覚えておれ、お前は自然だ、そして決して逆らえない。いまからお前の降りていく人間の世界で、お前は人間の作り出した偽の自然を目の当たりにする。それをお前は乗り越えなければならない。それが、私がお前に与える最後の試練だ。そしてそれを乗り越えたときお前は真の自然と一体になることができるだろう。お前ならできることを願っているよ。では、星、さらばだ」
そう言い残し、鵺は動かなくなり地面に倒れた。
「か、母さん。く、くそーっ!!」
それからかなりの時がたち星は混沌と悲しみの渦に浸っていた。そして、鵺のなきがらに泣き縋り丸一日が過ぎていった。そして覚悟を決めたかのように山を下山していった。
「母さん、いや鵺よ。俺は山を降りる。そして最後の試練を乗り越えここに帰ってくるよ。そしてそのとき俺は……」
とだけ言い残し、鵺の亡骸を後にした。
だが困ったことに星は自然の中ではぶくまれてきたので16もの年月の間服を着ずに裸ですごしてきた。一応陰部はかろうじて葉っぱで隠してはいたがいつ見えてもおかしくないほどぎりぎりに隠してあった。そして自分以外の人間にあったことのない彼にとって、山本で見た光景は彼をただただ彼を魅了し圧倒させた。
「な、なんだこれは?地面が硬いし鼠色だ。それに何なんだこのさまざまに彩られた大きな塊の集団は?これは木で作られているのか、だがしかし木がこんなに滑らかなはずがないしどうやって貼り付けられているんだ?」
星は生まれて初めて家を見、そしてコンクリートで敷き詰められた地面の感触を実感した。何もかもが鋭角で角ばっている光景に星はただただ違和感を感じることしかできなかった。
そして、だんだんと日が昇ってきて町の住民もぞろぞろと各家々から重たい足を引きずりながらも朝の日課をこなしていった。しかし、まれででくの坊のようにほぼ全裸で突っ立っていた星を見るや否や住人は驚き、彼を驚愕の眼で見つめていた。そして、当の本人も自分と同じ人間を始めて見る興味心と違和感を同時に感じ一種のパニック状態に陥り足がすくみ動けなかったのである。
『なぜ皆は俺のことをあんな目で見るんだ?それに、何なんだ、あの人間たちを包んでいる毛みたいなものは?俺にはあんなもの生えてはいないし、それに奴等はこのでっかい塊の中で寝起きしているのか?』
星はそう思いつつもやはり、自分と同じように動く人間たちのほうに目が移っていった。
そしてそれから5分ほどたって星は警察に連れて行かれた。
「君、何でまたそんな格好をしているんだ?服はどうした?君もそんな年ならしていいこととしちゃいけないことの区別ぐらいできるだろう?」
と、若い警官の一人がなるべく穏やかに尋ねた。
「服?ここの人間たちから生えているのは服なのか?」
星は興味津々にたずねた。
「え?君何をわけのわからないことを言っているのかな?ここだけじゃなくて、人間はみんな服を着ているものだし、服を着ていない君こそ変だよ。それに、君は何であそこに突っ立っていたのかな?森のほうから抜け出してきたようにも見えたけど」
若い警官は不信感をいだきながらも 平静に話を進めた。
「俺か?俺は今朝初めてあの山から下りてきた」
「え?もしかして君は十年前親子で行方不明になった子かい?もし、そうだったら年もちょうど同じくらいだし、しかしよく生き残っていたね。いやー、よくがんばったね。さあさあ、早くここにある服を着て。きっと苦労したんだろうね。お母さんはどうしたんだい、一緒じゃないのかい?」
『いったいこの男は何を言っているんだ?ま、しかしここは従っていたほうがよさそうだな。自然ではいかなる場合でも自然のなすままに従わないといけないからな』そう思いつつも星は、
「あ、ああ、母さんとはもう別れを告げてきた。母さんは死んでしまったからな。しかし、この服というものはいったいどうやって身に着けるのだ?いかにも不思議だ。そしてこの洞窟らしき中も物々しい、よくこんなところに住んでいるな」
『ああ、きっとこの子は親をなくしたショックと今までの山での生活の疲労で記憶をなくしてしまったのではないのだろうか。そしたらこの子はだんなに不憫なんだろう。泣けてくるような話だな』
若い警官は勝手に星のことを記憶喪失の孤児だと勝手に思い込んで一人哀れんでいた。実際半分は当たってはいたのかもしれないが。
「ああ、服はねこうやって着るんだよ。まず下着を着てそれからズボンとシャツを袖から通してこれは靴下といって、足に履くんだよ。まあ、落し物だけど、もうかれこれ時がたつから君に上げるよ。警官の僕がこんなことしちゃだめだけどぼくに免じてあげるよ」
「あ、ああ、なら貰っておくよ。それでも何でここじゃ人間はありのままの姿でいちゃいけないんだ?」星は怪訝そうにたずねた。
「え、そ、それはみんなが従う法律があって裸で出歩くことは法律に反しているからだよ。それに君はまるでいままで僕たち人間に出会ったことのないような言い草だね」
「ああ、実際山を降りたのは生まれて初めてだ。母さんに山を下りて人間を知れというので、下りてきた」
と星は服を着ながら言った。
『しかし、この服というものは奇妙な感触がするな。こんなに体を包んで窮屈じゃないのか?それになんだか暑いな。体温調整が難しいな』
やっと着終った星は思った。
「そ、そうか……。辛かったでろうに。もしよかったら、僕が君の世話をしてあげてもいいよ。もちろん記憶が戻る間までだけど。こう見えても僕はお金だけならあるからね。僕の父が警視総監を勤めてて僕はまだこの道を最近歩き出したひな鳥みたいなものだから。まだ親の脛をかじってる様なもんだから。家はいま僕一人だけど君が来てくれるのであれば寂しくないしね」
と、若い警官は突拍子にとんでもないことを言い出した。
『この男は一体何なんだ?普通初めて会うもの同士はある程度警戒心を持って対峙するのではないのか?一体人間の自然はどう成り立っているんだ?だが、しかしこんな物騒な場所を徘徊するよりもこいつの寝床に世話になれるのであれば今はそうしよう』と、星は思い、その警官と一緒に住むことにした。
「ああ、ごめんごめん。ちょっと話がそれたけど一応書類を書かないといけないから君の名前を教えてもらっていいかな?もし覚えていたらだけど」
若い警官は尋ねた。
「俺の名前は空星だ」
「へえ、変わった名前だね。ファンタジーに出てきそうな名前だね。あ、僕の名前は渡部進歩。進歩って書いてすすむって読むから。よろしく」進歩はそういって書類を書き終わると、
「あ、そうそう星君、悪いんだけど僕の仕事が終わるまで奥のほうで待っててもらえるかな。寝ててもいいけど、早くて昼には終わると思うから。雑誌もあるしテレビもあるからくつろいでてよ」
「テレビって何だ?それに雑誌って?悪いけどこんな窮屈なところじゃ寝れないな」
「ああ、ごめんごめん。本当に何もかも忘れちゃったんだね。じゃ、そこの椅子、に座っといてくれないかな」
そういって進歩は折りたたみ式椅子を星のところまで持ってきた。
『これが椅子か?こんなものに座って大丈夫なのか?』
と一瞬思ったものの星は進歩が自分のことを世話になることになったので進歩への警戒心を解き椅子に腰掛けた。
『うおっ!何だ、こりゃ、尻のところがやけに柔らかい。それに背中もだ。だが、苦ではないむしろ落ち着く。これが椅子というものなのか。これが、人間の作り出した自然の一部なのか』
など思いつついわれたとおりに進歩の仕事が終わるまで星は待ち続けた。しかし始めて建物、交番に入った星は待っているあいっだずーっと目を部屋の中で巡らせていた。
『しかし、よく進歩いや人間はこのような所にいられるな。しかし、異様なものばかりだ。あそこにぶら下がっている丸い板は何だ?三本の線が違った速度で右回りに回っている。しかし、あの丸い板の端っこについてる12個のものはなんだ?なぜ進歩はあれを時々見上げるんだ?それに、進歩が身につけてる青い服はさっきほかの人間の着ていたものとはちょっと違うぞ。それに進歩が手に握っているあの短い棒は何だ?それにあの白くて薄いようなものも。こんなにも人間の住む自然はおれの育てられた自然とは何もかもが違う。似てるといえばさっきちょくちょく見かけた木や妙に丸い形の柘植はなんだったんだ?うーん、考えれば考えるほどわからなくなる。ここは進歩に頼るしかないな。それまでは寝ていよう。こんな格好で寝るのは初めてだけど、まあ何とかなるだろう』
など思っているうちに星はうとうととし眠ってしまった。
はじめましてKaryuです。
前回、といいますかつい先ほどコメントをいただきどうみてもこの小説を一括で読むのは難しいとのことで、私もそう思い、また一から、今度は連載という形で載せさせていただきます。
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