#8 入学式と対面式 その4
講堂にて行われている入学式は理事長及び校長からの挨拶が終わり、在校生による校歌斉唱に入っている。
一方、生徒会室ではその役員がバタバタしているようだ。
「みなさん、もうそろそろ講堂に行かないと大変ですよ!?」
鈴菜が左手首につけている腕時計を見る。
彼女の時計の針は現在9時30分を少し回っていた。
「まぁ、雄大のことだから、おそらくどこかで待っているかもしれないぞ。なっ、聡」
「そうだね。達也くんの言うとおり、高橋くんだからきっとどこかで待っててくれてるかもしれないしね」
「ですねー。そのことを願いましょう」
男子役員達が呑気にそう言うと、「もう……みなさん揃って」と鈴菜が呆れている。
その時、生徒会室の扉が開き、1人の背広姿の男性が入ってきた。
「みんな、揃っているか……って高橋はどこ行った?」
その男性が彼女らに問いかける。
「渡貫先生、会長はおそらく講堂にいると思われます……」
「確か、最初は鈴菜と一緒にいたよな?」
「えぇ。式の途中で「生徒会長挨拶」があるから先に講堂に行くと言っていたので……」
「「生徒会長挨拶」は対面式だけだぞ?」
「だから、みなさんで騒いでいたのです!」
「鈴菜は落ち着け!」
「……ハイ……」
鈴菜と渡貫と呼ばれた男性に事情を話す。
彼女はその時までヒステリックな表情をしていたようだ。
「まぁ、これから対面式が始まるから、心の準備をきちんとしてから臨むように!」
「「ハイ!」」
†
同じ頃、講堂では雄大がぼんやりとしながら、対面式が始まるのを待っている。
「校歌斉唱。在校生起立!」
雄大を含め、講堂にいる在校生が椅子から立ち上がり、講堂に置いてあるピアノの近くには女性の姿があった。
彼は「…………(なんで、俺は入学式と対面式を間違えたんだろう……)」と思いながら、あまり学校行事以外はであろう校歌を口ずさんだ。
「――――以上を持ちまして、平成28年度入学式を終了いたします。新入生と在校生のみなさまは引き続き、講堂にて対面式を行います。保護者の方は各教室に移動していただき、保護者会を開催いたします」
司会進行をしている男性がアナウンスをすると、保護者はカメラ等を片付け、講堂をあとにしていく
一方、講堂にいる修達、新入生はどのような対面式になるのか楽しみに待っていた。
2016/10/27 本投稿