#82 見る側と見られる側 その14
本日最後の6限目となった。
この日の最後の授業は修のクラスの担任である佐藤の英語の授業ではあるが、教室内では普段の騒がしさは一切感じられず、まるで定期テスト前の静けさ。
彼らのクラスでは朝のショートホームルームで事前に「小テストをする」と言われていたこともあり、他のクラスよりかなり静かにしているようだった。
授業開始を告げるチャイムが校内に鳴り響く――
「さてさて。授業を始めるよ」
佐藤は授業で使うものをまとめたトレーを持って教室に入ってきた。
生徒達は一旦、教科書やノートを閉じ、麻耶の号令で授業開始。
「授業のあとにいつも通りショートホームルームをやるからね。その前に小テストを予告通り行うから、まずは教科書やノートは机の中にしまってね。出席はテストが終わったら取るから!」
彼らは彼女に指示に従い、教科書などをすべて机の中にしまい、筆箱のみという完全にテスト態勢になった。
修はこの時間が終わったら地獄だった1日を通したモニタリングと授業が終わると思っている。
「これから用紙を配るよ。後ろ向きにして回してね。受け取り次第、速やかに始めて」
前から順番に回していく小テスト用紙。
すると、「先生、テスト用紙が足りません!」と窓際の列にいる女子生徒が佐藤を呼んだ。
彼女が小テスト用紙をその生徒のところに届け、小声で礼を言う。
他のクラスでは生徒が教科書を読んでいる声や職員が黒板にチョークで何かを書きながら説明している声や音が聞こえてくる中で唯一、シャープペンシルの音だけしかしていない小テストを行っている1年B組――
静かな教室の中で佐藤は教壇に立ち、手をパンっ! と叩いた。
「終わり! 隣の人と交換してね」
彼女の指示でテスト用紙を隣の席にいる生徒と交換する。
修は幸いにも1限目に指名なしで回答した男子生徒ではなく、左隣の女子生徒に「お願いね」と一言添えて用紙を交換した。
佐藤が答えを黒板に書いていき、生徒達はそれを見ながら答え合わせをしていく。
「――みんなはどのくらい解けたかな?」
彼女の問いかけに彼らは表情をひきつらせていたが、修は涼しい顔をしていた。
今回の小テストの総出題数は20問。
彼は2、3問だけケアレスミスがあっただけでほぼ好成績だった。
テストの採点をしてくれた女子生徒も小声で「凄いね」と微笑み、音が出ない範囲で拍手している。
一方、他のクラスメイトは空白の欄があったり、単語がローマ字だったり……思うように正答率が伸びなかった。
もちろん、修の隣の女子生徒も該当している。
彼女の場合はほとんどケアレスミスで正答率を落としていた。
「今回は解けても解けなくてもいいからね。次回のテストの時に出題されるかもしれないからなくさないようにしっかり管理しておいてね! じゃあ、順番が前後しちゃったけど、出席を取るよー」
出席を取り始める佐藤。
その間に生徒達は教科書やノートを机から取り出していき、完全テスト態勢から通常の授業態勢に切り替わった。
「うん。早退した人は誰もいないからよかったよかった! まずは私が教科書の46ページから読んでいくよ」
彼女は教科書を読んでいき、彼らは佐藤がどこの部分を読んでいるか目や指で追っていく。
中には分からない単語は読み方を書き込む者や途中でどこを読んでいるのか分からなくなり、追うことを止めてしまう者がいたが、彼女は気にしないで読み進めていった。
「――今、47ページの最後まで読んでみたけど、みんなは追えたかな? 分からない単語や忘れてしまった単語は読み方を書いておいてね」
佐藤は生徒達に問いかける。
「どこを読んでいるのか全然分からなかった……」
「あの単語、聞き逃した!」
「確認しておきたいところはどこだっけ?」
「先生、47ページの1番最初の単語の読み方を教えてください!」
「ああ、この単語はね……」
彼らは分からなかった英単語を探し出したり、訊いてみたりしている中、さっぱり分からなかった者は開き直ったようだった。
2026/03/05 本投稿




