#80 見る側と見られる側 その12
「達也くん、ちょっと出てくるね」
聡がこう告げると達也が「ん?」と反応を示した。
「木沢は5限目は見ないのか?」
「うん。ちょっと高橋くんがね……」
「そういえばいないな。あとでこの動画を振り返る時がくるのか分からないが、木沢達からすると面白そうな場面に当たるといいんだが……」
彼は周囲を見回すが、生徒会室には雄大の姿は見あたらず。
そこにいたのは鈴菜と政則の2年生組がじっくりモニター画面を見ているだけ。
「面白くて楽しいシーンだといいけどね。何かあったらいつものところにいるから呼んでくれる?」
「分かった。今日は木崎と鈴菜がいる。たまには2人でゆっくり話してこい」
「ありがとう。そっちは任せるね」
「了解」
修のモニタリングは他の役員に任せ、聡は生徒会室から出る。
彼が使っている部屋の鍵は開いていないため、廊下で待っている雄大のところに駆けつけた。
†
生徒会室に残されたのは達也、鈴菜、政則の3人――
残念なことに暴走すると手に負えないタイプのメンバーが残ってしまった状態だ。
「さっきの高橋の発言ではないが、まともな人間がいないな」
「気のせいだと思いますよ。ねぇ、木崎くん?」
「ええ。彼女の言うとおりです」
「お前らな……」
聡のようなツッコミ係が不在の中、5限目が始まる。
「吉川くんのクラスは数学の授業なんですね」
「あっ、須藤先生だ!」
「確か……木崎くんの担任ですよね?」
「そう! 普段は自分自身が教室にいないし、授業を受けたことすらないから授業風景だけ見られるのは嬉しい!」
モニター画面には須藤が教室に入ってきた。
須藤は政則が属するクラスの担任であるため、多少は面識はある。
「木崎は知らない教科担任に当たることが多いな。吉川のクラスの授業の教科担当を見ただけで2回も興奮するのは凄いな……」
「結構、「このクラスだけが担当です」というレアな先生が多かったので。しっかり目に焼きつけておかないと」
「レアな先生って……非常勤の先生とかじゃないのか?」
「そうかもしれませんね」
彼は達也にツッコまれて苦笑していた。
実際に政則が1年生の頃のように教科担任が非常勤ということも少なくない。
「そうでなくても、今はツッコミ係がいません。私達でやってもカオスになるだけなので、ボケるのはやめておきます」
「鈴菜。お前、分かっているじゃないか。吉川達が教室に入ってきたぞ」
教壇には彼らを待っていた須藤に謝罪をしている修と麻耶がいた。
それは授業開始から遅れること数分の出来事――
2026/02/26 本投稿




