#78 見る側と見られる側 その10
「これは漫才か?」
「下手したらコントだな。流石、鈴村と吉川のクラスメイト!」
雄大と達也は指名なしで回答した修の隣の男子生徒と社会科教諭の鈴村のやり取りに対してツボに入っているようだ。
「達也くん、達也くん。鈴村先生!」
「ハイハイ。流石、鈴村先生。木沢、これでいいだろう?」
「分かればよろしい!」
達也のボケに対してツッコミは聡が担当。
どうやらこちらも漫才をしているようだ。
「聡クン。君は達也クンのツッコミ係かい?」
「いや、違うけど……達也くんが鈴村先生のことを鈴村って言ってたから、注意しただけだよ」
「みなさん、今はコントをしている場合じゃないですよ。私達は吉川くんに注目しなきゃならないのに……」
「まあまあ、鈴菜ちゃん。落ち着いて、ね?」
鈴菜は呆れながらそのやり取りを聞きながらモニター画面に視線を向け、聡は彼女の隣で宥めている。
モニター内では気にしていなさそうに思われている修だが、本心では監視されているというプレッシャーを感じているはずだ。
しかし、彼はそう思わないくらい落ち着いているように感じられる。
「あ、修クンが指名された」
「ホントだ! 教科書を読んでる」
修は座席の関係で指名されたのにも関わらず、嫌な顔はしていない。
誰もが授業中に指名されたくないと思うはずなのに、涼しい顔をして教科書を読んでいる。
モニター画面を見ている時、政則がふと何かに気がついたようだ。
「鈴村先生はたまーに生徒に教科書や資料集の文章を読ませているという噂を聞いたことがあったんですが……本当だったんですね」
「あれ? 政則クンは鈴村先生の授業は受けたことがないのかい?」
「実はないです。名前は忘れましたが、違う先生でした」
「ほう。そうだったのか」
「なんか現代文のような国語っぽい授業スタイルだなと思いまして……それと1つのクラスの授業をまじまじと見るのは面白いですね!」
「まあ、確かに。普段は複数のクラスを同時に監視しているから先生方の授業スタイルまで把握していないな」
雄大は鈴村の授業は受けたことがあったが、政則は彼の授業は受けたことがなかったとのこと。
これは普段見ない新たな発見――
「新たな発見じゃないですか! 木崎くん、やりましたね!」
「よしっ! 今日はツイてるぞ!」
「わーい! 今日はお祝いですね!」
「みんなでペットボトルのお茶を買ってきて宴をしよう!」
「さんせーい! 吉川くんのお疲れ様会を兼ねて!」
「いいね!」
これには彼の同級生である鈴菜も大はしゃぎ。
ここまではしゃぎまくっている2人は滅多に見ない。
「2年生組が今まで以上に壊れているが、大丈夫なのか」
「達也クン。君じゃないんだから、すぐに落ち着く。安心しろ」
「今、ちょっと余計な台詞が入っていたんだが……」
「気にしない、気にしない」
「気にするわ!」
「今度は生徒会長と副会長による漫才が始まったぞ!」
「私からするとレアです!」
「おがすず、普段は生徒会室にいないんだからしっかり見ていけよ!」
「ハイ!」
まだ彼女らの漫才が続いている。
普段は修のように教室で授業を受けている鈴菜にとっては生徒会室にいることは滅多にない。
それによって、逆ハーレムやカオスさが生まれる。
「あーもう! みんなで漫才すると収集がつかなくなるんだって! ただでさえ、生徒会役員の人数がいないんだから!」
「ホントにそうだな……うちの学校の生徒会はまともな人間がいないな」
「もう高橋くんったら……せめてあと1人、できれば常識人を!」
そうこうしている間に1限目の授業が終了した。
本日は1限目から6限目まで、唯一の1年生である修の様子をモニタリングするだけなのに、先輩生徒会役員がこのような状態が続いていいのだろうか――
2026/01/22 本投稿




