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#75 見る側と見られる側 その7

 修が教室に戻ってきた時、毎度お馴染みの光景が広がっていた。

 そこには彼と過ごしているクラスメイトが会話をしており、見慣れた時間割や掲示物がほぼ決められた位置に貼られている。

 これがいつもの修が属する1年B組の日常――。


「1限目って何?」

「鈴村先生の授業だよ」

「なら世界史か……」

「世界史ってなんか眠くなるよね」「鈴村先生のあの声だもん。眠くなるのは当然だよ」


 一部のクラスメイトが大欠伸をし、周囲から笑われている。

 麻耶がふと思い出したかのように口を開いた。


「吉川くんはどんな授業でも寝なさそうな気がする!」

「ねぇ、なんでここで僕が出てくるの!?」

「なんか知らないけど、吉川くんって真面目に授業を受けてそうな印象があるんだもん!」

「やっぱり生徒会役員だから?」

「そうかもねー」

「勝手に決めつけるな!」


 彼女のその言動で修は少しだけ苛立ちを覚える。

 それもそのはずだ。

 彼は生徒会役員である。

 授業態度や定期テストの成績も影響されるため、学業を怠ることができないという優等生のようなイメージが勝手に植え付けられているのだ。

 修も一般生徒同様、眠い時は眠い。


「授業中に眠くなったりすることはないのか?」

「あるんじゃない?」

「いや、なさそうだと思うけど、実際はどうなん?」

「僕だって授業にもよるけど、眠くなることはあるよ!」

「マジかよ!?」

「ちょっと意外!」

「なんかこのクラスの僕の扱いが……」

「まあまあ、吉川くんはあと2ヶ月か3ヶ月くらい過ぎたら、別次元の人間になっちゃうからさー」

「俺達は寂しいんだよ。なあ、みんな」

「そうそう!」

「あなたがいなくなると寂しいのよ」

「岩田さんまで!」

「クラスメイト1人欠けると私達のクラスじゃないというか……なんとやらなところがありますが……」

「僕はテストの時には戻ってくるよ?」

「でも、学校祭とかの学校行事は戻られないのでしょう?」

「う、うん。その可能性はあるのかどうかは分からないな。僕もみんなといたいけどさ、ちょっと難しいところだな」

「やっぱり生徒会役員側での規定とかあるから仕方ないよね」

「そうだね。クラス全員で学校行事に参加できないのは寂しいけどね」


 麻耶に対しての苛立ちどころか実際にはあと数ヶ月でこのクラスから姿を消すこととなる彼に対する寂しさがクラスメイトにはあったようだ。

 一応は定期テストの時は本人が属するクラスで受ける。

 修が戻ってきた際は再会が嬉しくてテストのために覚えてきたことを忘れ、良い成績ではなかったと言われても責任は取れない。

 早くも寂しさに包まれている中、社会科担当の鈴村が姿を現した。


「おーい、そろそろ授業を始めるぞー。さっさと席に着けー」

「「ハーイ」」


 慌ただしく各々の席に着く生徒達。

 休み時間の賑やかさから一転し、麻耶の号令で緊迫した空気に切り替わった。

2022/05/20 本投稿

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