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#72 見る側と見られる側 その4

「はぁ……肝心な場面を逃してしまった……」

「……そうだな……」


 校舎に完全登校時刻及びショートホームルーム開始5分前のチャイムが鳴り響く。

 雄大達がモニター画面から目を離している隙に修と麻耶は教室に着いていた。


「ねえねえ。そうこうしてる間にそろそろ朝のショートホームルームが始まっちゃうよ!」

「そうですね。でも、担任の先生の姿がないですね」

「まだ5分前だし、先生達も朝の打ち合わせぐらいはあるだろうしね」

「確かに。授業変更とかがあったら生徒に伝えないとなりませんしね。ショートホームルーム開始のチャイムが鳴っても遅れてくることが稀にありますし」

「今、気がついたんだけど」

「ハイ?」

「鈴菜ちゃんは普段は自分の教室にいるから、朝から生徒会室にいるのは珍しいなぁと思って……」

「「えっ!?」」

 聡が他の生徒会役員に声をかけるが、反応があったのは鈴菜だけ。

 2人で会話していたにも関わらず、雄大や政則、達也は彼女の存在に気がつかなかったようだ。

 彼らはもの珍しそうな表情で鈴菜のことを見ている。


「なんで珍しいものを見るような目で見てくるんですか? 誰かの1日密着みたいなものはなかなかやったりしないので、すっごく気になるじゃ……」

「使えそうなところは止めて学校のパンフレットとかに載せたりできるんじゃないか?」

「学校のパンフレットか。達也クン、なかなかいい案ではないか」

「まあ、吉川は嫌がるとは思うけどな」

「そういえば今年も中学生を対象にした1日体験学習の時期が近づいてきたな。学校のパンフレット作らないとならないから面倒なんだよな……」

「企画・運営は楽しいんだけどな……」


 彼女が不満そうに話しているところを達也が遮った。

 彼と雄大が楽しそうに話している時、ふと彼らは疑問に思ったことがある。

 それは修のクラス担任の名前だ。


「ところで、修クンのクラスの担任は誰だっけ?」

「確か……最初の頃、1年B組って言ってたけど」

「……佐藤(さとう) 美奈(みな)先生だったような気が……」

「佐藤とか、加藤とかのように同じ名字の先生が多いと混乱しますよね」

「分かる。保健室の先生の名字も佐藤だよね!」

「この生徒会で例えると鈴菜クンと達也クンみたいな感じだよな」

「どうしても、下の名前に先生をつけちゃいますよね」

「そうそう!」


 教員の名字の話で盛り上がっている男子生徒会役員。

 そんな彼らをジト目で見ている鈴菜には誰一人として見ている気配はなく、気がついてすらいない。


「ところで、吉川くん達は間に合ったんですかね?」

「「それ、一番重要だから!」」

「まあ、そうですが……」


 彼らは彼女の一言で重要なことを思い出し、慌て始める。


「ああ、また見逃した……」

「でも、またみんなでその映像を見ることになるからあまり気にしなくてもいいような気がしますが……」

「そう言われてみれば……」

「そうだね……あっ、吉川くん達は間に合ったみたいだよ!」


 聡がモニターを指さすと、通学鞄から教科書や筆記用具などを机の中にしまっていた。


「あれ?」

「どうしたんですか?」

「吉川って案外真面目だな」

「なんでですか?」

「ほら。鞄から教科書やノートを出してるからさ。いつも寮まで持ち帰ってるのかなと思って……」

「本当だ。ボクも見てたけど、1年生の前期は教科書は重いから嫌で、テストの時以外はノートくらいしか持ち帰ってなかったなぁ……今だと、寮に帰ったあとはオンラインで済ませちゃうからね」

「オンライン授業って生徒会役員にとっては重宝しますよね。普段は生徒会室(ここ)のモニター画面で神経すり減らしていますので、その時だけ落ち着いて集中できるというか……」

「木崎くんもそう思う? 他の生徒の声は聞こえるけど、容姿が映り込まれてないから授業に出た気になるんだよね。鈴菜ちゃんはいつも教科書も持ち歩いてるの?」

「私も木沢先輩と同じようにノートと筆記用具だけは持ち帰ってますよ。授業の様子はいつでも見られるので、その日の復習やテスト期間に苦手なところだけオンラインで見たりしてます」

「勉強方法は人によるんだね」


 修の行動を実況しながら、彼の1日密着を楽しく視聴している先輩生徒会役員であった。

 その実況はまだまだ続くーー。

2020/08/20 本投稿

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