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#71 見る側と見られる側 その3

  修は麻耶にそのようなこと告げながらも内心では教室に向かいたくなかった。

 なぜならば、彼は教室(そこ)や体育館などにはカメラが1日中向けられ、どこぞのテレビ番組の密着特集のような状態となり、先輩生徒会役員達は生徒会室からその様子を監視される。

 それはこれから監視する側になろうとしている修に今のうちに監視される側を体験させようということだ。


「本当は()()()()は学校に行きたくなかったんだけどなぁ……」


 修は呆れた表情を浮かべつつ、この場面も撮影されているだろうと思いながら教室まで早歩きで向かっている。

 その時、彼の背後からドタドタと足音が徐々に近づいてきた。

 修はその音を立てているのは麻耶だろうと振り向いてみると、案の定、彼女だった。


「吉川くん、足、速い!」

「菅沼さん、わざわざ僕のことを追いかけていたの!?」

「だって、先生に、怒られるのだけは、嫌だから、頑張って、走って、きたんだよ!」


 麻耶は息を切らせながら途切れ途切れに言葉を紡ぐ。


「まあ、男子と女子って身体のつくりは違うからな……」

「そんなのはあたしでも知ってるから!」

「あー……ハイハイ。そうでしたか」

「もう吉川くんったら!」


 彼女が息を整えている時、彼のすっとぼけた言動に少しだけ苛立ちを覚えたが、その言動には少し新鮮さを感じていた。

 そして、彼らはふと互いの顔を見合わせる。


「それと菅沼さんは()()()()だし、遅刻は許されないと思っているんだよね?」

「そうそう。学級委員が遅刻だなんて洒落(しゃれ)にならないもん! そういう()()()()()もそうなんじゃない?」

「そうだけどさ」

「人のこと言えないじゃん!」

「まあね。自慢するほどではないけど」


 麻耶の呼吸が落ち着き、2人はゆっくりとした足取りで教室に向かった。



 †



 一方、先輩役員達は生徒会役員にあるモニターでその場面を捕らえている。

 それ以前の場面も捕らえたかったのだが、追うことができなかった。

 なぜならば、彼らは校門にカメラは設置していたが、生徒数の絡みで修の姿が分からなくなってしまったからである。


「初っ端からやらかしたな……」

「今回は仕方がない。修クンがどこにいたか分からなかったんだから! あれ、先に映ってるのは修クンじゃないかい?」

「かもしれないな……」


 出だしから彼を捕らえることができず、悶絶していた。

 ようやく修の姿を捕らえることができたのが、校舎に入った場面からだったということになる。


「後ろから女の子が廊下を走ってるんだけど……」

吉川(あいつ)、彼女を待ってるのか?」

「えっ!? 彼女がいることは初耳ですよ!?」

「吉川くん、私がいないところで……」

「ちょっと、木崎くんに鈴菜ちゃんったらー……」

「い、いえ……」

「なんでもありませんから!」

「そんなに気になるんなら、あとで吉川くんから訊いてみたら?」

「そうですね」


 唯一の後輩の恋愛事情に関しては無知な先輩生徒会役員。

 彼らは密着が終わったあと、直々に修から訊き出そうと思ったのであった。

2020/04/30 本投稿

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