#68 どうでもいいことと気になること
未だに沈黙を貫いている生徒会役員達。
聡が話していた「修はONとOFFを切り替えているのではないか」と疑われているが、実際のところはどうなのかは分からない。
静まり返った生徒会室に雄大が何かを話そうと微かに息を吸い込む音だけ聞こえてくるだけだった。
「修クン、頼みがある……」
「ハイ?」
「確か修クンは1年B組だったよな?」
「……そうですが……」
「試しに明日にでも教室のカメラをすべて修クンに向けてもいいかい?」
「な、なぜ!? なぜそうなるのですか!?」
「絶対そういうと思ってたよ。ボクだって吉川くんのこと、気になるもん!」
「もちろん、私もですよ!」
「吉川、安心しろ。1年生は夏休みまで猶予期間があるから、今がくだらないことができるチャンスなんだよ!」
「「そうだそうだ!」」
彼をはじめ聡、鈴菜、達也が便乗してくる。
今の修にとってはどうでもいいことであるが、先輩役員達にとっては気になること、あるいは肝心なこと。
彼はこの高校のシステムは理解できているが、彼らがやろうとしていることはあまりにもやりすぎではないかと――。
その時、修の肩にポンポンと叩かれているような感覚があった。
「先輩達やおがすずの気持ちは分かるけど、いくらなんでも干渉しすぎというかなんとやら……」
「……政則先輩……」
「だって、1年生は少なくとも前期は猶予期間があるから、なんとかなるだろうと思うけど、問題は後期だ」
「えっ?」
「今現在の生徒会役員は6人。おそらく人数は増えないと思われる。それに君は……」
彼の肩を叩いてきたのは意外にも政則。
彼は少し呆れながら話しているので、修のことを庇ってくれていたと勝手に思い込んでいた。
政則は一旦言葉を切ると、彼は唾を飲み込む。
「……これからは殺められる側ではなく、殺める側になるから、今のうちに殺められる側を経験しておいた方がいい」
「結局、政則先輩まで……」
「まあ、なんでも経験だからな」
「う、裏切られたーっ!」
やはりそれは彼が修に言ったことは演技だったことが判明。
彼らの会話は自然な流れだったため、違和感が感じられなかった。
「さすが、政則クン!」
「凄く自然な会話だったよ!」
「よくここまで持っていけましたね! 木崎くん、ナイスです!」
「いや、おがすす達に便乗しようとした訳じゃなかったけど、なんとなく試したかったんだ」
「試したかった? それって……」
「ちょっとした心理的な実験をさりげなく」
「でしょうね」
「続きはあとで話す」
「分かりました」
雄大や聡、鈴菜に先ほどの会話のことを誉められても少し頬を赤くするだけの政則。
そんな彼が修に試したとされるちょっとした心理的な実験はどのようなものだったのだろうか――。
2019/12/31 本投稿