#67 意識と無意識 その2
突然そのようなことを言った鈴菜に雄大は「す、鈴菜クン!?」と声をかけ、彼女は「ハイ?」と答えた。
「そ、それはどういうことかい?」
「たとえ3年生が卒業したとしても私と木崎くんがいるということです。ね、木崎くん?」
「ああ」
「…………そうか。俺達が卒業したあとは鈴菜クン達がいるか……」
「なので、その点に関しては安心してくださいね」
「分かった」
鈴菜と政則からそのようなことを言われ、雄大は頷きながら返事をする。
彼は自分達が卒業したあとのことについて少し気になっていた。
2年生の彼女らにとっては修みたいに入学してからすぐに生徒会役員として活躍することが望ましいと思っている。
しかし、年度の途中で新たに役員になることは可能だが、人数によってはきちんと教え切る保証はなきにしもあらずと言ったところだ。
たとえ3年生である雄大達が卒業したとしてもそのあとは彼女らがおり、修もいる。
おそらく彼は鈴菜達が気を遣ってくれていることに気がついた。
「ところで、ボクが原因だけど、話が大幅に逸れてるよ……」
「話がずれてることには意識してなかったな」
「確かに!」
「そうですね」
「みんな、ごめんね」
「聡クンが謝ることではないよ」
「そうかなぁ? ボク、なんか申し訳ない気がする」
聡が雄大の近くに歩み寄り、話題を変えてしまったことについて謝る。
その時、雄大は後輩達はもちろん、同級生にも気を使われていた。
一方の聡は彼に対して申し訳ない気持ちになっている。
なぜならば、彼は雄大のことを入学当初からのつき合いであり、活動をともにしてきた。
彼が焦っていたりするとフォローをしたくなるという聡自身の優しさからだと思われる。
「……ところで……」
雄大達が話していたことにより、しばらく沈黙を貫かざるを得なかった修はようやく口を開いた。
鈴菜は彼に「どうしたんですか?」と問いかけてみる。
「みなさんは知らないと思いますが……」
「何だい?」
「ん?」
「それで?」
「先輩達はおそらく僕に演技力があると認知されたのでしょうね。僕は演劇の経験はないのです」
「「えっ!?」」
「「マジか!?」」
「わ、私はそこまで意識してませんでした!」
先輩役員達は修の突然の発言に驚きを隠せない。
彼は普段の表情から視線を凍らせるくらいの表情に切り替えが早いと誰もが思っていた。
本人の口から告げられるその時まで――。
「先ほど話しましたが、僕は無意識のうちにどこかでスイッチが入ってしまうのかもしれない。僕の中にある感情なのかどうかは分からないと」
「吉川は確かに言ってたな」
「ああ」
「もしかして……」
「木沢先輩、どうしたんですか?」
聡が頭に何かが引っかかることがあった。
政則が彼に聞いてみる。
「ボクの勝手な推測なんだけど……吉川くんは普段教室にいる時と生徒会室にいる時のONとOFFを切り替えているんじゃないのかなぁと……」
「「……あっ……」」
「ボクが今、言ったことは推測なんだけどね……」
聡の推測は正解かどうかは分からないが、それに関して生徒会役員一同は黙りこんでしまった。
2019/12/26 本投稿