#63 正解と不正解 その9
【作者より】
長らくお待たせしました。
約9か月ぶりの更新です。
「さて、話の続きをしましょうか」
「うん。お願い」
「この先が気になるからな」
「ああ」
「お願いします」
彼は気を取り直して話を戻そうとするが、鈴菜達から畳みかけるように続きを促してきた。
「次に僕が推測されることはどのようなことだと思いますか?」
修は渡貫や先輩役員達に問いかける。
彼らは彼がどういう意味でこのようなことを言ったのか分からず、「えっ!?」と言いたくなりそうな表情を浮かべながら見ていた。
修はこれまでに推測してきたことを先輩役員達に淡々と話している。
しかし、彼らはここにきて彼に問われるとは思っていなかった。
「どうやら僕は難しい質問をしていたみたいですね?」
「それはそうだろう」
「修クンの推測を当てることだけでも難しいのに」
「それに私達は吉川くんみたいに勘が鋭いとは限りませんし……」
先輩役員達が頭を抱え始めている。
鈴菜が言ったように彼女らにはほぼ正解に等しい修の勘の鋭さは持っているとは限らない。
しかし、彼にはこの先の答えは見えているため、軽く鼻で笑った。
「では、改めて話を再開しましょう。会長と達也先輩がマニュアルの「3.殺戮施行」をしている間に聡先輩と鈴菜先輩、そして、僕は事件現場である2年C組に駆けつけ、僕達がそこに着いた頃にはほぼすべてが終わったあとでした」
「うん、そうだったね」
「ハイ」
「最後に聡先輩が「4.死後解析」をして、そのあとは連絡カードの件を経て、会長がどこかで親御さんに連絡していたと思います。僕の推測してきたことは以上です」
修は説明をしながら次の項目である「3.殺戮施行」、最終項目の「4.死後解析」を指差す。
彼は最後まで推測してきたことを全員が理解できる範囲で説明してきた。
その話を聞いていてくれた先輩役員達や渡貫から拍手がわき起こる。
「修クン、ご苦労だった」
「ほぼ完璧な推測だったな」
「1つだけ不正解が出てしまいましたが……」
「そこまで気にするな」
「学校を休んでしまった自分でもその時はどんな状況だったかある程度分かったよ。感謝してる」
「本当ですか? ありがとうございます!」
聡以外の3年生と渡貫が修を褒めている中、政則が彼の頭を優しく撫でてきた。
修はくすぐったくなり、頬を弛ませる。
普段は緊迫感や慌ただしさがある生徒会室が珍しく穏やかな空気が流れていた。
「「修クン(吉川)は可愛いな!」」
「えっ!? えっ!?」
「おいおい。吉川が困っているじゃないか」
彼は唐突に抱きついてきた雄大と達也にどのように対応したらいいか分からずに戸惑っている中、渡貫が入ってくる。
「修クンはあまり笑わないからな」
「そうだな」
「ふ、2人とも……ほ、本心ですか? それとも、お世辞ですか?」
「お世辞ではないが……」
「俺達は本心だぞ? なぁ?」
「ああ。他のところではあまり見せていないんじゃないのか?」
「修クンはギャップがあっていいぞ!」
「同じクラスの女子にも言われたような……」
「やっぱりな――――」
修を中心に楽しそうに話している男性陣をよそに鈴菜は複雑な表情を浮かべていた。
2018/12/31 本投稿