#60 正解と不正解 その6
「さて、順を追って話していきましょう」
修は表情を変えずに彼らに告げる。
その時の彼の瞳には光を宿していなかった。
「修クンが怖い……」
「吉川ってこんなキャラだったっけ?」
「いや、違うと思うけど……」
「演技だったりしますよ」
「今までの吉川くんに戻ってきてください!」
先輩役員達は修がはじめて悪人面をしているところを見た途端、恐怖のあまりに生徒会室の隅に避難しようと考えてみたが、彼らはそれは一時的なものでおそらく演技だろうと思っていた。
「では、上から順に進めていきますね?」
「分かった」
「分かりました」
「1つ目。この部分は会長と達也先輩が該当する部分ですが、どうでしょう?」
彼はマニュアルの「1.モニターでの監視」と書かれているところに指を指す。
「おそらく2人はこのモニターで監視をしていたと思います」
修は先ほど雄大と達也が腰かけていた椅子の前には全クラスのラベルの上にモニターが置いてあることに気がついた。
「確かに俺達はモニター画面を見て判断した」
「彼女が嘘をついていたのも判断できる映像だったしな」
「なるほど……それで会長と達也先輩はモニターのしたに貼られたラベルを見て、2年C組だと判断したのですね?」
「ああ……」
「その通りだ」
2人はこくんと頷く。
彼はたとえ自分が推測していたことが当たっていたとしても表情を変えずに、雄大達の話を聞いていた。
「2つ目はこの項目ですね。「2.他の役員の連携」というところ」
修は2番目の項目を指差し、こうつけ加える。
「僕の推測では「会長か達也先輩のどちらかが聡先輩か鈴菜先輩のどちらかに連絡を入れた」もしくは「聡先輩と鈴菜先輩、両方に連絡を入れた」のどちらかですね」
「吉川くん。それはボクが答えていい?」
「どうぞ」
「ありがとう。連絡は高橋くんからボクの携帯に入ったよ。その時、ボクはちょうどよく学校に着いた頃だった」
「それから木沢先輩が教室にきたことで私は事件が起きたと思ったのです」
「鈴菜先輩は事件現場から近いのに気がつかなかったのですか? その頃は銃声とか鳴り響いていたのに」
彼は聡と話している途中から話に加わってきた鈴菜に突っ込みを入れると、答えられなかった。
そのような状況の中、彼女はふと修の方を見てみると、軽く冷笑を浮かべている。
「僕は1階にいました。銃声で気づいてそちらへ向かおうとしましたが、クラスメイトに止められました」
「修クンも気づいていたということか……」
「ええ」
「吉川は勘が鋭いからな……」
「それはよく言われます。いずれは僕もそのようなことをしなければならないことを理解していたので、野次馬として紛れ込んでいました」
「だから、吉川くんが一般生徒の先輩達や私の同級生に混ざっていたんですね?」
「そういうことになります」
修と先輩役員達の尋問は始まったばかり。
それはまだまだ続きそうだ。
2017/01/04 本投稿