#57 正解と不正解 その3
その日の授業がすべて終わり、様々な意味で悶絶していた修は生徒会室に向かっていた。
彼が1階から2階へ向かう途中、視界に見覚えのある後ろ姿が飛び込んでくる。
「あれ、達也先輩?」
「ああ、吉川か。いつもより難しい顔をしてどうした!? 何があったんだ!?」
修は先を行く達也に話しかけた。
彼は修の顔を見て普段と違う表情をしていたため、驚きを隠せない。
「特には……達也先輩にもバレバレなんですね。僕がそんな表情をしてるなんて……」
「にもということはここにくる前に他の人からも言われたのか?」
「ええ。今日の朝、僕のクラスメイトから言われました」
彼は今朝、同じクラスに属している麻耶から「難しい顔をしてる」と言われたことを思い出す。
そして、数時間経った今もその時と同じ表情をしていると言われてしまった。
修は達也からどういうことを言われるのか分からない。
彼はその続きを待っていたら、どこか納得したように腕を組み、達也が首を縦に振りながらこう答えたのだ。
「まぁ、吉川もいろいろと悩むだろう? 恋とか例のファンクラブのこととかさ」
「そ、そんなことではありません! って、なんでそれが出てくるんですか!? まだファンクラブの件は続いているのですね……」
「吉川が卒業するまでだぞ?」
「まぁ、そうですけど……」
それはあまりにも残念な答えだったので、修にとっては触れてほしくないものである。
彼は「違うから!」と言い出しそうになった。
修は首を横に振ることくらいしかできず、達也の話は本心なのか面白半分なのかは心理的に判断がつきづらかった模様。
「それはおいておきましょう。ところで、今月の初めに起きたことは覚えていますか?」
「ああ、覚えている。それが何かあるのか?」
「実は僕、鈴菜先輩からマニュアルを借りて読んできたのですが、『生徒会役員殺戮要綱』という項目で先輩達がどのように動いていたのかを予想していたのです。その答えが正解か不正解か分からず、ずっと悶絶していました」
「なるほど……それは興味深い。そのことに関しては全員揃った方がいいかもしれないなー」
「そうですよね。僕も先輩達が気になるだろうなと思っていたので」
「特に高橋や鈴菜あたりが興味がありそうだな……」
生徒会室に向かって歩いている2人のあとを追って鈴菜がその話を聞いていないふりをしながら歩いている。
「……えっ!?」
彼女は小声で呟き、同時に「そ、そこまで読んできちゃったの!?」と修のマニュアルを読む速さに脱帽していた。
「た、確かに吉川くんの考えたことはどんなものか気になるけど……」
鈴菜は彼がどのような考えを発言するのかが気になってしまっている。
しかし、彼女はもちろんのこと、他の生徒会役員は誰も修が考えていることは誰も知らない――――。
2017/12/28 本投稿
※ Next 2017/12/30 3時頃予約更新にて更新予定。