#55 正解と不正解 その1
修は学校に着いたあとも今日の放課後のことについていろいろと考えていた。
先輩役員達にあれ言って、これは重要なところだから……と考えながら整理していく。
しかし、彼の言いたいことは頭の中では分かっていたとしても、自分が考えたことは正解なのか、不正解なのかどうなのだろうかは彼らに言わないと分からない。
修が「……うーん……」と頭を抱え込んでしまいかけた時、偶然にも麻耶が近くにいた。
「吉川くん、吉川くーん!」
「うわぁ!」
彼女は彼の名前を呼ぶが、今まで考えごとをしていて、眉間にしわを寄せていた修に驚かれてしまい、軽くショックを受ける麻耶。
「なんか難しい顔をしてるけど、どうしたの?」
「い、いや、別に……」
「なんか怪しい……」
「ぼ、僕は怪しいことなんて考えてない! それは本当だから!」
彼女はこう言うと彼の冷静さに包まれた表情は麻耶のせいで一気に壊されてしまい慌て出す。
「あの、誰だっけ? この高校の生徒会役員に1人だけ女の子いたよね? もしかして、その子から告白されたとか?」
「なんでそうなる!? 確かにこの高校の生徒会に女子は1人いるけど、同い年じゃなくて先輩はいる。彼女は生徒会副会長というポジションの小笠原 鈴菜先輩という人!」
彼女が頭をポリポリ掻きながら、修に問いかける。
彼は慌てたまま鈴菜の名前を出したが、「うん。知ってるよ」の二言で済まされてしまったのだ。
「嘘を言いやがって……今は猶予期間だから何も言ったり殺めたりはしないけど、後期に入ったら間違いなく僕に……」
「吉川くん、頑張ってね! あたしは応援してるよ!」
「って、僕が考えていることと全然違うし……」
修は軽く悪態をついたが、麻耶のかなりのマイペースさに呆れてしまう。
よく恋と変は漢字変換ミスが多いとされているが、今回はそのことは一切関係ない。
彼は恋ではなく、マニュアルにつづられている例の「生徒会役員殺戮要綱」に沿った修視点の推測や考えについていろいろと思考を巡られているのだ。
今の彼にとっては恋愛を謳歌している余裕がなく、日々の勉強と生徒会役員の仕事を覚えるだけで手一杯となっている状態である。
「でも、今は無理だとしても、いつかは僕も恋愛したいな」
修の中で漠然とそのようなことを思うのであった。
2017/12/15 本投稿