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#4 担任と生徒の名前の読み間違い

 あれから数分が経った。

 教室の扉が開き、おそらくこのクラスの担任であろう女性が入ってきた。


「おはようございます!」


 その女性は身長150cm前後で淡い桃色のスーツを身にまとっており、その小柄で華奢な身体でどこから声を出しているのか分からないくらい声が大きく、よく通る。


「「おはようございまーす!」」


 彼らも彼女に負けないくらいの声で挨拶をした。


「一応、全員いるかな? みんな、出席番号順で席に着いてー」


 彼女の指示に従い、生徒達がわらわらと出席番号順に座り始めていく。

 生徒達の動きがある程度、落ち着いてきた頃を見計らい、彼女は白チョークで黒板に名前を書き始めた。

 少し丸み帯びた可愛らしい女性の字が黒板に現れる。


「みなさん、はじめまして。改めましておはようございます。私は今日からこのクラスの担任を務めさせていただく、佐藤(さとう) 美奈(みな)と申します。担当教科は英語です。1年間よろしくね」

「「よろしくお願いします!」」

「じゃあ、今から1人ずつみんなの名前を呼んでいくから、返事をしてね。あと、名前の読み方に間違いがあったら教えてね。入学式の時に恥ずかしい思いをしないようにするためだからね。荒木(あらき) (じゅん)くん」

「ハイ!」

飯田(いいだ) 彩名(あやな)さん」

「ハイ」

今井(いまい) 亜香里(あかり)さん」

「ハイ!」


 佐藤が1人ずつ名前を呼び、生徒達は返事をしていく。


「…………(さっき、話しかけてきた初等部から通ってると言ってた人だ)」


 修は先ほど話していた女子生徒、今井 亜香里の顔を一瞬だけ見た。

 しかし、一瞬だけでも2人の視線が交錯する。

 修は「君には別に興味はない。僕は顔と名前を一致させるために見ていただけだ」と思い、亜香里の後ろの席にいる生徒の方へと視線を向けた。



 †



「…………次は……」


 ここまで順調に間違えずに読み上げてきた彼女がぴたっと止め、数秒間考えている。

 その時、修はもちろんのこと、生徒達は首を傾げながら、待っていた。


「間違えていたらごめんね。吉川(よしかわ) 修くん?」

「す、すみません。吉川(よしかわ)と書いて「きっかわ」と読みます」


 その時、少しだけざわめきが起こり、彼の名字である「吉川(きっかわ)」はこの学校では珍しいと思われる。


「…………(ヤバい。僕の名字の読み間違いで、変にイジられたらどうしようもないな……)」


 修は恥ずかしくなり、少しだけ頬を赤くしていた。


「本当にごめんね! えっと、「きっかわ」くんね。入学式はもちろんのこと、これから間違えないようにするからね!」


 佐藤はポケットからペンを取り出し、早急に出席簿に読み仮名を振る。

 彼女の慌てた表情は緊張感に溢れている教室を穏やかにした。


「さて、再開するね!」

「先生、落ち着いてくださいね」

「……あい……」



 †



 それ以降は佐藤の読み間違いがほとんどなく、全員の名前を呼び終えた。


「あれ、もうこんな時間! みんなはお手洗(トイレ)いは済ませてる? 入学式のあとは引き続き対面式に移るから早めに済ませておいた方がいいよ」


 生徒達は各々の返事をし、お手洗いに言ったり、クラスメイトと軽くおしゃべりをしていた。


 彼らの本当の高校生活が今、始まろうとしている――。

2016/10/13 本投稿

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