#43 試験後と調教開始予告
「――――止め! ペンを置いて問題用紙と解答用紙を後ろから集めてきてください!」
試験の終了を告げる女性教師のアナウンスとチャイムが鳴り、教室からペンを走らせる音が消えた。
各列の後ろの生徒が問題用紙と解答用紙を回収していく。
「テストが終わったねー」
「そうだね」
中間テストが終わり、そのようなやり取りがあちこちで耳にした。
かつては、40名くらいの人数が教室にいたが、家路についたり、部活動に行ったりしているため、教室にいるのは数える程度まで減っている。
「ようやく、中間テストが終わりか……」
修は通学鞄に荷物を詰めながら呟き、教室からすっかり通いなれてしまった生徒会室へ移動を始めた。
†
「今日は珍しく人だかりがないな……」
本日は幸いにも彼のファンと思われる女子生徒達は教室の前や修が行きそうなところに姿を現していなかったため、通常よりスムーズに生徒会室に着いた。
「こんにちは、お疲れ様です!」
彼が生徒会室の扉を開け、中に入り、周囲を見回したが、雄大以外の役員の姿がない。
彼は修がきたことに気づき、後ろを振り向く。
「修クン、お疲れー」
「あれ、他の先輩達は……?」
「まだ教室にいるのではないかと……」
彼は他の生徒会役員がまだ揃っていないのは理由があると思い、雄大に「帰りのショートホームルームですかねー?」と訊いてみた。
彼が「おそらくそうだと思うが……」と答え、そこから数分くらいの間、沈黙が流れようとしている。
「ところで、修クン? 今回のテストのできばえは?」
「それはできるだけ触れてほしくない話ですよ?」
「高校に入学してはじめてのテストなの――――」
「吉川くん、今いますか?」
先ほどの沈黙を破ったのは雄大。
しかし、修は1度溜め息をつき、呆れながら答えたやさき、鈴菜が雄大の話を見事に遮った。
「鈴菜先輩!」
「鈴菜クン! 人がせっかく高校生活初の中間テストを終えた修クンから一言言わせようとしていたところなのに!」
彼らは彼女がきたことに驚く。
鈴菜は「会長は引っ込んでいてください! 私は吉川くんに話があるんですから!」と雄大を黙らせた。
「鈴菜先輩、なんでしょう?」
「吉川くん、今から少しでもいいので、時間はありますか?」
「ええ、ありますが……」
「渡貫先生から本当は6月から調教を始めてほしいと言っていましたが、今から少しずつでも始めてもいいですか?」
彼女が「上手に教えてあげられるかは自信がないので」とつけ加え、修に申し訳なさそうに話す。
彼は一瞬悩み、表情を崩さず、鈴菜にこう告げた。
「……僕は構いませんよ?」と――――。
2017/09/22 本投稿
※ Next 2017/09/23 書き上がり次第更新予定