#42 表と裏 その3
聡と鈴菜が話し終えたタイミングを見計らったかのように、生徒会室の扉が開いた。
「全員、揃ったか?」
そこに姿を現したのはやはり男性教諭。
修を除く先輩役員は「「渡貫先生!」」と反応する。
「突然きて驚かせてしまったな……ところで、吉川はいるか?」
渡貫と呼ばれた男性は彼を呼ぶが、未だに気絶しているらしく反応がなかった。
「吉川くんなら、私達の活動内容を聞いて気絶してしまいました」
「おまえら、新入生に怖がらせるようなことをしてどうする?」
「「すみません」」
鈴菜が彼に事情を説明し、渡貫は一瞬苦笑する。
残された雄大達は彼に注意を受けたのであった。
「さて、これからは吉川にも1から生徒会運営のやり方を教えなければならないな……同性役員でもいいが、このメンバーだとどうしようもないことを教えそうな気がするな……」
渡貫が不安そうに鈴菜以外の男子役員の顔を1人ずつ見回す。
「先生、それは失礼ですよ?」
「同性の団結力というものがありますよ!」
雄大と達也が彼にそのようなことを口にした。
「……高橋と達也は会長、副会長の仕事を優先にしてほしいから、木沢と木崎、鈴菜の誰かだな……」
渡貫が1度溜め息をつき、「……悩ましいな……」と呟く。
彼が悩んでいる時に鈴菜が手を挙げた。
「わ、渡貫先生。私でよければ吉川くんの教育係を引き受けますよ?」
「鈴菜、いいのか?」
「ええ。こればかりは仕方ないことです。また今回みたいに気絶されると困りますしね……」
彼女が修の教育係に名乗りを上げ、意識を失ったままの彼を指さす。
「そうだな。新入生の役員は吉川しかいないから、じっくり調教していってほしい」
「分かりました。ところで、先輩達は……?」
「他は鈴菜達のサポート役に回ってもらう。それでいいだろう?」
「私は構いませんが……」
「ボクは大丈夫だよ。鈴菜ちゃんでも分からないことはお互いに補えばいいしね」
「俺も賛成だな。鈴菜クンなら大丈夫だと思っている」
「同じく」
「他は異議がないから、よろしく頼む」
「承知しました」
他の生徒会役員と渡貫が話し合っている時に「……ん……」と修は身体を起こす。
「吉川、大丈夫なのか?」
「ハイ……渡貫先生ですよね? 先ほどは僕のはしたないところを見せてしまってすみませんでした」
「はしたないだなんて……俺が生徒会室にくる前に生徒会の活動内容を聞いたみたいだな?」
「ええ。それで気絶してしまいましたが……」
「ははは……この高校の生徒会運営は大変であり、いろいろと難しいことが出てくるかもしれない。何か困ったら先輩役員に訊いて少しずつ慣れていってほしい」
渡貫は彼にこう告げると、「分かりました」と返事をした。
そして、たまたま渡貫の後ろにいた鈴菜が顔を出す。
「吉川くん、教育係は私なので、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
「修クン、頑張れ!」
「吉川くん、鈴菜ちゃんは優しいから、分からないことがあったらなんでも訊いてね。ボク達もできる限りサポートするから!」
「ありがとうございます! 頑張ります!」
こうして、修を含めた生徒会活動が本格的に始まろうとしている――――。
2017/09/19 本投稿
※ Next 2017/09/20 0時頃更新予定。