#41 表と裏 その2
【作者より】
今回は『私立白川大学付属高等学校生徒会・短編シリーズ(http://ncode.syosetu.com/s2032c/)』より、『逆ハーレム生徒会の日常 Final(http://ncode.syosetu.com/n8944dl/)』の内容を一部変更したものを投稿しております。
「修クン、何か質問かい?」
雄大が修に問いかける。
修は「ハイ」と返事をし、こう続けた。
「はじめて生徒会室に入った時に感じたのですが、なぜモニターがたくさんあるのですか?」
修はたくさんのモニターがあるところを指差す。
それらは各クラスにいくつかの監視カメラが設置されており、教室の様子を捕らえているようだ。
「はじめて生徒会室に入った人なら必ず訊かれる質問ですね」
「そういう鈴菜クンも同じ質問をしてたような……」
「……うっ……」
「その質問は入学時の新入生の定番だよな。自分も言ってたから懐かしい」
「達也先輩もだったんですね! 仲間がいてよかった……」
鈴菜が答えようとしたが、雄大のからかいによってその機会を阻まれる。
しかし、達也も彼女と同じような質問をしていたことに安堵の表情を浮かべていた。
「吉川くん、これらのモニターはね……みんなを監視するためにあるんだよ?」
鈴菜の代わりに聡が修に鋭い眼差しを向けながら答える。
修は「ひぃ……」と少し怯えているようだ。
そして、聡から引き継ぐように、雄大が口を開く。
「修クン、これから俺が話すことを聞いてほしい」
「……ハイ……?」
「この高校の生徒会は他の学校と違うところがある。通常の生徒会運営の傍ら、一般生徒を裁くことも仕事となる」
「要するに表はきちんとした生徒会役員で、その裏では嘘をついた生徒を裁く「学生殺戮者」といったところです。ですよね、会長?」
「そうだな」
彼と鈴菜が生徒会の仕事について説明した。
それは先ほど書かせていただいた、「表の活動」と「裏の活動」のことである。
先輩役員は闇に包まれたような表情をしていたのだ。
「えっ!? もしかして、それはいずれ僕も本当に……」
「その通りだ。修クンもいずれは……って、修クン!?」
「………………」
それを聞いた修は何も言わずに固まっている。
鈴菜が「吉川くん!? 大丈夫ですか!?」と声をかけたが、反応はない。
「吉川くん、気絶してるよ……」
「先輩達が揃って吉川くんを怖がらせるからですよー」
「そういう鈴菜ちゃんもボク達と同罪だよ?」
「そ、そうですね」
聡が彼を見て呟いた。
彼女は気絶している修の身体をペチペチと叩いたり、頬を抓ったりしてみるが、微かな反応があったくらいである。
「まぁ、1年生は8月まで猶予期間があるからな……」
「そうだな」
この高校に通う1年生は前期が終わる8月末まで猶予期間としており、夏休みを終えた後期からは在校生と扱われ、生徒会役員に裁かれるようになる。
よって、私立白川大学付属高等学校に在籍している学生達は生徒会による「生き残りゲーム」に強制的に参加させられているということになるのだ。
「なんか吉川くんの立場に立ってみると複雑です」
「それはなぜ?」
「私も彼と同じように入学当時から生徒会役員ですが、今まで同じ時間を過ごしてきた同級生との時間がぐっと減ってしまいますしね……」
「そう言われてみればそうだね。ボクもそうだった」
「最初は吉川くんも私達のように人を殺めることに対して抵抗するでしょうし……」
鈴菜は未だに気絶している彼を見て、聡に今の自分の心境を告げるのであった。
2017/09/17 本投稿
※ Next 2017/09/19 0時頃更新予定