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#35 明と暗 その3

「私、毎回(いつも)思うんですが、廊下にいる一般生徒が邪魔ですね……」

「うん。それはボクも分かるよ……」

「それにしても女子が少ないということは吉川くんのところですかね」

「それはあり得るかもしれない!」


 鈴菜と聡はこうぼやきながら、「すみませーん!」「ごめんね。ちょっと通らせてね」と廊下にいる野次馬を掻き分け、徐々に2年C組に近づいていく。


 一方の修は廊下を出、彼のファンとして集まっていた女子生徒達を華麗に横切り、E組の方の階段を使い、1階から2階へ1段抜かしで駆け上がっていた。


「な、なんでこんな時に……」


 修は階段の踊場できっちり締めていたネクタイを緩め、Yシャツのボタンを2つ開ける。

 少し呼吸を整え、彼は再び階段を駆け上がった。


 彼ら(3人)の向かう先は銃声が響き渡る教室へ――。



 †



 その頃、2年C組では達也が女子生徒に果物ナイフらしきものをちらつかせ、彼女の左脇腹に突きつける。

 すでに彼女の制服はナイフ(それ)によって切り裂かれ、傷口から血がダラダラと垂れており、教室の床に血の花が咲いていた。

 廊下に集まっている野次馬の悲鳴や嘆き声が2階中に響く。


「きゃっ! 止めて!」

「「きゃっ!」だけじゃ済まされないのは気づいているかい? 2年C組19番の東雲(しののめ) (めぐみ)クン?」


 雄大は広角を上げ、恵と呼ばれた女子生徒の首をギュッと絞め、拳銃を向けた。


「わ……わかってます……から……離して……くだ……さい」

嘘つき(罪人)のくせに……」

「達也クン、女性(レディ)に対して失礼だよ?」

「おまえもな?」

「まぁ、罪人(それ)は男女問わないのさ。俺自身は一般生徒(彼ら)がどうなろうと関係ないのだがな」


 彼はあっさりと彼女の首から手を離し、左手に拳銃を持ったまま肩をやれやれと(すく)める。

 恵と話していた男子生徒は「この高校の生徒会役員は残酷な考えをお持ちなんですね?」と彼らに問いかけた。


「君は彼女と同級生らしいが、転校生かい?」

「もし知らないのならばここで教えてあげるが?」


 雄大と達也が返事をする。しかし、逆に質問を返された。

 彼は素直に「いえ、1年からいる在校生ですが」と表情を崩さずに答える。


「けほっ……けほっ……あたしは嘘つき(罪人)じゃないです……」

「ほう……しかし、恵クンは嘘つき(罪人)だ。それしかないのだよ? 分かっているのかい?」

「………………」

「図星だな。そろそろトドメを……」

「さしても構わない。達也クン、彼女(あいつ)はかなり弱っているからサクッと始末してくれ」

「了解」


 達也がじりじりと恵に近づいていく。

 彼女は「……や……やめ……」と言葉を詰まらせながら徐々に意識を手放そうと――――。


「止めるわけにいかない」

「君は「死」という名の「退学処分(・・・・)」だよ? これは生徒会長命令だ」

「……て……!」


 彼の持つ果物ナイフが恵の心臓に突き刺さり、彼女はスッと息を引き取った。


「さようなら。嘘つき(罪人)のお嬢ちゃん」

「達也クン、お疲れ。あとは聡クンがくるのを待とう」

「そうだな……木沢は死亡解析のポジションだからな」


 彼らはその場から離れずに恵を看取(みと)り、聡がくるのを待つ。



 †



 先ほどまで野次馬に紛れながら雄大達の様子を見ていた修は失神を起こしかけていた。


「やばい……血に飢えそう(・・・・・)だ……」


 しかし、彼はついに本心を口に出してしまい慌て始める。


「いずれはバレるだろうな……僕が吸血鬼(・・・)であることを……」


 修はいずれは自分の真の姿と裏の顔を現さなければならないということを理解していた。


 その時、彼はふと思った。

 自分がさっき見たものが裏の活動内容なのだろうと――――。

2017/05/07 本投稿


※ Next 2017/05/07 2時頃予約更新にて更新予定。

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