#34 明と暗 その2
先輩生徒会役員が動き出した時、1階にいる修は上の階が騒がしいことに気がつく。
なぜならば、普段は耳にしない銃声や女子生徒の悲鳴が聞こえてきたからだ。
「なんか2階がいつもより騒がしいんだけど……」
「そうだね……」
「もしかしたら、誰か殺められてるんじゃねぇ?」
「そういえば、今のところ「誰かが殺された」という話は聞いたことがないよなー」
「そうだよな」
「俺達も先輩達みたいに生徒会役員によって殺されるのかなぁ……」
「後期からが不安になってきた……」
彼のクラスメイトはもちろんのこと、他のクラスの生徒達も不安そうな表情をしたり、心配して教室から廊下に顔を出したりしている者が何人かいる。
その空気が明らかに暗くなっている中で修は教室から出て行こうとしていた。
彼の友人が「おい、どこへ行くんだよ!?」と言いながら、修の左手首を掴んだが、彼は「離してくれ!」とその手を振り払おうとする。
「ちょっと上の様子を見てくるだけだから」
「やめとけよ。吉川の身に何が起こるか分からないんだぞ!?」
「そうだよ! 吉川くん、今は危ないから止めておこうよ……」
「ほら、菅沼が言ってるじゃないか」
修はこう告げると、友人よりかなり後ろにいた麻耶が泣きながら駆けつけ、彼にしがみついた。
「ごめん。本当は行くべきではないけど、今の僕にとってはこれからのために行くべきだと思う」
「……吉川くん……」
「菅沼さん、泣くなよ」
泣き崩れかけている彼女の髪を優しく撫で、全く表情を変えずに制服のスラックスからハンカチを探し始めた修。
それを受け取った麻耶は「ありがと」と涙を拭く。
「僕は生徒会役員としての現実を少しでも受け入れるためだと思ってる。実際に生徒会が闇組織だろうかなんだろうかは問わずに、ね?」
しかし、他のクラスメイトや生徒達は彼に対して、どう察したかどうかは不明ではあるが、修が今の生徒会を受け入れようとしていること――。
「今から、ちょっと2階に行ってくる。僕がすぐに戻ってくるかは保証はできないけど……」
彼は彼らに闇に落ちかけた鋭い視線を向けた。
その視線は他の生徒達にとって殺意を抱いたものだと察し、恐怖感を覚えさせる。
それはすべての明暗を分けるかのように――――。
2017/04/01 本投稿
※ 来月以降は大幅改稿に伴い、次回の更新の目処が立っておりません。
一応、ゴールデンウイークあたりに更新できればと思っております。