#30 生徒総会後とノイローゼ その1
生徒総会を終え、翌日の放課後……。
修は生徒会室の扉に手をつき、呼吸を整えていた。
何度も深呼吸をするが、なかなか呼吸が落ち着かない。
「な、なぜ、僕が追われなければならないんだ……!」
彼は昨日の生徒総会をきっかけで、女子生徒が毎時間の休み時間に彼の姿を一目見ようと学年を越えて集まっていた。
実際に生徒会室にくるまでの間も追われ今に至る――。
「それが毎日続くと気が滅入ってしまうよ……」
修は呆れたように呟くと、そこにハンカチで手を拭きながら歩いている男子生徒がいた。
「き、吉川くん!? こんなところでどうしたの?」
「……聡……先輩……」
「まぁ、中に入って話をしようよ。ね?」
「ハイ」
聡と呼ばれた男子生徒に促されながら彼らは生徒会室に入っていった。
†
「ふんふん、なるほど。そんなことがあったんだね」
「ええ」
修は今日起きたことをすべて彼に話した。
その話を聞いた聡は「ほんの数時間しか出番がなかったのにね……」と少し不思議そうに口にする。
「毎年、この時期になると、生徒会役員の新入生は時の人になりやすいんだ」
「そうなんですか?」
「うん、その発端は生徒総会なんだけど……。実はボクも1年生の時は「可愛い新入生」で話題になった」
「先輩もですか!?」
「そうだよ。確か去年は鈴菜ちゃんだったはず」
「この高校の生徒会は毎年、1人は時の人が生まれるんですね……」
「まぁ、ボクもはじめて吉川くんに会った時から思っていたんだけどねー」
「そうでしたか……僕はいつまで話題になるんだろう……」
早くも時の人となった修は頭を抱えてしまった。
その体験者である聡が彼に「卒業するまでずっとだよ」と言うと、「なんかレッテルを貼られているみたいで嫌ですね……」と肩を竦める。
「ちょっと……吉川くんはいますか!?」
「「その声は……」」
「鈴菜ちゃん!」
「鈴菜先輩!」
彼らが見たのは学年を越えて集まった修のファン(?)にあたる女子生徒達の黄色い声に紛れて必死に掻き分けながら、生徒会室に向かっている鈴菜の姿があった。
彼は少し苛立ちを覚えながら、「みなさん、大変申し訳ありませんが、道を開けてくれませんか?」と表情を変えずに淡々と言う。
彼女らは素直に左右に分かれるように道を開けた。
「鈴菜先輩、どうぞ」
「あ……吉川くん、ありがとうございます」
「いいえ」
彼女は「すみません」、「ありがとうございます」と言いながら、生徒会室に向かって歩を進める。
「みなさん、この僕に裁かれないよう気をつけてくださいね?」
修は鈴菜が生徒会室に入ったことを確認すると、女子生徒達に軽く脅しかけた。
†
あのあと、彼女にそのことを話すと、「やっぱり、そうでしたか……」と言われ、彼の新たな悩みの種となりかけてしまった模様。
鈴菜は「それは仕方ないですよ。新入生の生徒会役員は今のところあなたしかいないんですから」と溜め息をつきながら言った。
修の悩みはしばらく続きそうだ。
※ Next 2017/03/20 6時頃予約更新にて更新予定。