#26 緊張と本番前
生徒総会当日の朝――。
修は自宅から学校までの距離が遠いため、学校の学生寮で生活をしている。
学生寮は男女別々の建物となっており、本来ならば2人で1部屋だが、彼は生徒会役員というわけで1人部屋を与えられたのだ。
修は目覚まし時計のアラームより早めに目が覚めてしまった。
もう一度目を閉じようとしたが、二度寝して遅刻するのは罰が悪い。
「なんでこんな日に限って目が覚めるんだ……?」
彼はこのようなことをぼやきながらベッドから起こし、軽く身体を動かす。
そして、今日の授業準備をしながら、午後からの生徒総会に向けてイメージトレーニングをし始めた。
「先輩達はどこで手を挙げるか分からないからなぁ……」
生徒総会はクラスメイトはもちろんのこと、上級生などの学校関係者は全員が講堂に集結する。
そのため、どこで誰が手を挙げるかは分からないのが現実だ。
また、どのタイミングで裁かれるかも――。
「あっ、ご飯を食べに行かなきゃな」
彼は学生寮の食堂で朝食を取り、身支度を整え、少し余裕をもって学校へ向かった。
†
その日の午前中の授業はあまり集中できずに終わってしまい、昼休みに入る。
彼の友人は修の様子を察したかのようにいつも通り一緒に食堂で昼食に誘った。
「ぶはぁ……授業に集中できなかった……」
「修、大丈夫か?」
「大丈夫じゃない……」
「まぁ、忙しいと思うけど頑張ってこいよ!」
「どうもな。なんか気持ちが落ち着いた」
「修って意外とプレッシャーとか弱いんだな」
「えっ!? なんで?」
「いつもは冷静なのに、今日はかなり落ち着きがないからさ」
「まぁな……入学してからはじめての学校行事だし、生徒会役員デビューだからな」
「そうだそうだ。生徒会役員デビューだったな。ところで…………」
彼の友人は少し複雑な表情を浮かべながら、「修、1つだけ言っていい?」と問いかける。
修は口を動かしながら、「ん?」と返事をした。
「この猶予期間が過ぎたら、俺のことを裁かないでほしい」
「…………それはなんとも言えないな…………」
「そうか……そうだよな……」
友人と会話をしながらの昼食。
彼らはなんとも言えない複雑な気持ちを抱きながら箸を進め、食器を返却口に戻し、食堂をあとにした。
午後は生徒総会の本番を迎える――。
2017/03/09 本投稿