#24 放課後と生徒総会の準備 その1
修は先ほど教室に戻った時と同じ道順で生徒会室へ向かっている。
彼の少し先には鈴菜が通学鞄を提げ、栗色の髪を左右に揺らしながら歩いていた。
彼女は足音に気がつき、後ろを振り向く。
「あれ? 吉川くんではありませんか?」
「鈴菜先輩、こんにちは。先ほどはどうも」
鈴菜に気づかれた修は罰が悪そうな表情を浮かべながら挨拶をした。
彼らが今いるところは生徒会室の扉の近くにいる。
「よかった。今度は迷子にはならなかったみたいですね」
「本日は2回目ですから。さっきはただこの道をまっすぐ行きすぎただけですよ?」
「そうでしたか」
「ハイ。もうすぐこの学校では生徒総会なんですね」
修は志望校を選んでいた時、学校ホームページの「学校行事」のところをよく見ていたが、ほとんどの学校は新入生が学校に慣れてきた頃の5月に行われる高校が多かったため、4月に行われる高校は珍しく感じたのだ。
「ええ。生徒会の仕事が慌ただしい中での生徒総会です。今の吉川くんだと想像がつかないかもしれませんが、上級生に上がるとハードになりますよ」
「裁きながらですからね?」
「よくご存知で?」
「この高校に入学したあと、噂でその話をうかがっていましたので……」
一般生徒を裁きながら生徒総会や学校祭などの学校行事の準備をする――。
これがこの高校の生徒会役員の宿命である。
たとえ、今は新入生であってもあと数ヶ月経てば在校生となるもの。
1年生の前期に当たる猶予期間が終了したら、修は裁く側に、彼以外の一般生徒は裁かれる側になってしまうのだ。
そのため、修はすでに覚悟していた。
彼女らがそこで会話が弾んでいる時に、生徒会室の扉が開いた。
2人はヒヤヒヤしながら、誰が出てくるかを待つ。
「鈴菜クン達、君達の話し声は聞こえているよ?」
中から出てきたのは、生徒会長である雄大。
「君達は分かってるよね? 生徒総会までの期間がないんだよ?」
「「すみません…………」」
「分かっているならば、早く入ってくれ」
「分かりました」
雄大にこう言われ、修と鈴菜はしぶしぶと生徒会室の中に入っていった。
2017/02/23 本投稿