#18 生徒が知っていそうな場所と知らない場所
委員会や係活動などを決めてから、早いものであっという間に1週間が経っていた。
新入生である修達は入学したあとのほとんどの授業はオリエンテーションたったため、通常の授業が始まり、生徒達はホッとしている。
「やっと授業らしい授業が始まったね」
「そう言われてみれば、そうだな……」
「なんだか新鮮だよ! 今まではずっとオリエンテーションみたいなものばかりだったから」
「僕はさすがに毎時間オリエンテーションと聞いただけでげんなりしたけど……」
「そうだよねー」
修と麻耶がこの1週間のことを振り替えるようにして話していた。
そんな彼らも本日の放課後にはじめての専門委員会が行われる――。
†
「みんな、ショートホームルームを始めるから席に着いてね!」
担任の佐藤がチャイムが鳴ったと同時に教室に入ってきた。
先ほどまで談笑をしていた生徒達は速やかに自席に戻る。
麻耶は全員が自席に着いたことを確認すると、彼女は号令をかけた。
「えっと、今日は明日の授業変更はありません。放課後はついに専門委員会が始まります。一応、今から各委員会の集合場所を伝えておくからメモするとかしてね」
「「ハーイ」」
「まずは学級委員、3年A組ね。図書委員は図書館、放送委員が音楽室、風紀委員が2年E組、広報委員が隣の1年C組…………」
生徒達は佐藤が自分の委員会を読み上げたと同時にペンを動かす。
修はもちろんのこと、まだ呼ばれていない者達は静かに読み上げるまで静かに待っていた。
「――――生徒会役員は生徒会室だけど、今日は担当の先生いないみたいだから、在校生からいろいろと説明を受けてきてね。生徒会室は全教員とその役員しか知らないからこのあと一緒に行きましょう」
「分かりました」
その時、修はあることに気づく。
なぜならば、佐藤が「生徒会室は全教員とその役員しか知らない」と言った言葉が耳に引っかかっているからだ。
「もし聞き逃してしまったら、場所が書かれた紙を黒板に貼っておくから、放課後までに見ておいてね! それと、場所もあらかじめ確認しておいてね。ギリギリになってからじゃあ遅いから」
彼女は黒板の左端に紙を磁石で留めた。
ほとんどの生徒は「わざわざ口頭で言わなくてもよかったのではないか?」と思っていたが、佐藤が自ら言ってきたので、仕方なく聞いていたのだろう。
「これで朝のショートホームルームは終わり。今日も1日、頑張ろう!」
「起立、礼、ありがとうございました!」
「「ありがとうございました!」」
ショートホームルームが終わり、修は1限目の準備を大まかにしてから、彼女から「じゃあ、吉川くん。今から生徒会室に案内するね」と声をかけられた。
彼は「お願いします」と答え、佐藤とともに教室から出ていく――。
一応、彼は彼女からその場所を教えてもらったが、専門委員会の時に1人で生徒会室まで行くことができるだろうか?
2017/01/19 本投稿